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029

その29です。

 約三十分後、マエカケさんも含めた五人プラス魔王サマが孕石泰地宅のリビングに集合した。


 マエカケさんがお茶を用意しようとしたが、いつの間にやら横北がコンビニで人数分のお茶とお菓子を買ってきていた。紅茶パックどころか緑茶の茶葉もキッチンに確保してなかった家の主としては、青年の察しの良さに驚きと感謝を禁じ得ない。


 対する横北は「若い独身男のあるあるだからね」と笑っていた。魔王サマとの出会い以降、まともな対応をしてくれる大人との交流が少なかった泰地は、不覚にも目頭が熱くなるのを隠すのに苦労してしまう。




 さて、とペットボトルのお茶を半分ほど飲んだヴェリヨが口を開いた。


「さっき話が出たけど、横北は公安ウン課の捜査官じゃない。普通に民間人で、表向きはUN芸能事務所で、いわゆるマネージャーの仕事をしているって話になってる」


「それって――どういう経緯で?」


 民間人を雇って大丈夫なのか、なんて聞いても無駄だろうなと考えた泰地は、質問を途中で切り替える。「朱に交われば」というやつだろうか。


「うん。簡単に言ってしまうと、オカルト絡みの事件に巻き込まれたからだよ」


 答える横北の唇には、わずかに苦い感情が混じっているようだった。



 人間社会は綺麗事だけで健全に回るものではない。芸能界だって例外ではなく、特に「社会経験の少ない若者」「上昇志向や認証欲求の強い人間」が集まりやすいので、当然のようにオカルトなサムシングも発生頻度が高くなる傾向がある。



「俺は元々ある芸能事務所でマネージャーやってて、そんな感じの事件に巻き込まれたところに公安ウン課の人に助けられたんだけど、その後に取調室みたいなところで『すべてを忘れるか、協力者になってもらうか』って言われてねぇ……」


 遠い目になる青年を、泰地は心の底から同情した。自分が酒を飲める年齢だったら、このまま居酒屋へ突撃したいとまで考えた。


 まあ今の事務所の方がホワイトで給料もいいんだけどね、とちゃんとフォローするあたりに、横北の性格の良さが現れている。




 どうして横北や夏宮ではなく、あの雪郷が上司なのか――少年の目頭が再び熱くなった。


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