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#1 呪いの印

流れる涙を拭おうともせず、セクエはリガルを見つめていた。


「ごめんなさい。」


セクエは呟いた。それを聞いてリガルは不思議そうに眉をひそめた。


「何を言っている?」

「私はあなたを止められなかった。そのために、ここに残ることを決めたのに。」

「この状況で、まだそんなことを言うのか。」


リガルは馬鹿にするように言う。しかしセクエは涙を止められなかった。彼は魔力のせいでこうなってしまっただけなのだ。初めて彼の心の中を見たときに見えたのは、こんなに恐ろしいものじゃなかった。もっと綺麗で、儚いものだったはずなのだ。


国王がこうなってしまっていることを、全く予想できなかったわけじゃない。嫌な予感はずっとあったし、バリューガから警告も受けた。それでもこの国に残ることを決めたのは、ただ単に頼まれたからではない。


そうなってしまったときの苦しみを知っているから、我に帰ったときの後悔を知っているから、だからセクエは、リガルを放っておくことができなかったのだ。


「呆れたな。私を憎いとも思わないとは。」

「思いませんよ。私だって、人のことは言えませんから。」


そう言って、セクエはようやく涙を拭った。


「私はあなたを止める。どんな手を使ってでも。」


そう言うと同時に、窓から差し込む光を無数の刃に変えて、セクエはリガルを見据えた。リガルは刃に囲まれながらも、視線をセクエから逸らさなかった。


ふいに、そのうちの一つが動いた。刃はリガルの頬を切りつけ、傷口から血が流れる。だがそれでも、リガルは微動だにしなかった。


「…私を殺そうというのか?」

「殺すんじゃありません。止めるんです。」

「止める、か。聞こえはいいな。だが、お前がやろうとしているのはただの人殺しだろう?」


セクエは黙ってその言葉を聞いていた。リガルは息を吐いて体の力を抜くと、ゆっくりと続けた。


「お前なら分かるだろう。この抑えきれない衝動も、有り余る魔力の苦しさも。私がやろうとすることが、お前のやってきたことと何が違う?お前も同じ状態になったことがあるなら、私の思いが分かるだろう?なぜ私を止める?」

「それでも陛下は、私に止めることを頼んだんですよ。この国を守りたいと、そう言ったんです。それに…。」


セクエはリガルを静かに睨みつけた。


「私は後悔したくないし、陛下に後悔してもらいたくない。」


リガルは呆れたようにフッと笑った。


「そうか…では、殺さずにどうやって私を止めるつもりだ?まあ、そもそもお前に私を殺すだけの覚悟があるとも思えないが。」


それを聞いて、セクエは思わず微笑んだ。


「殺さずにどうやって止めるのか、ですか…。メトと同じことを言うんですね。」

「何?」

「あの時の私は間違っていました。もっと他に、止める方法があるはずだった。私は、陛下を彼と同じようにはしたくない。」

「それなら、お前はどうする?」

「さあ…?もしかしたら、陛下が考えていることと、ほとんど同じかもしれませんね。」


そう言うとセクエは笑みを消し、再びリガルを見据えた。


「今はなんとなく、戦いたい気分なので。」


ーーーーーー


グアノは自室に戻った。どうしようもない不安で胸がいっぱいになる。


(本当にこれで良かったんだろうか…。やはり、彼女を一人で陛下に会わせない方が良かったのでは?)


無理にでも一緒にいた方が良かったのだろうか。だが、彼女は一人でなければ駄目だと言っていた。


(だが、なぜそんなことを…。)


一人で国王と向き合えば、誰にも助けを求められない。そんな危険なことを、なぜわざわざ選んだのだろう。


そこまで考えて、嫌な予感が脳裏をかすめた。


(助けを求められないのは、陛下も同じか…?)


鳥肌が立つのを感じた。


(もし、一人を選んだのが、陛下の命令などではなく、他人の目を避けるためと考えるなら…彼女は何をする?)


そんなこと、考えるまでもない。グアノは立ち上がる。行かなければ。


立ち上がった瞬間、魔力の流れを感じた。強い力だ。グアノは部屋を飛び出し、玉座の間へ走った。部屋の前でツァダルと会った。彼も魔力の流れを感じたのだろう。


「殿下!」

「分かっている。」


それだけ言って、ツァダルは扉を開ける。その向こうに広がっていた光景を見て、グアノは思わず立ちすくんだ。


リガルが全身から血を流して倒れていた。あたりには血が飛び散っており、その匂いと光景は国境での惨劇を彷彿とさせる。セクエはその少し離れたところで呆然と座り込んでいた。


「兄上!」


ツァダルが兄の元へ駆け寄る。グアノはセクエに近づいた。その瞬間、セクエはようやく我に帰り、驚いたようにグアノを見ると、逃げ出すように窓の方へ駆け出した。


「…っ!待て!」


気づいたツァダルが声を上げる。その声が聞こえているのかいないのか、セクエの足は次第にゆっくりになり、そして倒れた。


何を言われるより前にグアノは動いていた。倒れたセクエに駆け寄り様子を確認する。


(血…?)


