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99回告白したけどダメでした  作者: Joker
終わりと夏と
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95話

「おい、ここはどうやるんだ?」


「え! あぁ、ここは……」


 相変わらず勉強に集中する武司。

 そんな武司に勉強を教えている志保なのだが、妙な視線に気がついた。

 なんだか誰かに見られているような気がして、周りが気になってしまう志保。


「おい、どうした? きょろきょろして」


「なんか、見られているような……」


「はぁ? 誰が俺らなんかを見るんだよ、気のせいだろ?」


 武司は興味なさそうに志保に言葉を返すと、勉強に戻る。


「そうかしら? まぁ、確かに私たちなんか見ても楽しく無いけど」


「喜ぶのは誠実や健くらいなもんだ、こんなとこ見られてたら、完璧に月曜に弄られる」


「どうしてよ?」


 不思議そうにしながら尋ねる志保に、武司は手を止めて話し出す。


「こんなとこ見られたら、やれデートだなんだと、あいつらは絶対に茶化してくる」


「で、デートって何よ! ただの勉強会でしょ!!」


「んな事わかってるっての、問題は他人がこの状況をどう思うかだろ?」


 武司の言葉に、志保は顔を赤くする。

 そんな志保とは対照的に武司は、やれやれと言った様子でそう言うと武司は自分の勉強に戻る。


「な、なによ……もう……」


「そんな事よりもここの問題教えてくれ、わけわかんねー」


「わ、わかったわよ……それでどれ?」


 志保も視線は気のせいだろうと自己完結し、武司に勉強を教え始める。

 二人がこうして一緒に勉強するようになって数日。

 武司は意識しては居なかったが、志保からしたら、放課後に男子とこうして二人っきりで勉強するなんて、恋愛漫画の一ページのようでなんだかドキドキしていた。


「……でも、相手がこれか…」


「おい、今失礼な事考えなかったか?」


「大丈夫よ、考えてないわ」


「じゃあ、なぜ目を合わせようとしないんだよ!」


 思わず口に出してしまった志保だが、こういう何気ない会話が楽しいと感じ始めていた。

 入学して初めて知り合った異性の友人。

 武司は志保にとってはそういう認識で、沙耶香と誠実の関係を二人で話したり、たまに意見の違いで喧嘩したりしてきた。

 いままで友人としてしか見てこなかったはずなのに、なぜ今更になってこんな風に思うのだろうかと志保は不思議だった。


「なぁ……」


「なによ、勉強に飽きた?」


「そうじゃねーよ、誠実と前橋の事なんだけどよ」


「いきなり何よ」


 武司は問題集から視線を外し、まじめな表情で志保に話出す。


「前橋に勝ち目ってあると思うか?」


「勝ち目? まぁ、あんたは学力では絶対勝てないわね」


「そうじゃねーよ! 誠実争奪戦のことだよ!」


 誠実争奪戦とは、武司や志保などの外野が勝手に言っている言葉で、要するに一体どの女性とが誠実と付き合うのかという事を表している言葉だ。


「そんなの決まってるでしょ、うちのおっぱい部長なめないでよね!」


「……あんまり女子がおっぱいとか言うな……なんか嫌だわ」


「でも、あれって相当な兵器よね?」


「あぁ、しかも誠実の好みどんぴしゃだからな……」


 確かに沙耶香は可愛い上に、胸が大きくスタイルも良い、しかしながら若干天然なところがあり、そのうち誠実と一線を超えてしまうのではないか? なんて話も出ていた。


「しかも、告白してからは積極的になったからね、そのうち誠実君大人になるんじゃない?」


「だろうな……あぁ~うらやましい」


 ため息を吐きながらそんな事を言う武司に、志保もため息を吐く。


「何馬鹿言ってるのよ」


「うっせぇなぁ~、男は基本そういうことを考えてる生き物なんだよ」


「女子相手に何言ってるのよ……」

 

 本気で悔しがる武司に、志保はあきれながら言う。


「古賀は彼氏とか作らねーの?」


「は、はぁ? な、何よ…いきなり!!」


 急にそんな話を振られ、志保は顔を赤らめる。

 そんな志保を見ながら、武司は不思議そうに応える。


「いや、顔は良いんだし、ちょっと頑張れば直ぐに出来るんじゃないかと思ってよ」


「か、顔は……良い……」


 武司からそう言われ、志保は凄くうれしかった。

 なんで武司に可愛いと言われて、自分がうれしいのか、よくわからない志保だった。

 まぁ、顔が良いと言われてうれしくない女子はいないし、誰から言われてもこういうものなのだろうと納得する。


「あ、生憎だけど……好きな人も居ないし、今は沙耶香の事が心配なのよ」


「ふーん、そういうもんか……この夏に絶対彼氏作る! とかなんとか、うちのクラスの女子が言っててな、女子も彼氏が欲しいもんだと思ってたが、人それぞれなんだな」


「そりゃそうよ。あ、あんたは…どうなの?」


「は? 俺か? 残念ながら、友人二人がモテるもんで、俺には女子が全く寄ってこないよ……でも、俺たちの青春は始まったばっかりだぜ! 俺は今年も来年も彼女を作る努力は怠らない!」


 楽しそうに話す武司を見て、志保はおかしくなり、吹き出してしまった。

 何をそんなアホらしい事を気合いを入れて話しているのかと、考ええるとおかしくなってしまった。


「あははは、何が彼女を作る努力は怠らないよ。私とこんなことしてたら、一生彼女なんて出来ないわよ」


「あ……そういえば、そうか……」


 女子と休みの日にハンバーガーショップで勉強。

 仲の良い友人とはいえ、第三者から見ればカップルと間違えられても不思議ではない。


「まぁ、でもお前に教えてもらうのが、一番良いしな」


「それって、どういうこと?」


「頭が良いっていうのもあるけど……一番は、女子なのに話しやすいんだよな……気を遣わなくて良いし」


「そうね、そういう点は私も同意」


「お互いの友人は、問題児だらけだし……」


「……そこも同意ね…」


 お互いに変わった友人が居るため、お互いの苦労も共有出来る。

 互いに共通点が多く、話も合う。

 そして唯一の共通点は、互いに友人と比べて普通の高校生だと言うことを自負しているところだった。


「俺はアイドルオタクのイケメンでもないし、ラブコメ主人公でもない、至って普通の男子高校生だが、周りがそういうのだと色々苦労する……」


「私も……沙耶香は最近壊れて来てるし……料理部の面々は個性的だし…」


 互いに振り返ると、なんだか自分だけが苦労してきたような感覚になってくる。

 そして二人は打ち合わせでもしたかのごとく、息ぴったりに言う。


「「苦労するわ~」」


 なんだかんだで、似ているのかもしれないと互いに感じる武司と志保なのであった。

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