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121/123

121

その121です。

「まーとにかく、今回は本当にありがとな」


 学校から帰宅した泰地を待っていたのは、これから東京へ帰るので挨拶に来た榊だった。後始末が相当に厳しかったのか、目の下の濃いクマが痛々しい。


「気にすることはないのだ。あの程度は手間とは呼ばないのだ」


 当然のように頭上の魔王サマが鷹揚に答える。泰地としては「俺、今回は何もやってないような」が正直な感想である。単に異世界へ行って、カビ臭い迷宮を歩き続けて、脇腹に重傷を負っただけ、と。見た目には無傷なのだが、実際はシクシクと痛みが消えていない。


 対する榊は、むしろハイテンションになっている様子だった。


「組織は一網打尽。あの会社もバッサリできたし、向こうのクーデターも成功して、日本と国交を結ぶ方向で動き始めたとよ」



 大小のアクチデントはあったものの、ほぼ最初に描いた絵図どおりに終結したらしい。



 ほんの一部分しか関われなかった泰地としては「きっちり全部を教えて欲しい」が偽らざる本音ではある。けれど、組織で動くというのはこういうモノなのだとも理解している。


 同時に「終わり良ければ総て良し」なんてスッキリできていないのも事実だ。脇腹が痛むたびに、眠ったまま一瞬で惨殺されてしまった子供たちを思い出してしまう。


 あの組織に認められた(と思い込んでいた)少年の「力のない者は殺されても当然」みたいな価値観を、ハセン皇国はこれから是正していけるのだろうか――自分が心配する筋合いではないと分かっていても、泰地の脳裏に不安の影が差してしまう。




 気分を切り替えるべく、泰地はふと浮かんだ疑問を言葉にした。


「国交を結ぶって言っても、お互いにメリットとかがあるんですかね?」


「どうだろうな。今回の件は。ハセン皇国に事前調査とかはしてなかったしなぁ」


「事前調査?」


「あれ、知らんかったのか」



 榊の説明によると、公安ウン課の仕事の一つに、新しく発見された異世界を密かに調査する任務もあるらしい(榊の変身能力は非常に重宝されているとか)。


 調査というのは、社会制度や治安状況等々もあるのだけど、土地そのものも含まれているという。



「土地そのものって……?」


「たとえばさ、お前さんのこの前やった任務――シェビエツァ王国だっけ? あそこの魔城とやらの近くにある無人島のいくつかは、レアメタルやレアアースの塊だって調査結果が出ててな」


「へ?」


「あの任務が成功した暁には、それらの島の所有権を日本政府へ譲るって話になってたんだよ」


 シェビエツァ王国としては、魔城に近い場所の、しかも岩だらけの人間が住めないような島に利用価値などない。貰ってくれるなら万々歳だったらしい。




「……それって、ほとんど詐欺じゃありませんか?」




 本気で「知って後悔する事実」である。


国家として動いている以上、裏はいくつでもあるよって話でした。

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