服にいくつも赤いシミがついているのが分かった。返り血を浴びたのかと思ったが、そのシミは徐々に大きくなっていく。服の下に傷ができているのだろう。だが、服はどこも破れていなかった。


目を開き、呼吸もあったが、傷口から血とともに魔力が抜けてしまったからなのか、無数の傷による痛みのせいなのか、目の焦点が合っておらず、呼吸が弱々しい。意識も朦朧としていた。


(にしても、この傷のつき方はおかしい…。何があったんだ?)


考えたが、分かるはずもない。グアノはセクエに軽く回復魔法をかけ、ツァダルを振り返る。ツァダルは兄の体に手をかざして回復魔法を使っていたが、体はピクリとも動かず、流れる血は止まらない。ツァダルは涙を流していた。


国王は死んだのだ。


「殿下…。」


グアノはツァダルに声をかけた。ツァダルは顔を上げずに答える。


「…彼女は?」

「意識がありません。身体中に傷ができているようです。」

「そうか…。」


それからしばらく黙り込み、ツァダルは言った。


「治療室へ連れていけ。彼女を死なせるな。事情を聞かなければならない。」

「分かりました。」


グアノはすぐにセクエを治療室へ連れていった。目覚めたら自分を呼ぶように医師に言いつけ、グアノはツァダルの元へ向かう。


足取りは重かった。国王が死んだのは自分の不手際のせいだ。彼女のことをもっとよく考えていれば、こんなことにはならなかったのだ。


入り口の近くを通ったところで、一人の兵がグアノに話しかけてきた。


「グアノ様。南東の国境で起こった襲撃の処理が終わりました。敵兵に数人生き残りがいたので捕虜として捕らえ、意識が戻り次第、帝国の情報を聞き出す予定です。」

「そうですか…。分かりました。現在の国境の様子は?」

「はい。帝国側の動きは見られないようですが、負傷した兵もいましたので、他の警備部隊を派遣し、警備にあたらせています。」

「そうですか。引き続き警戒を怠らないように。」

「はい。」


グアノは再び歩き出したが、先ほどの兵は再びグアノに声をかけた。


「あの。」


やけに遠慮したような口調だった。


「なんでしょう。」

「何か、あったのですか?少し元気が無いように見受けられますが…。」

「……。」


グアノは兵から視線を逸らし、少し考えた。


「そうですね。あなたに頼むことにしましょう。死者が出ました。遺体の処理ができる者や、その他必要な技術を持つ者を、すぐに玉座の間へ連れてきてください。」


兵はグアノの言葉に驚き、ひどく混乱したようだった。


「なっ!し、死者ですかっ!玉座の間で一体、誰が…?」

「…陛下が。」

「陛下…?まさかそんな!」

「…状況から考えて、殺されたと思われます。」


悔しげに、呟くように言ったその言葉を聞いて、兵はこれ以上何も言わずに駆け出した。


ーーーーーー


「これは…ひどいですね。」


玉座の間で国王の傷口を調べていた男はグアノに向けて言った。


「全身傷だらけで…。それから、致命傷になったこの傷は、一番ひどい。」

「どういうことです?」

「流れた血があまりに多いので分かりにくいですが、背から腹に向けて体を貫通されたようです。他の傷はそれほど深い傷ではなく、ただの切り傷といった程度なのですが、ここだけが異常にひどい傷で…。見るに耐えられません。」


苦しそうに男は言う。グアノは続けて尋ねた。


「その他に、何かありましたか?」

「そうですね…。体から大量の血が流れたせいでしょう、体にはあまり魔力が残っていませんでした。それから、致命傷は火傷の痕がありました。傷跡から考えると、おそらくは火炎魔法か、熱魔法で貫かれたのでしょう。」

「その他の傷には火傷はなかったのですね?」

「はい。その他は本当にただの切り傷でした。」


グアノはそのままになっているリガルの体をもう一度見た。全身に切り傷ができているが、確かにどれも大きな傷ではない。殺すには不十分な威力だ。


(なぜ小さな傷がこんなに多くできたんだ?殺そうとしたなら、もっと大きな傷があってもいいはずだ。セクエは手加減をしていたのか…?)


