046
その46です。
「つまらンのゥ」
眼前の大盛りペペロンチーノをフォークで突きながら、南河吟哉は不機嫌に唸った。
彼の前の席に座る白路瀬那は、相手の様子など完全に無視して自分の注文した野菜たっぷりタンメンの制覇に集中している。
「まったく分かっちゃいないンだよ、上の連中というものは!」
「はいはい」
「今やニュースなんぞはネットで充分、映画もドラマもバラエティもネットで充分と若い連中は考えてるというのに、見当外れな危機感でネットを目の敵にする愚かさよ!」
「はいはい」
「そのくせ、動画サイトで拾ったネタで番組を作って視聴率を稼ごうなどという破廉恥には目をつぶる! だからマスゴミなどと揶揄されるのだ!」
「はいはい」
「普段はネットは害悪、ウソだらけと喧伝しながら、視聴率のためなら人気ネット動画主とやらを頼んで拝んで出演してもらうなど、プライド以前にツラの皮や健忘症やらを心配したくなってくるな」
「はいはい」
「…………ハクジさんよぅ。現時点でワカモノをテレビに釘付けにさせる方法が分かるかい?」
「はいは――へ?」
完全に虚を突かれ、白路は麺が気道に入りそうになった。
ギリギリで噴出を免れたことに安心しつつ考えてみる……が、何も思い浮かばない。そもそも、ちょっと考えて答えに辿り着くのであれば、南河が長々と演説してきたような状況は回避できたはず。
つまり、彼女は素直に「分からないですよ」と敗北宣言しても問題ないと結論付けた。
ほぼ考えなしで答えた相手を起こるのも面倒だとばかりに、南河は持論を披瀝する。
「小学生でも考えつく簡単でシンプルな答えだよ。時代を象徴するスターを、テレビで独占する。これだけだ」
本日は、連休中に書き溜めた3編を一気に放出させていただきます。