022
その22です。
「一年生に関しては、私に一任されているはずですけど」
先輩と呼んではいるものの、嶺華嬢は明らかに五明田を排斥したがっている。
しかし、五明田は睨まれても怯む様子を見せず、わざとらしく肩をすくめた。
「やれやれ。ボクたち皐会は、別に誰かの命令を受けてなければ動けないガチガチの組織じゃないでしょう。キミがどういう意図で動くかに干渉する気はないから、僕の行動にも口出ししないことにしてもらいないかな?」
「なら、どうぞ誘ってみてください」
驚くべきことに、嶺華嬢はあっさりと引き下がった。これには五明田も呆けたように何度かまばたきをしたが、すぐに気を取り直して表情を引き締める。
両手を大きく広げ、くるりと踊るように回れ右をし――計ったかのようにゲアリンデの正面でピタリと正確に止まった。
「はじめまして。ボクは皐会に所属している五明田涼真と申します。貴女には是非とも皐会に入っていただきたいと考えていますので、まずはこれからお茶をご一緒していただけないでしょうか?」
慇懃に深々と頭を下げる五明田は、確かにキザな動作がハナにつくのだけれども、手慣れた調子な上に照れを微塵も漏れ出さないので、ときめきを発動させてしまう女性が確実に存在するのも納得できる。
とはいえ、今回は敵が悪かった。
「申し訳ありません。私の立場上、特定の思想や組織に属する行為は避けなければなりません。謹んでお断り申し上げます」
コンマ一秒の隙間も開けず、ゲアリンデはすっぱりと却下した。相手の大仰な態度を前にして、逆に冷静な対応に臨めたのかもしれない。
だが、五明田は折れなかった。
「いえいえ。ボクたち皐会は、特定のイデオロギーを崇拝している団体ではありませんよ。誤解を解く意味でも、まずは話し合いをしましょう」
「イデオロギーなどの問題ではないのです。私は学業を修めるために、この学校へ入学しました。それ以上の活動は辞退させていただきます」
テニスで、互いにネット際でボレーの応酬をしているかのような状況になった。