いや、そんなことはないだろう。セクエの魔力が大きすぎるので霞んでしまうが、リガルもまた優れた魔導師だ。手加減をする余裕は無いだろうし、そもそも初めから殺す気でいたのなら、手加減をする理由がない。


(偶然、なのだろうか。)


それはセクエに聞かなければ分からない。今はとにかく、セクエが目覚めるのを待つしかないのだろう。


(ツァダル殿下はどうしておられるだろう。)


少し不安だった。慕っていた兄が突然殺されたのだ。ショックが大きかったらしく、一人で部屋にこもってしまった。側近の者も部屋には入れないらしく、本人の状況は分からないが、立ち直るまでにはまだ時間がかかるだろう。


だが、国王が死んだ時点で、ツァダルが次期国王になることは間違いない。国王が死んだことを聞きつけた他国が隙を狙って攻撃してくる可能性も十分に考えられる。残酷かもしれないが、いつまでも悲しみに浸っている余裕はない。早く立ち直ってもらわなければ。


(そのためにも、セクエには早く目覚めてもらいたいものだ。)


他の人に死体の処理を任せ、グアノは治療室へ向かった。セクエの様子を確認したい。目が覚めていればいいが、目覚めていなくてもいい。とりあえずは、セクエが国王から何をされたのか、その確認をしておきたかったのだ。医師たちが何かに気付く前に把握しておきたかった。


グアノは治療室の扉を開ける。


「グアノ様。」

「彼女の様子は?」

「落ち着いています。ですが、まだ目は覚めないようです。」

「そうですか。」


グアノは寝かされているセクエに近づいた。身体中に包帯が巻かれ、血のついた服は着替えさせられていた。魔力は村で見た時と比べればかなり少なく感じる。全身から血を流したのだ、当然のことだろう。


「怪我の様子はどうでしたか?」

「特に何の特徴もない単なる切り傷です。出血は多かったようですが、それほど深い傷はありませんでしたし、傷を塞いでいればすぐに治るでしょう。ただ、やはり傷のつき方に違和感がありますね。服を確認しましたが、破れ目どころか、生地が薄くなっているところすらありません。」

「そう、ですか…。」


グアノは考える。服を傷つけずに体だけを傷つける魔法は、確かに存在する。だが、わざわざそんなことをする理由が分からない。命を狙われていると分かった時点でそんな手加減をするなど、ありえないことだ。


(まだ、私たちが気付けていない何かがあるのかもしれない。)


グアノはセクエの体をじっと眺めた。その体からは、まだわずかに国王の魔力が感じられた。魔力が弱いため、医師に気づかれたということはないだろう。何の魔法なのかは分からないが、このまま魔法が消えてくれればそれに越したことはない。魔力の回復が遅いのは、おそらく大量につけられた魔力制御用の魔道具のせいだろう。そんなに急がなくとも、時間が経てば目覚めるはずだ。セクエの顔に視線を向ける。息は落ち着いていた。


寝顔を見るいると、自分がこの国に彼女を連れてきた時のことを思い出す。まさかこんなことになるとは思っていなかった。自分が一つでも失敗を犯さなければ、彼女をここまで苦しめることも、国王を殺させることもなかったはずなのだ。結局、無理やり連れてきてしまったことも、彼女には謝れないままになってしまっている。自分はなんて大きな失敗をしてしまったのだろう。


ふと、彼女の首元に何か見えた気がした。なぜか気になって、確認しようと襟をめくる。そこに巻かれた包帯の隙間から、何かの模様が描かれているのが見えた。よく見ようと少し包帯をめくると、どうやらそれは蜂のようだった。長い針を持った黒い蜂が、こちらを鋭い目で睨みつけている。


一瞬、これがなんなのか分からなかった。いや、何か分かってはいたのだろう。だが、それを認めるのがあまりに難しかったのだ。


「そんな…まさか…。」


思わず呟く。頭の中を嫌な予感がぐるぐると駆け回っていた。鼓動が早くなるのを感じる。


(ありえない。陛下が本当にそんなことをしたのか?いくら人格が変わってしまっていたとはいえ、これほど危険なことを…彼女に…?)


「どうかなさいましたか?」


医師に声をかけられ、グアノは我に帰った。とっさに襟を元に戻し、医師に向き直る。


「い、いえ。何も。やけに細かい模様だなと、そう思っただけです。」

「そんなところに入れ墨がされていたんですね。彼女が住んでいたところでは、そんな文化があったんでしょうか。」

「…そうかもしれませんね。」


グアノは慌てていることが悟られないように、平静を装って治療室を後にした。自分を睨みつけていたあの黒い蜂の模様は、今もはっきりと頭の中に残っている。


信じられないが、そうとしか考えられない。そう考えるなら、彼女の傷に違和感があることに説明がつけられるかもしれない。だが、本当にそんなことがありえるのか。


グアノは自室に戻る。椅子に座り込み、頭を抱えた。もしそうだとすれば、最悪の事態だ。


「もしあれが…本当に『呪い』だとすれば、早急に手を打たなければ、取り返しのつかないことになる…!」


ーーーーーー


昼間はあれほど騒がしかった城内も、夜になれば嘘のように静まり返り、まるで何もなかったかのような静寂に包まれる。


この静寂が、今のグアノには都合が良い。夜まで騒ぎが続くようなら、思うように動けないからだ。グアノは気配を消し、音を消して国王の自室へ向かっていた。


呪いはまだ研究途中の魔法で、関係者以外には知られていない魔法だ。魔導国ができる前にこの地で栄えた国で使われていた魔法で、現在一般的に使われている魔法と効果がずいぶん違う。そんな魔法を、なんの情報もなしに国王が扱えるわけがない。彼女に本当に呪いがかけられているなら、それに関する何かの情報が王の部屋のどこかにあるはずなのだ。


