034
その34です。
魔王サマが告げた一言は、確かに衝撃的な内容だった。テレビから聞こえる「美味しそ―!」「食べたぁい♪」などの歓声が薄ら寒い雰囲気を強めてくれる。
だからといって、我を忘れて喚くほどのショックでもない。この手の「真相」は、漫画やらアニメでは常套句のようなものである。軽く一呼吸置いただけで動揺は簡単に鎮まってしまった。
「えーっと、つまり人間が戦争とか起こさないために、必要以上の悪意を抜いていたって話ですかね?」
「要約すれば、そのとおりなのだ。ヒトの悪意を糧にして育ち、ヒトが一致団結するための敵として倒される。哀しき運命の物語なのだ」
この時のルデルの口調は侮蔑のそれなのは誰の目にも明白だった。けれど、泰地はそれを責める気にはなれない。胸がムカムカするような話であるのは事実なのだから。
テレビのリモコンを弄びながら泰地は少し思考を進める。集中するためにテレビは消そうかとも考えたが、迷った末に音量を小さくするに止める。うるさいのは論外だけど、無音状態にも耐えられそうにない。
「でも、それだったら魔王復活を遅らせるのはマズくないですか?」
「魔城が魔王を復活させるために必要なシステムなのは間違いないのだ。それを破壊したのは魔王復活を遅らせるのもあるが、もっと重要なのはシステムの再起動なのだ」
またもや意外な発言だ。
まさか魔王サマの口から「システムの再起動」なんて言葉が飛び出すとは予想外もいいところである。てっきり「ハイテクなんて触らんでも生きていける!」タイプだと思い込んでいただけに。
それはともかく、少しばかり不穏な方向に向かっているような感触だ。とうとう泰地はテレビの電源を切った。
「再起動って、どういう意味です?」
「言葉のとおりなのだ。パソコンや携帯端末を定期的に再起動させてゴミ掃除するのと同じで、あの魔城もシステム上のゴミが溜まっていたから全壊させて再起動なのだ」
ゴミが溜まっていた、という表現は微妙に分からない。だが、それ以上にシステムの不具合ではなくゴミ掃除で再起動という流れが理解できなかった。
本日はもう一編投稿します。