015
その15です。
シェビエツァ王国から地下基地の事務所へ帰還した一同を出迎えたのは、相変わらず多過ぎな前髪で表情が読めないマエカケさんと……泰地にとっては初対面の男性だった。
年齢は五十歳前後だろうか。白髪が多く、身長は低めで小太りな、見た目の印象では『優しい校長先生』が一番相応しい。
マエカケさんが淹れてくれたらしいコーヒーを置くと、泰地たちに笑顔を向けた。
「やあ。無事に帰ってこられたようだな。おめでとう。まずは一安心だ」
たった一言だが、この瞬間に泰地は「ああ、ええ人やん。雪郷とは雲泥の差だ」と妙な安心感を持ってしまう。
するとヴェリヨが「ぃよう!」と喜色満面で彼の手を握った。
「夏宮のおっさん、早いんじゃねーのか?」
「ははは、このトシになってもつい気が逸ってしまってな。マエカケさんにも余計な仕事をさせてしまったよ」
「…………」
「なんだよ、マエカケさん。俺らの時とは全然態度が違うじゃないかよ」
「…………」
「ア、ハイ。すみません。調子に乗ってました」
勝手に盛り上がっている三人を前にして、完全に置いてけぼりを食らったゲアハルトと泰地が居心地悪く顔を見合わせる。それに気付いた男性――夏宮は改めて二人に正対した。
「いや、すまない。私は夏宮。御手杵の整備業務を担当する者だ」
「アレ《・・》の整備、ですか」
「そうだ。では、表へ出てもらえるかな。一応は形式に則らねばならないのでな」
夏宮の言葉が咀嚼できず、ただ促されるままに事務所の外へ出た泰地たちを出迎えたのは――
「気ィを付け―ッ!」
「ぅいっ?」
「敬礼ッ!」
ずらりと整列した三十人か四十人ほどの、濃緑の作業着に身を包んだ自衛官たちだった。
本日はもう一遍投稿します。