そう考えて夜な夜な国王の部屋に忍びこむようになって、三日が経った。今のところは誰にも見つかっていない。だが、人に見つかるのも時間の問題だ。早くあの呪いについての情報を得なければならない。


周囲に人の気配がないか入念に確認し、グアノは王の部屋に入り込んだ。主人を失った部屋は呼吸の音さえうるさく聞こえるほどに静かで、窓から差し込む月明かりが部屋を照らし出している。


グアノは一つ深呼吸をし、机の引き出しに手をかけた。ゆっくり引き出したつもりだが、思った以上に大きな音が響く。中に入っている紙の束を手に取り、一枚ずつ丁寧に内容を確認する。


(これも違うか。)


グアノは半分ほど確認したところで紙を元に戻し、今度は別の引き出しに手を伸ばした。机の引き出しはそう多くない。今夜のうちに全て調べることができるだろう。


(もし机に無いとしたら…次は本棚か。)


そんなことを考えながら調べていたからだろうか。グアノは人が近づいて来たことに気づくことができなかった。


「…グアノ?」


突然すぐそばで声が聞こえ、グアノは動きを止めた。心臓が耳元で鳴っている。グアノはゆっくりと振り返った。


「殿下…。」


そこにいたのはツァダルだった。ツァダルは信じられないといった様子でグアノを見ている。


「何をしている?」

「それ、は…。」

「明かりをつけていないということは、許可を得てここへ来たわけではないようだな。自分のしたことがどういうことか分かっているのか?いかなる状況であろうとも、国王の部屋に無断で忍びこむことは大罪に値する。補佐であるお前が、それを分かっていないはずがないだろう。」

「……。」

「どういうつもりだ。答えろグアノ。」


グアノは唇をかんだ。やはり、誰にも気づかれずに情報を得ることには無理があったか。こんな状況で何か一つでも不審な行動をとれば、目立ってしまうのは分かりきっていた。だが、結局誰かに見つかるのであれば、それがツァダルだったのは幸運かもしれない。国王が彼女に呪いをかけていたなど、他の者たちに簡単に言えるような話ではない。


「私は、セクエにはまだ情状酌量の余地があるのではないかと、そう考えています。」

「あの状況で、彼女が兄上を殺していないと思うのか?」

「そうではありません。状況から考えて、彼女が陛下を殺したことは明白です。ですが、そこには正当な理由があったのではないかと思うのです。」

「何を馬鹿げたことを言っている。どんな理由があれ、国王を殺せばそれは大罪だ。許されることはない。」


ツァダルは静かに、そして冷ややかにグアノを睨みつけた。彼の言い分は分かる。絶対的な権力者である国王を殺したことが罪に問われないはずはないし、仮に国王という事情を差し引いても、自分の兄を殺した人間を許すことなどできないだろう。だがもし、その兄が彼女を苦しめていて、それに抵抗するために殺したというのなら、彼女の罪は軽くなるかもしれない。


「…殿下は、呪いという魔法をご存知ですか?」

「…いや、聞いたことがないな。」

「呪いは、かつてこの地に栄えた国で使用されていたとされる魔法です。資料となる文献が見つかったのは最近のことで、その情報については、陛下と補佐である私を含めたごくわずかな者たちの間で、厳重な管理がされていました。危険性も、効果も、まだ多くのことか謎のままです。」

「…それで。それがなんだというのだ。」

「その魔法が使われた痕跡が、セクエの体にありました。」

「……?」


声こそ出さなかったものの、ツァダルはわずかな動揺を見せた。


「つまり、どういうことだ?」

「呪いについての情報が漏れていたか、情報を持つ誰かが彼女に呪いをかけたのです。」


黒い蜂の模様が脳裏をよぎる。どんな効果があるのかは分からないが、国王の状態から考えて、悪い効果であることはほとんど間違いない。グアノは唾を飲み込み、言葉を続けた。


「…私は、呪いをかけた可能性が最も高いのは陛下だと考えています。」

「その言葉、聞きようによっては国王への反逆とも取れるが?」

「彼女の体から、陛下の魔力を感じたのです。彼女が陛下と二人で会った、その後からでした。今はもう、魔力が消えかかっていますので、それを証明することはできませんが、放っておけば、彼女に何が起こるか…。」

