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99回告白したけどダメでした  作者: Joker
修羅場とは無縁なはず……
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41話

 翌日、誠実は少し早くに目が覚めた。

 目覚めはすこぶる良かった。

 しかし、気分は最悪で、何もやる気が起きない。

 いつまでもウジウジもしていられないので、とりあえず学校に行く準備を始める誠実。

 明日は土曜日、色々あったがようやく週末。

 誠実はなんだか今週は色々な事があったと、今週の出来事を振り返りながら、制服に着替える。


「はぁ……憂鬱だな…」


 ため息を吐きながら、誠実は制服に着替えてリビングに向かう。


「おはよ」


「どうした誠実? 顔が気持ち悪いぞ?」


「その気持ち悪い子供の親父は誰だろうな」


 朝から冗談を言う父親に対し、誠実も言い返す。

 しかし、今いちいつもの調子が出ない。


「なんか調子悪くてさ」


「そうか、その顔だもんな」


「親父もな」


「「はぁ~」」


 親子そろってため息を吐き、いつものように朝食を食べ始める誠実。

 新聞を読みながら、コーヒーを飲む父親の向かいの席で、誠実は朝食のトーストにかじりつく。


「アンタ、昨日帰ってきてからすぐに寝たけど、何かあったの?」


「別に……なんでも」


 母からそんなことを尋ねられる誠実だったが、別に話すことでもないので、黙っておくことにした。


「そう、そういえば最近……」


「おはよ」


 母が言いかけている途中で、美奈穂が制服姿でリビングにやって来た。

 いつも通り、髪を整え、薄っすらと化粧をし、かすかに女性らしい良い匂いをさせながら、美奈穂は誠実の隣に座る。


「ちょうど良かった。美奈穂にも言おうと思ってたのよ」


「何? お母さん」


「あんたら兄妹、最近仲良いわね」


「え、あぁ…まぁな…」


 母が椅子に座りながら、美奈穂と誠実に向かって言う。

 何かと思えば、そんな事か、誠実はそう思いあまり気にはしていなかった。


「まぁ、仲が悪いわけじゃないし、良いでしょ、ね?」


「ん? あぁ、そうだな」


 美奈穂も母の言葉を認め、誠実にそんなことを言って来る。

 しかし、両親はそんな2人を見て、何かあったのだろうという事に気が付き、こんな事を言い始める。


「誠実、いくら美奈穂が可愛いからって、手を出しちゃだめよ」


「何言ってんだよ。妹だぞ? 出すわけねーだろ」


「どうだか? アンタは父さんの子供なのよ」


「それを言ったら、あんたの子でもあるんだが」


「母さん、この家の父さんって、一体……」


 涙目で新聞から目をそらし、母に尋ねる父を見ながら、誠実は今日も我が家は平和だと感じる。

 朝飯を食べ終え、誠実は学校に向かう準備を整え、いつもの時間に家を出ようとする。

 昨日の騒ぎもあったので、美奈穂とは別々で行こうと決めていた誠実だったが、玄関先で美奈穂に捕まり、現在は2人で登校中だ。


「良いか、今日は校門前まで来るなよ。お前はこの先の一本下の通りを歩いて学校に行け」


「なんでよ、面倒臭い。別にいいでしょ」


「俺が困るんだよ……それに、今日は一人になりたい気分なんだ……」


 昨日の綺凛の言葉が忘れられず、誠実の心は沈んだままだった。

 そんな誠実に美奈穂は、昨日の事を尋ねる。


「んで、昨日は何があったの? あんな帰り方したら、私にもあの2人にも失礼だと思うけど?」


「あぁ……そうだよな。まぁ、なんていうか、裏切られたって言うか……」


 青く晴れ渡る空を見ながら、誠実はそんなことを言う。

 美奈穂は詳しい理由は分からなかったが、ショックな出来事があったという事だけがわかり、心配そうに誠実を見つめる。


