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遅れましたが、あけましておめでとうございます。
第2話、本日より開始です。
「え――あれ?」
気分を上昇気流に乗せられないまま登校してきた孕石泰地は、自分が入る教室を間違えたのかと焦ったが、すぐに間違いなく1年2組だと確認できた。
しかし、明らかにおかしい。
先週末のクラス親睦会(半分は河居いろは歓迎会だが)の話題で、それはもう大いに盛り上がっているだろうと彼は予想し、だからこそ低テンションだった。
ところが、いまの教室の雰囲気は和気藹々どころか、いつもよりも空気が重い――生徒同士がお互い微妙な腹の探り合いをしているかのような空気である。緊張感というより、戸惑いが支配している感覚が強い。
「フム。こっちはこっちで面白いことが起こっていたようなのだ」
興味津々な魔王サマを無視して、泰地は自分の席の前にたむろっている長谷野愁を中心としたグループに声をかけた。
「おはよう、長谷野」
「ああ……おはようございます、ルデル様、孕石」
他の面子もめいめい挨拶をしてくる。しかし、みんな揃って歯切れが悪い。
なにより不自然なのが、この期に及んで例の親睦会の話題を出さない点だ。
「どうしたのだ。親睦会とやらで、幸せの絶頂になったロバが氷上へダンスを踊りに行ったのだ?」
ルデルの聞き慣れない言葉に一瞬戸惑ったが、要するに調子に乗って失敗したのか、と尋ねたのだ
ろうと解釈した長谷野は、すぐに否定する。
「いえ、そういうのじゃないんです。なんていうか…………何が起こったのか分からないので、こんな空気になってるんですよ」
あ、これは悪い兆候だ――泰地は、頭上の魔王サマの双眸がぎらりと輝くのを見えずとも確認できた気がした。
今回も末永くよろしくお願いします。