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幕間 詠み人知らず
―― 森の中に、霧に隠された人影がひとつ。
歌っているようでもあり、詠っているようでもある低い声。
音の輪郭が霧に溶け込んで消えてゆく。
心悲しげに紡がれた詞はこの国の哀しい歴史 ――
「王が忠臣の刃に倒れた」
15年前、この知らせが国中を震撼させた
この事件が引き金となり大規模な反乱が起こった
王からも民からも信頼の厚かった忠臣が
そのようなことをするはずがない
騎士や民たちは声を上げた
では真犯人は誰か 使われたのは忠臣の剣
化けの皮が剥がれただけだ
新王に即位した者は高らかに告げた
「叛逆の忠臣を死刑に処す」
人の手にかかるくらいなら
忠臣は自刃した
15年の月日が流れ
真相は今も闇の中