004
その4です。
中途半端な形で会話を切り上げさせられた泰地たちがやきもきしていると、教室の扉が勢いよく開かれた。
「ニュース、大ニュースだ!」
息せき切って飛び込んできたのは、今日の日直である帯谷だった。その興奮して紅潮した顔を目にした瞬間、泰地たちは「あー、これか」と腑に落ちるのを感じてしまう。
そんな一部の例外を除き、1年2組の面々が胡乱な目つきで帯谷へ注目する。その視線を、男子生徒はむしろ心地よいとばかりに笑みを浮かべる。
「いやさぁ、いま職員室へ行って聞いたんだけど……」
完全に引っ張る気満々で、わざとゆっくりと喋り始めた帯谷に、全員が軽くイラッとする。ただでさえ親睦会が微妙な結果で終わってしまい空気が悪かったのだから、こんな演出などジャマなだけなのだ。
そんな変化に聡く気付いた帯谷は、さっさと結論を告げる。
「今日、このクラスに転校生が来るんだってよ!」
……数秒間の沈黙の後、全員が「いや、そりゃないだろ」と一斉に否定した。
わざわざ考えてみるまでもない。まだ大型連休前で、高校生活開始から一ヶ月も経過してない今の時期に転校してくるなんて、常識的に考えてあり得ない話である。
無論、そんなことは帯谷だって百も承知だ。慌てて言葉を繋げる。
「いや、ちょっと話聞いて。正確に言うと、転校生じゃないんだ」
何が言いたいやら分からん、とクラスメイトの半数くらいが興味を失う。
自らの失敗を悟った帯谷が何とか挽回しようと口を開いたが、残念ながらその努力は報われなかった。先生が来てしまったからである。
「静かに――って、あれ? なんでこんな静かなんだ。転校生が来るって話、日直から聞いたんだろ?」
マジだったんか、とどよめきが起こる中を、帯谷がとぼとぼと自分の席へと帰っていく姿が非常に哀れだった。
今日はもう一話分更新します。