013
その13です。
気を取り直して、とゲアハルトが姿勢を正した。
一同が魔城へ向かっていた間に王都で何が起こっていたのか――つまりエックホーフが寝返って電撃的に政敵たちの排除を終えた――という経緯を聞かされる。さすがの魔王サマの予想外のようだった。
「フム。エックホーフもだが、リンクス騎士団とやらも諜報に長けているのは間違いないようなのだ。と同時に、他の連中の間抜けさ加減も大概なのだ。エックホーフの力の源泉が分からんのか、上辺だけ真似て満足してるのだ?」
「返す言葉もありません」
恥じ入るゲアハルトだが、これはルデルの無茶ブリというものだろう。
いかにエックホーフが有能で、優秀な部下に恵まれ、相当の時間をかけて念入りに根回しや仕込みを用意していたとしても、わずか一日でここまで綺麗に盤面を塗り替えられると予想する方が難しい。
普通に考えれば、一生分の運を使い果たしたかのような逆転劇である。
ところが、野望に燃える伯爵が天から授かった運は、城の主柱よりも太く、蜘蛛の糸のようにしなやかで粘り強いらしい。
「問題は、国王陛下やラインターナー伯などが、すっかり意気消沈してしまったことなのです」
エックホーフをはじめとする反国王勢力の力を削ぐための行動が、結果的にはエックホーフが贅肉を落としてより強固な一派を形成させる羽目に陥ってしまった。それは、ラインターナーが撒いていた種もほとんど処理されてしまったという事実でもある。
「かような次第で、私の出国が喫緊の優先事項となりました」
「え? 話が物凄く飛んでません?」
素っ頓狂な声を出したのは泰地だけだったが、黙って耳を傾けているだけだったヴェリヨも展開の歯抜けぶりに困惑を隠すのに苦心していた。
先週は風邪のために休んでしまって申し訳ありませんでした。
今日はもう一遍、投稿させていただきます。