058
その58です。
これ以上調べるのが怖くなった泰地は、ふと思い浮かんだある単語を検索してみる。
「裁判戦争」……まったく関係のない項目ばかり。
「裁判戦争 魔法少女」……上記とほぼ同じ。
(そりゃそうか。ネットで魔法少女が云々なんて話が普通に検索できたら、ウン課の存在だってバレバレだろうし)
だけど、裁判戦争なる事件は、その手の界隈(どの手の?)では名の通った一大事件だったらしい。例のタユーさんとやらからすれば「知ってて常識」レベルのような言い草だ。
ゲアハルトはもちろん除外。横北はあれ以上の情報は知らないだろう。雪郷はストレスを蓄積させる方向で説明してくれるのは明白なので却下。ヴェリヨは……なんとなくだが適当な説明だけで終わらせそうな予感しかしない。
ならば残った選択肢は、頭上の誰かさんなのだが――
(さっきから不気味なくらいなーんも喋らないところから考えると、本当に何も知らないか、もしくは……)
一応、念のために尋ねてみたところ、回答は予想どおりだった。
「いまの座には知らないでもいい知識なのだ」
「いや、一応は関係者とお知り合いになったんだから、礼儀として少しは知っておいた方がいいんじゃないですかね?」
「端的に言ってしまえば、時間の無駄なのだ。言葉を飾ってはいるが、あんなのは戦争でも何でもないのだ。あんな恥ずべき騒動から得られるものなど何もないのだ」
完膚なきまでに否定されてしまった。
魔王サマにそこまで断言させるほどの騒動とは何だったのか、逆に興味が出て来たのだけど、もう喋る気はないらしい。残念だが諦めるしかないようだ。
(それにしても、今日会った面子はどれもこれも濃かったな。日本社会って、そんな人間でないと生き残れないって話じゃないよね?)
イヤすぎる想像が大脳の過半数を支配する前に、泰地はPCの電源を落とした。願わくば、明日は何事もなく過ごせることを――なんて甘い考えは、メールの着信音であっさりと圧潰されてしまった。