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99回告白したけどダメでした  作者: Joker
告白とそれからと……
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28話



 私、山瀬綺凛は、教室で友人を待っていた。

 もう時刻は十七時をすぎ、段々気温が下がってきているのか、昼間ほど暑いとは感じない。


「はぁ……まだかしら…」


 友人の美沙が職員室に用事があるからと教室を出て行ったのは、もう四十分も前の話だ。

 すぐに戻るからと言うから、待っているのに、全然すぐではない。


「ひまね……」


 そんな事をつぶやきながら、机に顔をつけて窓の外を眺める。

 

「そういえば……今日は特別に静かな一日だった気がするわね……」


 窓の外を見ながら私はそう思った。

 いつも通りの学校のはずだったにも関わらず、なぜか今日はいつもより静かだった気がする。

 たまにはこんな日もいいな……。


「……そう言えば、何か忘れているような………」


 私は何かやり残したことがあるような気がしたが、それが何かは一向に思い出せない。


「う~ん、確か昨日……お父さんと電話する前に何か……」


 記憶を辿り、なんだったかを思い出そうとする。

 しかし、なぜか思い出せない。

「思い出せないってことは、そこまで重要じゃないわよね……」


 私は考えた末、そう結論付けて納得する。

 すると、教室のドアが開き、美沙が戻って来た。


「ごめんごめん! 先生話長くって~、帰ろ帰ろ!」

「もお……結構待ったわよ……飲み物くらいおごってくれてもいいんじゃない?」

「わかったわよ~、まぁ待たせちゃったしね~、早くいかないと、誰かさんも待ってるかもね~」

「え? 誰の事?」


 私は美沙の言葉が気になり、尋ねる。

 もしかしたら、誰かと何か約束をしていただろうか?

 であれば、忘れていたのは申し訳ない。

 

「決まってるでしょ? 伊敷君よ、どうせまたいつものように下駄箱にラブレター入れて、校舎のどこかで待ってるわよ」

「あ……そっか……」


 そういえば、今日は一度も彼の顔を見ていない。いつもなら朝に一回、昼に一回、放課後に一回くらいのペースで彼は私の前に現れる。

 しかし、今日はそれがない。


「そう言えば、今日は来ないわね……どうしたのかしらね?」

「さぁ……まぁ、どうせ下駄箱に行けば、手紙が入ってるでしょ? ごめんね、もう少し帰るの遅くなるかも」

「いいわよ、別に私は気にしないし、前にも言ったけど、今度こそは少しきつめに行ってやらなきゃだめよ!」


 私と美沙は昇降口を目指しながら、そんな話をする。

 少し興奮気味に話をする美沙に、私は考え事をしながら生返事で答える。


「そうね……」


(どうしたのかしら……言われると気になるわね……)


「男には、キモイって一言そう言えば勝手に傷ついて終わりよ」


(欠席……ではないわよね? そういえば昨日も告白は一回しかされてないし……)


「いい、今日こそ言ってやるのよ! このストーカー野郎! キモイんだよ! ってね!」


(だとすると……もしかして昨日の子と……)


「ねぇ綺凛、聞いてる?」


 考え事に夢中で、私は全く美沙の話を聞いていなかった。


「ごめんね、考え事してて……」

「どうしたの? 綺凛が考え事なんて珍しいわね……」

「うん、今日の告白なんだけど……もしかしたらないかもしれないわよ」

「え? どうして?」

「うん、実はね……」


 私は、家庭科室で見た昨日の出来事を美沙に話した。

 彼が昨日の事をきっかけに、いい加減新しい恋に行こうと私を諦めたのなら、それはそれなんだか嬉しかった。


「えぇぇぇぇ!!!!! あのストーカーが……」

「うん、私もびっくりした。覗いたのは悪かったけど……」

「しかも、相手って料理部の部長さんでしょ? あの可愛いって有名な!」

「有名なのは知らないけど……可愛かったわね………胸も大きかったし」

「あぁ……気にしちゃだめだよ……」


 私は自分の胸を見ながら、美沙に言う。

 私は、同年代の中で胸が小さい方だった。

 今まではそのことを気にしなかったが、高校生になってからは気になり始めていた。


「ま、まぁ……それはいいことじゃない。綺凛ももう告白されないし、伊敷君も彼女ができるし、みんな幸せじゃない」

「そうね、まぁでも……彼の事だから、簡単にはそうならないかもね」

「あー言えてる、逆にそんなあっさり手の平返されたら、逆にむかつくでしょ?」


 彼がいいのなら、私はそれでいいと思っていた。

 私がきっと彼をなんとも思っていなかったからなのであろう。でもなぜだか彼には笑っていて欲しいと思えてきていた。


「私は彼が笑ってるなら、それでいいわ」

「え? なんで⁉ あんな丁寧に告白受け続けたのに?」

「うん、九十九回も告白されたからかしら、なんかもう他人とは思えないというか……友達くらいの距離感かしら? 彼が傷つかないなら、これは一番いい状況なのかもしれないわ」

「ふーん……そういうもんかな?」


 そんな話をしている間に、昇降口にたどり着いた。

 私は自分の下駄箱を開けて中を確認するが、あるのは私の靴だけで、いつも入っていた手紙はない。


「やっぱり……あの子と上手くやってるのか?」


 私は微笑みながら靴を取り出して、内履きと履き替える。


「な~んだ、百回行かずか」

「そういう事言わないの、彼も真剣だったんだから…」

「ハイハイ、まぁ綺凛がいいならいいんじゃない? 早く行こ!」


 美沙と帰る時は、いつもハンバーガーショップへ寄り道をする。

 今日もそうしようと話し、昇降口を後にすると、校門前が何やら騒がしいことになっていた。


「ん? あれって伊敷君じゃない??」

「え? あ、本当……ね?」


 そこには見慣れた男子生徒が一人と、見慣れない美少女が三人いた。

 一人は料理部の部長だとすぐにわかったが、他の二人は誰かわからない。

 四人の雰囲気から、何やら異様な空気を感じる。


「な、何かしらね……」

「さ、さぁ……でもなんだか……怖いわね」


 私と美沙は少し恐怖を感じながら、そんな四人の様子を見ていた。

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