表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
107/123

107

その107です。

「開始はそっちのタイミングでいい」


 スタートラインに立ったタユーがそう告げる。


 少年は再びほくそ笑んだ。「はいはい、ありがとうございます」と感謝を口にしつつ仙術を行使する。


 ラインの前に立った少年は、先にあるゴールへ視線を向ける。何回か試してみた結果、だいたい十五秒くらいで走り抜けられると計算はできていた。



 自分の足が速くないことは重々承知しているので、ここからは策が必要となる。



 彼がタユーの横に並ぶと、彼女は屈んで両手を着いた。いわゆるクラウチングスタートの姿勢だが、少年は「何やってんの?」くらいで真似しようとは思わなかった。




「はじめ!」


 なるべく唐突に叫んで一気に走り出す。


 少年は、自分の敏捷力を上昇させる術を直前にかけていた。しかも三倍である。更に念入りに、タユーが変な姿勢になったその足元の地面を泥のように粘化させた。


(どっちも競技中じゃなくて、競技前に施した術だから違反じゃないな)


 むしろムキになってやり過ぎたかな、などと考える少年だが、それでも速度を落としはしない。一気に駆け抜ける――




「遅いな、おめぇ」




 冷え冷えとした声が隣から聞こえてきた。


 少年は――首を動かさなかった。現実を見たくなかったというのも事実だが、その必要が無くなってしまったというのが大きい。


 なにしろ、まばたきの後にはタユーの背中がゴールラインを越えているのを視認できたからである。


「あ? なぁ? えぇー……え?」


 現実逃避が一瞬もできなかったことに、少年は自然と足が止まってしまう。


 仙術が失敗したのか――と呆然とたたずむ彼に、タユーは無感動に声をかけた。


「中途半端なんだよ、おめぇは。スタート前に妨害するなんて誰でもやるってのに、てんで威力がないことしかやってねえ。その上、負けたからって途中で止まってやがる」


「…………」



「とりあえず、とっととゴールしやがれ。断罪はそれからだ」


これで一応、副題の意味を回収ということで……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