「待て、それはおかしいだろう。兄上の魔力が消えかかっているのなら、それは魔法が消えかけている証拠。そこまで気にせずとも、彼女には何も起こらないだろう?」

「いえ、そんなことはありません。」


グアノはきっぱりと言う。


「呪いという魔法は、一度かければ永続的に効果を発動し続けるのです。たとえ陛下の魔力が全て消えたとしても、今度はセクエの魔力が使われるだけで、魔法が終わることはありません。」

「…それは、確実に彼女にかけられているのか?」


グアノは頷いた。


「はい。ほぼ、間違いなく。」

「それを解く方法は分かっているのか?」

「基本的に、呪いをかけた本人しか解くことができません。他の者が解こうとする場合は、呪いが体に定着する前に特定の呪文を唱えなければなりません。しかし、その呪文は呪いごとに異なっており、彼女の呪いを解くために、どんな呪文を使えばいいのかまでは…。」


グアノは言葉を濁した。それを調べるために、グアノはここへ来たのだ。ツァダルはしばらく考え込んでいたが、やがて口を開いた。


「分かった。この部屋に立ち入ることを、私が許そう。」

「殿下…!」

「ただし、彼女にそのような魔法がかけられていなかった場合、お前にはそれ相応の罰を受けてもらう。」


ツァダルはまだグアノを信じてはいないようだった。その目は変わらず冷ややかで、普段の様子とは全く違う。


「…どのような罰でも受けると、誓いましょう。」


グアノがそう言い切ると、ツァダルはもう用は無いと言わんばかりに部屋から出ていった。心臓はまだうるさく鳴っており、指先は震えていた。部屋に一人残されたグアノは俯く。


(やはり陛下が殺されたことで、精神が不安定な状態なのだろうか。普段なら、こんな態度を取る方ではないのに…。)


とにかく、許可は得たのだ。もう夜中にこそこそする必要はない。明日から、昼間のうちに調べることにしよう。


ーーーーーー


朝早くからグアノは再び王の部屋に向かい、呪いに関する情報を探した。だが、やはり机には無い。壁に沿って設置された本棚に目をやる。


大きな本棚だ。大きさも厚さも様々な本がぎっしりと並んでいる。これを調べるのは相当な時間がかかるだろう。


グアノは一つため息をつき、机から出した資料を元に戻した。ツァダルのことがどうしても気にかかり、気が散ってしまう。グアノは少し休むことにして、部屋を後にした。


部屋を出て少ししたところで、セクエの様子を見ていた医師と会った。


「グアノ様。こちらにいらしたのですか。」

「どうしました?」

「彼女が目覚めました。まだ意識がはっきり戻ったわけではありませんが、様子を確認されますか?」

「分かりました。すぐに行きましょう。」


グアノは医師とともに治療室へ向かう。治療室にはセクエがいる他に、捕虜となった兵も数人寝かされていた。だが、セクエは意識が戻っていないというし、捕虜はまだ一人も目覚めていない。部屋はいつも通りの静けさに包まれていた。


グアノはセクエの顔を覗き込む。目は開いているが、反応はない。まだ意識が朦朧としているのだろう。だが、いつ意識がはっきりするか分からない。この状態で医師一人に任せておくのは危険だろう。グアノはしばらく治療室に残ってセクエの様子を見ることにした。医師は他に仕事があるのか、グアノに一声かけて部屋から出ていった。


グアノはセクエの寝かされているベッドのそばに椅子を持ってきて、腰かけた。その顔をぼんやりと眺める。彼女から証言を得られれば、ひとまず何が起こったのかは分かる。もしかしたらかけられた呪いについても何か分かるかもしれない。そうすれば、事態は少しは解決に向かうだろう。


(解決したら次は…殿下の即位式を開かなければならない。)


国王がいない状況が長く続けば、国民の不安を煽ることになるだろう。幸いと言うべきか、国王には子がいない。だから次の国王は弟のツァダルと決まっている。今までも王弟として国王を支えていたことを考えれば、国王を務められない訳ではないだろうし、国民からも受け入れられるだろう。


(そうすれば私も、補佐としての任務を終えることになる。)


国王補佐を務める人は国王が変わるごとに交代する。たとえ前任の人がまだ補佐を務められる状態であっても、同じ人が複数の国王の補佐をすることは滅多にない。自分も補佐の座を降りることになるだろう。補佐だけではない。その他の役員や大臣なども入れ替えが起こることがある。国王が変わるごとに、国は新しくなっていくのだ。


ふう、と一つため息が漏れた。考えを進めるうちに、国王が死んだのだという実感がじわじわと湧いてくる。


(陛下に、少しでも命の恩を返すことができただろうか…。)


