033
その33です。
胸のモヤモヤを吐き出せたおかげか、程なくして長谷野との通話は終了した。泰地としては、荷物をまるっと受け渡されたような印象である。
この際だから、と泰地は前回の初任務で積み重なっていた諸々を頭上へぶつけることにした。
普段はインターネットばかりを閲覧しているので、朝の時間帯以外はオブジェ状態となっているテレビを点ける。東京のグルメを紹介している番組が流れ始めるが、へヴィになりそうな空気を紛らわせるためだから内容はどうでもいい。
「魔王サマ。いくつか質問があるんですけど良いですか?」
「ウム? 改まる必要などないのだ。シェビエツァ王国の話なのだ?」
先を読まれた……いや、容易く予想できるか。魔王サマに対抗意識を燃やしたり裏をかこうと策を巡らせるなんて無駄な努力だ。
諦念の少年は無欲に先へ進める。
「流されるままに終わっちゃったんですけど、本当にあの魔城を壊せば復活が遅らせられるんですか? というか、ぶっちゃけ倒して復活させないようにできなかったんですか?」
ツッコミどころなんて数え上げればキリがない。その中でも最重要と思しき問題を提示してみると、どうやらルデルはふざけたりはぐらかしたりするつもりはない様子だった。
「ウム。復活を遅らせる件に関しては、ゲアリンデやカウニッツの話を聞く限りでは間違いないだろうし、それしか判断材料がなかった以上はルデルの責任はここまでなのだ」
「そうなんですかね? それでいいのかな……」
「さっさと終わらせてしまった点は、状況的に急がなければならなかった可能性を考えたこともあるし、説明するのが面倒だった部分もあるのだ」
「面倒だからで済まさないでほしいですね」
「しかしもう一つ……ルデルも元は人の子だから、ゲアリンデたちを前にして、ちょっと憚られたところもあったのだ」
意外な発言だった。
魔王を自称し、人間の都合など二の次三の次なこの子犬のぬいぐるみが、他人に遠慮をしていたとはにわかに信じ難い。もちろん実際に口には出せないが。
「ゲアリンデたちに憚るって、どういう意味ですか?」
「……魔城がヒトの悪意を吸い上げてると説明された時、ヴェリヨは魔王が自分の食料を絶やさないためかと呆れていたのだ。でも、おそらくは逆なのだ」
「ぎゃく?」
「ヒトが一定以上の悪意を持たないために魔城は存在しているのだ。魔王復活はあの世界に必要なシステムの一部なのだ」