「忘れればいいじゃん、そんなの」


「簡単に言うなよ、俺にとっては忘れたくても忘れられないんだ」


「あっそ、でも明日の約束は忘れないでよ!」


「あぁ、分かってるよ。どうせ暇だしな」


 土曜日の約束の事を言われ、誠実は気分転換にでもなれば良いと思っていた。

 そんな話をしているうちに、いつの間にか学校の校門前が目と鼻の先にまで迫っていた。


「……やべぇな」


「なんか校門前に人だかり出来てない?」


 遠目からでもわかるほど、学校の校門の前には、人が集まっていた。

 しかもほとんどが男子生徒であり、中にはスーツを着ている馬鹿丸出しの奴も居る。


「美奈穂、今からでも遅くない、戻って下の道から行け」


「何よ? そんなに妹と登校するのが嫌?」


「いや、どっちかというとお前の為だ、良いから早く戻れ」


「嫌よ、面倒だって言ってるでしょ、それにここまで来たのに、戻るなんて馬鹿らしい」


「あ! おいコラ! 引っ張るな!」


 美奈穂は、誠実の手を取り、そのまま校門の前に向かってズンズンと歩いていく。

 そんな美奈穂たちに、校門前の男たちが気が付かない訳がなく。


「あ! おい、来たぞ!」


 一人の男子生徒が、美奈穂と誠実の方を指さし叫ぶと、その場に居た他の生徒も美奈穂と誠実に注目する。


「見つかったか……」


「え、ちょっと、何?」


 頭を押さえ、諦めモードに入る誠実と、イマイチ状況をつかめていない美奈穂の元に、校門前にいた男子生徒全員が迫って来た。


「は、初めまして! 君、学生モデルの伊敷美奈穂ちゃんだよね? 僕は君のお兄さんの親友の……」


「バカ! 親友は俺だ!」


「何を言っている、義兄弟の盃を交わした俺こそが……」


 自分との関係をダシに使い、美奈穂と仲良くなろうとしている連中を見て、誠実は深いため息を吐く。

 美奈穂は美奈穂で、そんな男子生徒たちに圧倒され、苦笑いを浮かべる事しかできないでいた。

 誠実は昨日の事もあり、面倒事はごめんだったので、美奈穂の手を引き、男たちの間を無理やり進む。


「悪い、こいつ一応受験生だから、行かせてやってくれ。それと、美奈穂と付き合いたかったら、俺をダシに使うのはやめろ。やりたきゃ勝手にやれ」


 誠実は冷たくそういうと、美奈穂の手を引いて男子生徒の輪の中から脱出する。


「わかったか? お前がこういう目に合うから、俺は心配で、一本下の道を行けって言ったんだよ。わかったら早く学校行け、それと帰りも迎えには来るな、さっきみたいなことになったら面倒だ」


「わかったけど……帰りは別に良いじゃない、下校時間もズレるし」


「あほか、昨日みたいにお前が一人で待ってると、うちの学校のさっきのアホどもみたいなのが、声とか掛けてくんだよ、良いからお前は真っすぐ帰れ、その方が心配しなくて良い……」


「……心配なんだ」


「ん? あぁ、そりゃあな」


 誠実がそう美奈穂に応えると、美奈穂は頬をほんのりと赤く染め、誠実に背なかを向ける。


「じゃ、私も行くね。あんまり落ち込んでんじゃないわよ」


 美奈穂はそういうと、走って学校に向かっていった。

 残された誠実は、そんな美奈穂を見ながら、この後の事を考える。


「さて……この馬鹿どもどうすっかな」


 誠実の背後には、昨日に引き続き、誠実を使って、美奈穂と仲良くなろうと画策する男子生徒が、目をギラギラさせながら、待機していた。

 

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 【「あんたら兄妹、最近仲良いわね」 「まぁ、仲が悪いわけじゃないし、良いでしょ、ね?」】にてこの返答だとおかしく感じます。「仲が悪いよりは良いでしょ?」的な言葉が良いのでは?
2020/04/21 00:18 退会済み
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