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049

その49です。

「ここはテレビ局の食堂だけあって、かなりオシャレな感じだろ。味はそれなりだけど」


「しかしあのレッスン場のトレーナー、濃い人たちでしたね。つか、ゲアハルトを一人で通わせちゃいけない気がするんですが」


「タイジさん。心配し過ぎですよ。大丈夫ですよ。……たぶん……」


 徐々に発言が弱気になっていくゲアハルトに、横北がなんとかフォローしようとする。


「優秀な人たちなのは間違いないんだよ。あの人たちが鍛えたおかげでデビューできたって芸能人もいっぱいいるし。ただ、個性が強くて会社とか組織の中じゃ収まらないっていうか」


「アクが強すぎたから、穏健に退社してもらったってことですよね」


 すうっと横北が発言主の泰地とは正反対の方向へ首を捻じ曲げた。


 あのトレーナーの面々と同じ職場で働けと命令されても半年で限界が訪れるだろ、が泰地の正直な感想である。彼らがどれだけ善人であったとしても、あの濃厚さを打ち消すには足りない。



 ともかく、気分を切り替えて昼食を楽しむべきだ。幸い、ここ「豊浜カラフルテレビ」の本社家屋にある食堂は、さすがはテレビ局というべき白を中心にした暖色を基調としたオシャレな空間となっていて、リフレッシュするにはうってつけだろう。


(とはいえ、メニューはカレーとかラーメンとかありきたりなのばかりだけど)



 そんなことを考えながら食券売り場へと歩き始めた三人だが、その行く手を何者かが遮った。




「おはようございます、お三方」




 ペコり、と頭を下げる男は、何の因果か立派な体格の持ち主だった。もちろん、ヴェリヨのような筋骨隆々ではないし、雪郷のように軍人然ともしていない。けれど、全身から発散される妙な自信――威風堂々とした雰囲気は、なかなかの威圧感を持っている。


 長髪、サングラス、原色のアロハシャツに青い迷彩のスラックス――独特のセンスが如何なく発揮されていて、なるべくなら一緒に行動したくないタイプだ。


「自己紹介をしよう。自分は南河吟哉。しがない貧乏テレビ局の一職員である」


 ニッカリと笑いながら相手の返事を待たず自己紹介を始める男。雪郷と同じタイプかと警戒する泰地の隣で、横北がはっと息を飲んだ。


「南河って――あの南河Dですか?」


「あのとはどれを指すのか分からンが、南河は自分の名前だ」


 うはぁ、と呼吸がおかしくなる横北の様子に、泰地はまた抜き差しならない状況へ放り込まれたことを確信せざるを得なかった。


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