042
その42です。
ブルーマロウ・タユーさんは、一見すれば泰地たちとほぼ同年代――おそらくは中学2年生から高校1年生くらいだろうと思われる。艶やかで長い黒髪と意志が強さを主張している鋭い双眸が印象的だ。
だが、それ以上に強烈なのは来ている服、というか衣装だ。
一言で例えるならば「花魁」。
パステルカラーの花・蝶・虹等々で過剰に装飾されたその和服は、ヘタすれば――いや、絶対に自分の体重を超えた重量があるのは間違いない。
独特な化粧こそしてないものの、髪に挿された大量のカンザシも異常な大きさで目立っているし、履いている下駄の高さも五十センチくらいはありそうだ(そんなのを履いていながら、目線が泰地よりやや低いということは……)。
そして左手に持っている扇と背中に刺された和傘――これがすっきり黒一色なのがアクセントになっていて、異様な剣呑さを漂わせている。
そんな彼女は、泰地とゲアハルトをの顔を見て一瞬怯んだような表情を強張らせる。
泰地も、彼女の顔――正確には頭の一部分に変な感覚を覚える。
が、二人が呆然として二の句が継げない様に安心したように口元を緩ませると、呆れたように頭を振った。
「なんだいなんだい。二人して陸に上がった魚みたいに口をパクパクさせて。おいらのこの姿を見れば、芸事なんかできないって一発で分かるってもんじゃないか」
それはムリだ、と泰地とゲアハルトは脳内で否定する。
日本生活が短いゲアハルトは、まだ「花魁」にまで知識が及んでいない。だからといって、一般常識的にとらえれば、この首から上しか露出していないような重装備で戦闘が可能であると想像できる道理がない。
だからといって、非戦闘員かと問われれば逡巡してしまうのも事実だったりする。その根拠となるのは、当然のように扇と和傘だ。持っていても自然なのだけど、あからさまに怪し過ぎる。「仕込み」があると主張しているとしか思えない。
まだまだ行きます。