006
その6です。
時は流れて昼休み。
朝からここまでの出来事を一言で表すなら「転校生が金髪美少女でヒャッハー!」に尽きる。
当然のように学校中から注目されざるを得ない存在と祭り上げられたゲアリンデは、河居いろはが参加を許された「魔王サマの昼食会」への参加を余儀なくされた。本人のためでもあるが、1年2組そのものが落ち付ける場所ではなくなっているので致し方がない。
「しかしまあ、厄介事が1年2組に集中しちゃった感じだよなぁ。目板センセーの胃と頭髪が心配になるよ」
やれやれ、と言わんばかりの長谷野の呟きだが、当の本人も「厄介事」の一片である事実に自覚があるのか疑問だ。
今も菓子パンを食べつつ週刊誌を読んでいるのだが、めくれたページから「淫靡な個人レッスン」なんて文字が垣間見える。けれど、あえて指摘する人間はこの場にはいなかった。
「正直、こんな大事になるなんて考えてなかったんですけど……」
ゲアハルトの笑みは微妙に引きつっていた。その隣に座るいろはも、まさに自分がつい先日まで通ってきた道だと同情せざるを得ない。
そんな女性陣二人が膝の上に載せているのは自前の弁当だ。ゲアハルトは少々不揃いなサンドイッチと小さなサラダ。いろはは……ノートPCくらいの大きさの弁当箱が三段重ねられている。
状況はさておき、静かに昼食を楽しむ時間を得られた二人を前に、泰地は自分の食事――ゴマ塩をまぶした白飯と表面が凸凹なゆで卵と半分以上が炭化したベーコンが詰められた箱を眺め、大きく溜息を吐くのみだった。
今日から三連休なので、三日連続で投稿させていただきます。