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105/123

105

その105です。

 ばさり、と漆黒の傘を開いても、特に何も起こらなかった。


 ところが、タユーの長い黒髪が唐突に虹のような七色に光り始め、傘を上へ放り投げた刹那、その無数の骨が瞬間的に伸びて地面へ突き刺さり、タユーと犯人の少年をすっぽりと覆い隠す。


 はっ、と少年がりアクションを取ろうとしたが、次に起こった変化を前に硬直してしまった。


 視界が一瞬にして真っ暗になったかと思ったら、次の瞬間には抜けるような雲一つない青空が広がっていたのだから無理はない。


 グワンセンのじめじめして不衛生な部屋とは正反対の広々として開放的な空間は、高い壁で囲まれており、その上には何故か大勢の人間たちがひしめき合って歓声をあげている。


「なんだよ、これ? 変な薬でもキメられたのか?」


 動揺する少年に、背後から「ちげーよ」と声がかけられた。


 振り返ると、先ほどまで自分の体重よりも重そうな服を着込んでいたはずのタユーが、腕や足を露わにした――タンクトップとスパッツ姿になっていた。




「ここはマジカルコロシアム――お前への断罪の場さ」


「なに言ってんだよ、お前?」




 少年の反応を無視して、タユーは黒い扇を広げると、また空へ投げた。


 クルクルと回転しながら上昇する扇は、やがて要が外れてバラバラになり、なぜか中空にずらりと規則正しく整列した。


 「千五百メートル走」「走り幅跳び」「棒高跳び」「テニス」「柔道」……空中に浮かんだ黒い四角の中に書かれた白い文字の数々に、少年はますます混乱する。


「選べよ」


 首や指をコキコキと鳴らしながらタユーが告げるが、少年は理解が追い付かない。というか、そもそも表記された競技が何を示しているのかを知らないというのも大きい。


 ――と、黒い四角が一様に拡大し、競技名の下に簡単な説明文が追加される。確かにこれならば選びやすくなったと言えるが、問題はそこではない。



「ここに並んでいる中から、お前が勝てそうなものを選ぶんだよ。で、おいらと勝負する。お前が勝ったらおいらは死ぬ。逆においらが勝ったら、お前は犯した罪の清算をする。分かりやすいだろ?」


「ンだよ、それ」



 全くもってワケが分からない、と少年は唾を吐く。


 が、落ち着いて考えてみると、現状では彼女の話に乗る以外の選択肢がなさそうな事実に気付いた。どういう経緯であれ、この女がこの場所へ自分を連れ込んだのだ。ならば脱出法もこの女しか知らないと考えるべきだろう。


「……選んで、俺が勝ったら、お前が死んでここから逃げられるんだな?」


「そういうことだ」


「ふうん……じゃあ、もう少し確認したいことがあるんだけど」


血沸き肉躍る戦闘シーンがなくて申し訳ないです。

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