恩を返すために城で働き始めた。強くなるために兵士を目指した。力不足と思いながらも国王の隣に立って共に国を支えた。


だが、自分は国王からの最後の命令を果たせなかった。自分の失敗のせいで死なせてしまった。補佐の立場でありながら、自分は一体今まで何をしてきたというのだろう。


思い返したところで、涙など出なかった。ただ分かっているのは、自分は一刻も早く事態を解決させ、国の表舞台から去るべきなのだということ。自分のような病気持ちの役立たずは、もはやこの城に居場所などないのだろうから。


グアノは首を横に振った。いや、今はそんな自己嫌悪に陥っている場合ではない。後のことは、もう少ししてから考えればいい。今はとにかく、事件の解決に努めなければ。


セクエの首筋から呪いの印が少し見えていた。その模様をもう一度脳裏に焼き付ける。鋭い目で睨みつける黒い蜂。もしかしたらその模様に何か意味があるのかもしれない。本棚を調べるのは手間がかかるし、国王の部屋で探すのはひとまず休みにして、次は自分が管理していた資料で模様の意味について調べてみよう。


セクエはまだぼんやりと虚ろな目をしていた。グアノは視線を動かして窓の外を眺めた。セクエの意識がはっきりするまでは、少し休憩としよう。


ーーーーーー


どれほど時間が経っただろう。かすかな声を聞いて、グアノは視線をセクエに戻した。目の焦点が合い、ゆっくりと動いてグアノを見た。


「意識が戻ったようですね。」

「……。」

「陛下との間に何があったのか、聞かせてもらえますか。」


セクエは答えなかった。嫌な予感が頭をよぎる。もともと少し不安はあったのだ。もしかしたら、彼女の心はすでに壊れてしまっているのではないだろうかと。あれだけ大量の人間が死ぬところを見たのだ。それもただ死んだのではなく、酷いやり方で、しかもそれをしたのが自分であるなら、はたして正気でいられるだろうか。


国境で見た光景を思い出す。戦闘には慣れているはずの兵士でさえ、そばで見ていただけで吐き出すほどの惨状だったのだ。彼女自身には、どれだけの負荷がかかっていただろう。まともに話ができる状態まで回復できるものだろうか。最悪、このまま意識が戻らないという可能性もあったのだ。


「大丈夫ですか。」


その声にもセクエは答えなかった。目を強く閉じて、さらに両手で耳を塞いだ。開いたままの口元が、苦しそうに歪んでいる。その口から蚊の鳴くような声が漏れていた。


「血が…」

「しっかりしてください、セクエ。」

「悲鳴が…聞こえる…。」


セクエは体を横向きにして、体を丸めた。なだめようとグアノはその背をさすったが、効果があったかどうかは分からない。ただ、その体がひどく震えていることだけは分かった。顔を抑える手からすすり泣く声が漏れている。包帯のあちこちに赤いシミが浮き出るのが見えた。傷が開いてしまったのだろう。


(まずいな。このままでは、魔力が暴走してしまう可能性もある…。)


ここまで不安定な状態だと、魔力の制御ができるはずもない。目覚めたばかりで魔力がまだ少ない状態では、魔力を使い切って再び倒れてしまうことも考えられた。グアノは背から手を離し、頭に触れる。


眠りの魔法リサク。」


簡単な催眠魔法で眠らせると、セクエの体から力が抜けた。耳を塞いでいた手が顔の前にずり落ちる。


(牢屋に入れるしかないか…。)


可哀想だが、仕方ない。牢屋には魔法を使った脱走を防ぐために、魔力の回復を抑え、さらに魔法を使えないようにする特殊な魔道具が設置されている。その中なら、魔力の暴走を防ぐことができるはずだ。決して居心地がいい場所ではないが、まともに話せるようになるまでは我慢してもらうしかない。


グアノは一つため息をつき、治療室を出て兵士を呼びにいった。


ーーーーーー


「蜂は女王を中心とした社会を作る。そのため強い上下関係を表す。さらに女王蜂か働き蜂かによって効果は変わる、か。」


グアノは自分の持つ情報を声に出しながら確認していた。仮に誰かが情報を漏らしてしまっても大事に至らないように、関係者は使用する魔力の量、呪いの種類、特徴など、それぞれ異なった情報を管理することになっていた。最も危険とされた呪いのかけ方については国王が管理することになっており、グアノが管理することになっていたのが呪いの模様に関する情報だった。


模様には法則があり、色、大きさ、形などに細かい意味があった。それを調べれば、彼女の呪いがどのようなものか判別できるかもしれない。せめてその危険性だけでも分かればいいと思っていた。


「黒い色は死や不幸、その他は…分からないな。」


そもそもそれほど凝った模様ではないのだ。当てはまる条件が少ない。やはり国王の持っていた情報を探すしかないのか。ふと窓の外を見れば、空はもう橙色に染まっており、そろそろ赤くなる頃だった。


