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その39です。

「ゲアハルトさん、気持ち悪くなったら言ってくださいね。なるべくのんびり走りますけど」


「いえ、大丈夫です。信じられないくらい快適ですから」


 三人が乗っているのは、UN芸能事務所所有のミニバンだ。とはいえ、後部座席の窓にスモークを貼ってある程度で特別な仕様ではない。


 だけど、あの馬車に比べれば乗り心地は天地の差があるのは異論が挟めない。もちろん、ヴェリヨのオート三輪との違いなんて言わずもがなだ。ゲアハルトはもちろん、泰地も後部座席の快適さに嘆息が止まらない。



 ……そう、ゲアリンデはなくゲアハルトである。



 雪郷いわく「この方法なら、仕事と日常を完全に切り離せるだろ?」。


 確かに(一応は兄妹という設定ではあるが)ゲアハルトとゲアリンデが別人であると線でしていれば、ただでさえ見目麗しい外見から発生するであろうトラブルは多少は分散できるだろう。


(だったら芸能人にさせるなよって話だけど、この顔で芸能事務所に通ってて何もしてないってのはあからさまに不自然だろうからなぁ)



 こうなるとゲアリンデ(ゲアハルト)の精神状態が心配になるのも当然の話である。



 全てにおいて勝手の違う世界に心の準備もままならないまま亡命させられ、今まで住んでいた王国では見下される立場であろう見世物芸人のような仕事をさせられるのだ。ストレスの具合が想像できないレベルになっていてもおかしくない。


 ところが、ゲアリンデはケロリとしている。


「慣れないことばかりで戸惑ってるのは事実ですけど、それ以上に見るもの聞くもの全部が新鮮で楽しいという方が大きいですよ。それに、王族だって見世物のようなモノでしたし」


 そう笑うゲアリンデだが、それを全面的に信じるわけにはいかない。本人の自覚が無いうちに取り返しがつかない症状になる例など数え切れないほど存在する。



(ストレスって概念を知らなさそうだし、雪郷のおっさんはアレだし、隣人の俺が気を配らないとまずいな。横北さんは自然とフォローしてくれるだろうけど、一応は相談した方がいいかな)



 無言で何度も頷く泰地の横顔に、ゲアハルトは首を傾げるばかりだった。


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