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111/123

111

その111です。

 とりあえず悪意などは無さそうだ、と判断した榊が、少々ぎこちないながらもランセへ頭を下げる。


「捜査協力に感謝します。我が国の法律では捜査協力に対して報酬は出せないのですが、もしご希望の場合は……」


 榊が半ば強引に割り込んできた理由を、他の面々は何となく察していた。


 今の調子で話を進めていくと、最後にランセがルデル(というか泰地)に挑戦するのが明白だったからである。それは避けねばならない。



 しかし、ランセは泰地から目を逸らさず口を開いた。


「いや。国家権力がそういうモノであるとは理解しているし、こちらも期待してはいない。私の望みは別のところにある」




 まずい。


 明らかに流れは対決の方向へ走ろうとしている。




 ランセがルデル(に半分操られた泰地)と対決するのも問題だが、最悪『御手杵と戦いたい』なんて表明したら目も当てられない。


 あんな巨大ロボット(ルデルは飛行機と主張)を持ち出したら、この街全体が壊滅状態となるのは想像するまでもない。


 しかも、乞われたルデルも「面白いのだ」と喜んで応じそうなので性質が悪い。



 いっそ無視して逃げるのが賢明か――などと迷っている間に、ランセは泰地の手をそっと掴んだ。伝わってくる力は強くないはずなのに、なぜか振り解ける気がしない。


 凛々しく燃えるような、それでいて乙女の繊細さも見え隠れするランセの眼光に、泰地は一切の抵抗を封じられた。


 ゲアハルト(ゲアリンデ)と向き合った時とはまるで違う。あの時は下心的な部分が多少あったことを否定できないが、今回はひたすら冷や汗しか出てこない。いくら瞳が可愛くても、猫と虎では印象が全く異なるものだ。


「私はな……」


「はい、ナンデショウ?」






「私は、弟が欲しいのだ」


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