今日は疲れた。そろそろ休むことにしようか。そう思って部屋を出る。軽く水を飲むだけにしようと思ったが、途中で修練場の前を通ったとき、思わずその足を止めてしまった。


この時間帯では兵士は皆宿舎に戻っており、普段は活気に満ちている修練場は驚くほど静かだった。グアノは吸い込まれるように修練場に入っていき、その中央に立って空を見上げた。


まだ明るい空にはわずかに星の煌めきが見える。空が暗くなるほどにその煌めきは強くなり、数も増えていく。グアノはその光景にしばらく見とれた。


「どうしたんだよ、グアノ。たった一人でこんな時間に。」


そう声をかけられ、グアノは振り返る。この名を呼び捨てにし、その上これほど親しげに声をかけることができる人は、この城には一人しかいない。


「タンザ…。」


グアノは久しぶりに友人の名を呼んだ。補佐の地位に上がってから、もう二度と友人という立場で会話をすることはありえないと思っていた、その名前を。


タンザはグアノに近づきながら話しだした。


「色々とお疲れみたいだな。まあ、あんなことがあったら、当然か。」

「そうですね…。色々と面倒で、どうすればいいのか。」

「相談なら聞くぞ?と言っても、話せることなんてほとんどないかもしれないが…。」


タンザは心配そうに言った。グアノは少しだけ笑った。そういう心遣いが今は嬉しい。グアノは地面に腰を下ろし、再び空を見上げた。


「…私のせいで、こうなってしまった。私の考えが甘かったせいで。」

「こうなってって…陛下が殺されたことか?」


タンザが尋ねる。グアノは黙って頷いた。


「なぜあの時、それに早く気づけなかったのでしょう。私はもっと警戒すべきだった。きっとどこかで気づけたはずなのに…陛下の側に仕える身でありながら、何もできなかった。」


タンザは黙ってそれを聞いていた。理解できているのか、できていないのかはグアノには分からない。空はもう深い青に染まっており、夕暮れの気配は消えていた。グアノはしばらくそれを眺め、やがてまた口を開いた。


「たとえ殺されることがなくとも、陛下がいずれ王位を降りることは分かっていました。」

「えっ…それって…!」

「ですから、なんとなく分かってはいたのです。そうなった時に周りの人間が、特に殿下が、ひどく傷つくだろうということは明らかでした。」

「殿下に何かあったのか?」

「…部屋にこもってしまわれたと聞いています。実の兄を殺されたのですから、当然でしょう。それに…少し会話をしたのですが、どことなく苛立っておられるというか、冷たく感じられて…。」

「そうか…まあ、そうだろうなぁ…先代の国王夫妻が亡くなられてからずっと、お二人で国を支えてこられたから…。俺たちには分からないような悲しみがあるんだろう。」


グアノは頷いた。


「はい、そうなのでしょう。だからこそ、早く今回の件を解決させなければと思うのですが…。」

「もしかして、セクエさんのことか?」


言葉を濁したグアノに対してタンザはそう言った。グアノは驚いてタンザを振り返る。タンザはグアノと同じように空を見上げていて、グアノのことは見ていなかった。タンザはあくまで当然ことをきいていただけなのだ。


「彼女をここからシンシリアまで連れて行ったのは俺たちだからな。」

「ああ…なるほど、そうでしたか。」


グアノは納得して視線を空に戻した。


「なら、少しはわかるでしょう。彼女の特異性について。」

「特異、というか、信じられないほど大量の魔力を持ってるよな。それを隠すのも抜群にうまい。…その魔力を使って多少の無茶をすることもできる。」

「彼女が魔法を使うのを、見たのですね。」

「ああ。あれはなんというか…無茶苦茶だった。魔法を使おうとしてるんじゃなくて、魔力を吐き出そうとしてるとしか思えない。魔力の消費を抑えようなんてこれっぽっちも考えちゃいなかった。」


(魔力を吐き出す、か。)


国境の光景をまた思い出した。タンザの言う通りだと思う。相手を殺すだけなら、わざわざ氷を使わなくても、もっと簡単にやる方法だってあっただろう。彼女ならそれを見つけられたはずだ。しかし、それをせずに魔力を使い果たした結果、彼女は倒れてしまった。


「…南東の国境でのことを、聞いていますか。」

「ああ。大量の敵兵が惨殺されて、生き残った捕虜もまだ目覚めないっていう…。なんでそうなったのかは分からないが、とにかくひどい有様だったって。」

「あれをやったのはきっと、セクエです。」

「…そうか。」

「やけに冷静ですね。」

「まあ、話の流れ的にそうだろうとは思ってたから。」

「…戦場で人を殺すのは仕方のないことです。多くの兵が、戦場で生き抜くために敵を殺します。その相手に恨みがなくとも、そんなことは関係ない。戦場というのはそういう場所ですから、私は彼女には罪はないと思っています。」

