052
その52です。
「うむ、実はですなぁ」
おもむろに南河が口を開いた途端、「失礼しまーす」と白路が大きめの弁当箱を三つ抱えて入室してきた。
話の腰が折られた――とUN芸能事務所組は苦笑しようとしたのだが、南河は強引に自分の流れを引き寄せる。
「そちらの金髪の少年を、自分が貰い受けたいのですよ」
唐突に話題の中心に据えられ、ゲアハルトは「え?」と硬直してしまう。ちなみに横北と泰地は「あ、やっぱり」だった。
白路は丁寧に弁当箱をテーブルに置くと、UN芸能事務所組へ深々と頭を下げる。
「すみません。先輩の言葉が足りなくて」
「何を言ってるンだ、ハクジさんよぅ。……いや、確かに足りなかったな。そっちのもう一人の少年もセットで貰い受けたいですな」
「そうじゃないです! 先輩はちょっと黙っててください。すみません。まずは食事をしていただいてから、きちんと最初から説明します」
待望の昼飯だ――とはいえ「身内以外の前でガッつくのはみっともない」と泰地はなるべく平静な態度で弁当箱を開けてみる。
「おお……エビフライが五つも……」
「先輩の奢りです。遠慮なくどうぞ」
「え? エビフライ定食? ちょっと待て、五つって特上か? しかも、唐揚げやコロッケも追加してるじゃないか? ハクジさんよ、あんた何やってくれてンの?」
「あ、財布返しますね。いいじゃないですか、鰻重弁当の出前を頼んだわけじゃないし」
未来への投資ですよ、と涼しい顔をする白路。そう言われると「ぐぬぬ」と引き下がるを得ない南河。案外バランスの取れた関係なのかもしれない。
UN芸能事務所の三人が惜しみなく舌鼓を打つ姿を眺める南河の瞳には、実に味のある哀愁がたたえられていた。
そんな先輩の横顔を携帯電話のカメラで撮影し始め、あまつさえ「いいですよ、もう少し目を伏せて!」などと要求し始めた白路は、被写体に無言で首を絞められた。