表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
108/123

108

その108です。

「……へ?」


 泰地は我が目を疑った。


 明らかに怒っていたタユーが真っ黒な和傘を真上へ投げると、その無数の骨が素早く伸びて地面へ突き刺さった――かと思ったら、すぐに傘は通常の形に戻り、落ちてきたところをタユーが取って、再び背中に挿したからだ。



 わずか一秒もない空白。



 それなのに、タユーは妙にスッキリした表情になっているし、少年は――彼女の足元にうずくまって、完全にあらゆるものが燃え尽き枯れていた。


「な、何があったんです?」


 傷の痛みも忘れて泰地が尋ねる。それに対し、タユーは事もなげに答える。


「いや、要するに罪の意識ってやつに目覚めてもらっただけの話だよ。よくある話だろ? 魔法少女に諭されて改心するってアレ」


「まあ確かに、アニメとかでよく見るパターンですけど……」


「そーゆー話だよ。まあ、おいらの必殺技は一対一タイマン専用だから、裁判戦争じゃ役に立たなかったワケだけどな」


 タユーの笑みに、珍しく自嘲の色があった。そういえば前にもそんな話をしていたような、と泰地は思い出す。トラウマってやつかな――と少し後悔した。




 変な空気になりそうなところへ、榊がタイミングよく割り込んでくる。


「よし、とりあえずはこいつを確保だな。あとは、他の場所にいる連中を捕まえに行くぞ」


 そうだった。この少年がボスとかではないのだ。


(できれば、ケガをしたことだし一足お先に帰りたいところなんだけど)


 甘えを口にしたいところだったが、泰地は既に傷の痛みが我慢できる程度にまで軽減されているのを自覚していた。魔王サマのおかげだろう。


「そんじゃ、ぴるる。ちょっと探ってくれ」


「分かった」


 ぴるるの眉間に、また日本刀のような輝きが出現する。


「……まずいな。どうやら出口へ向かっている。おそらくこの少年を囮にして、自分たちは脱出する算段だったのだろう」


「なに? 今から追いつけるか?」


「難しいだろう。ここから最短距離で進んでも、向こうがスラムを離脱し、表通りの雑踏に紛れでもしたら追跡は難しい」


 むう、と榊は厳しい表情になる。ただでさえ多数の子供たちが犠牲になった上に逃亡を阻止できなかったとあれば、責任者である榊としては頭の痛くなるの当然である。


 けれど、ここで魔王サマが明るい声で呟いた。




「なに、きちんと手は打ってあるのだ」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