「そうだな。一人の兵が一人を殺そうとも、百人を殺そうとも、戦場では罪には問われない。」


そう言う声は少し冷たかった。タンザもきっと敵兵を殺したことがある。だから、タンザはそういう現実をずっと受け入れてきたのだろう。


「ただ彼女は、人の死をあまりに多く見過ぎたのでしょう。彼女は壊れてしまっていました。まともに会話ができる状態ですらなく、ずっと怯えていて。」

「…彼女が陛下を殺したっていうのは、本当のことなのか?」


タンザは声をひそめて言った。


「状況から考えて、間違いありません。私が考える限りでは、動機もありますし…。何か不自然な点でもあるのですか?」

「いや…。セクエさんに、本当に人が殺せるものなのかって思って。」

「あれだけの魔力があるのです。人を殺すなど、簡単なことでしょう。それに、国境で敵兵を殲滅したのはセクエだと、さっき私が…。」

「それとこれとでは、状況が違うだろ。」


タンザはきっぱりとそう言った。


「あれだけの魔力があったんだ。俺は、国境では魔力が暴走しただけなんじゃないかと思う。抑えようがなくなって、どうしようもなかったんだろう。だけど、陛下とお会いしたのはその直後だろう?魔力の暴走が起こったとは考えにくい。」

「だとしても、やはりセクエが意図的に陛下を殺したとしか…。」

「……。」


グアノのその答えに、タンザは黙り込んでしまった。グアノは尋ねる。


「あなたから見て、セクエはどのような方なのですか?」

「…弱い人。」


簡潔なその答えに、少しだけ驚いた。あれだけ魔力がある人間を弱いと言うのは、違和感を覚える。


「最初見たときは、怖いって思ったさ。でも、すごく脆い人だった。彼女自身が、一番あの魔力に怯えてる。…きっと彼女が人を殺したのは、国境が初めてじゃない。」

「そういうことが、分かるものなのですか。」

「あくまで勘だよ。だけど、人を殺したことがある奴とない奴は、なんとなく見分けが付くさ。たとえ罪に問われなくても、人を殺せば、ずっとそれを背負っていくことになるんだから。…彼女は俺たちには何も言わないで、夜な夜な寝床を抜け出して魔力を消費していたんだ。警告することも、助けを求めることもしなかった。そのくせ、誰かが手を伸ばしてやらないと今にも潰されそうなほど弱々しくて。」


それはグアノの印象とはかけ離れたものだった。グアノは彼女を膨大な魔力を持つ危険な存在としか思っていなかったのだ。


「…あんなに弱い人に、意図的に人を殺すだけの覚悟があるなんて思えない。」


タンザはそう言って言葉を切った。


「しかし…陛下にもセクエにも身体中に傷がありました。」

「そうか…。じゃあ本当に、彼女がやったのかもしれないな…。」


タンザはどこか残念そうに呟く。


「あの状況は、やはり戦ったとしか…。」


(あの傷は自然にできる傷ではない。やはり二人は戦い、そしてセクエが陛下を殺したのだろう。)


グアノは二人の傷の様子を思い出してそう考える。だが、ここで一つ疑問が浮かんだ。


(二人にあった傷は、どれも似ていた。陛下の致命傷を除けば、他の傷は全て切り傷で、どれもそれほど深いものではない。)


グアノは視線を下におろして考える。


(…何かがおかしくはないか?切り傷以外にも、打撲や火傷の跡、それが無いとしても、もっと深い傷や浅い傷があってもよさそうなものだ。だが、全ての傷が、狙ったように同じ深さの切り傷になっている…。)


その上、セクエは服が傷つけられていないという疑問点もある。やはり、殺されたという事実以外に何かあったのではないか。


「まだ、何かが見えていないのかもしれない…。」

「グアノ?」

「私は、もっと急がなければならないのかもしれません。単に殺されたと決めつけるには、あまりに不自然な点が多い。」


グアノは立ち上がる。


「自分の失態を悔やんでなど、いられませんね。きっと、私にはまだ事件の本質が見えていない。」

「そうか…。」


タンザも立ち上がる。そしてグアノの肩を叩いた。


「いいけど、あんまり頑張り過ぎるなよ。見てるこっちがヒヤヒヤする。頑張るのはいいことだが、それで倒れたら元も子もない。」


からかうようなその口調に、グアノはふっと微笑む。


「はい。肝に銘じましょう。今日はありがとうございました。話したことで、状況の整理ができましたから。」

「それなら良かった。」


タンザも嬉しそうに笑い、そして二人は別れた。グアノは部屋に戻り、横になって目を閉じた。途端に眠気が襲ってきて、グアノは夢の中へ落ちていった。

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