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99回告白したけどダメでした  作者: Joker
告白とそれからと……
23/297

23話



「……で、緊急ミーティングと称して、私らを呼んだと」

「そ、そうです……どうしよう! 志保! 私、あの妹さんと先輩に勝てる気がしないよ!」

「昨日のやる気はどこ行ったのよ……」


 お昼休み、沙耶香は料理部のみんなを緊急ミーティングと称して、家庭科室に集めた。

 もちろんそれは口実で、沙耶香はみんなの力を借りてこの緊急事態にどう対処するべきか相談したかったのだ。

「そういえば今朝伊敷君、女の子と歩いてたわね……しかもすごい美少女」

「私は、ホームルーム前に廊下で男子が騒いでるの見たよ。なんか二年のお嬢様が伊敷君を尋ねて来たって……」

「そうなのよ……」


 ガックリと肩を落とし、沙耶香はため息をつく。

 その場にいた料理部の一同は沙耶香を見ながら「昨日は無理やり押し倒しそうな雰囲気だったのに……」などと思っていたが、あえて誰も口には出さない。


「でも、その二人が伊敷君を好きかなんて、わからないじゃない? それに一人は妹でしょ?」

「違うの! なんか、二人からはこう……私と同じような匂いがしたって言うか……」

「じゃあ、同じメーカーのボディーソープでも使ってるんじゃない?」

「そういうことじゃなくて!」


 沙耶香は今朝、誠実の近くにいた見知らぬ二人の少女から自分に似た何かを感じていた。


「はぁ~、どうしたら……」

「どうするも何も、放課後に話すんでしょ? そこで一気に行くしかないわよ!」

「大丈夫! 部長には大きな核ミサイルが二つあるじゃない!」

「胸の事は言わないで!」


 胸の事を言われ、沙耶香は赤面し、胸を隠すようにする。


「キスくらいしてやればいいのよ。そうすれば嫌でも意識するわよ?」

「き、キス?」

「既成事実作るとか言ってた人が、キスでどんだけ動揺してるのよ……」

「考えて見たら……私って、そういう知識あんまり持ってなくて……」

「それでよく既成事実なんて言えたわね……」


 呆れた様子の料理部一同。

 しかし、自分たちが沙耶香を焚きつけてしまった事実変わらないので、何とかしようと考え始める。


「まぁ、やっぱりこの前話した通り、少し返事を待ってもらうのがいいんじゃない? 今日見た女子二人が、伊敷君に好意を持ってるかもまだわからないし、とりあえずはアピールするのが一番だと思うわよ」

「でも、あの二人……私と違ってすっごく可愛かった……」

「あんたも十分美少女だから安心しなさい、それとあんたにはこの最終兵器があるでしょ?」


 志保はそういうと、沙耶香の胸を背後から揉みしだき始める。


「きゃっ! や、やめてよ志保!」

「やっぱ大きいわね……何食べたらこうなるのよ……」

「この胸を見て、反応しない男子はいないと思うけどね」


 志保と沙耶香のじゃれ合いを見ながら、料理部の面々は勝てない勝負ではないと思っていた。

 まだ部として活動を始めて二か月とちょっとでも沙耶香の容姿もそうだが、性格の良さや料理の上手さなど部員みんなが沙耶香の良いところを知っている。


「沙耶香、自信持ちなって、あんたは十分可愛いし、いい子なんだから、既成事実なんて作ろうとせず、ありのままを見てもらえば、伊敷君だってあんたの良さに気がつくよ」

「志保……」


 沙耶香から離れ、志保が優しく励ます。


「そうだよ。シンプルに自分の思ってることを言えばいいんだよ、沙耶香」

「大丈夫! 伊敷君だってちゃんと見てくれるよ!」

「みんな……」


 料理部のみんなから励まされ、沙耶香は胸が熱くなるのを感じる。

 みんながこうして応援してくれる、本気で考えてくれる。

 そう思うだけで、沙耶香は勇気をもらえた。

 この告白はもう自分だけの問題ではない一緒になって考えてくれた料理部のみんなのためにも、沙耶香はなんとしても誠実と付き合えるように努力しようと誓った。


「ありがとう、おかげで元気出た! 私頑張るよ!」

「やっといつもの部長に戻った」

「部長はそうでなくっちゃね!」

「心配ばっかりかける部長ね」


 沙耶香はいつもの元気を取り戻し、みんなにお礼を言う。


「ありがとう、みんな。あ、もう一つ聞きたいんだけど、良いかな?」

「何よ、もうこうなったらなんでも相談に乗るわよ」

「私らが焚きつけた責任もあるからね」


 料理部の面々はやれやれといった様子で、沙耶香の言葉を待つ。

 沙耶香は雑誌を取り出し、とあるページを見せながらみんなに尋ねた。


「男の子って、この「せいじょうい」っていうのと、バ……」

「「「アンタはなんてものを学校に持ってきてるの!」」」


 沙耶香がみんなに見せた雑誌はいわゆる「十八禁」の男性雑誌の一ページ。

 それを見た部員たちは、顔を真っ赤にしながら、沙耶香から雑誌を奪い取る。


「ちょっ! 何するの?」

「何するのじゃないわよ! こっちがナニするのって聞きたいわよ!!」

「ぶ、部長……この雑誌どこで……」

「お姉ちゃんが持ってたのを借りたの。参考になればと思って……」


(((なぜ姉が持ってるんだ……)))


料理部の面々は赤面したまま沙耶香の家庭に疑問を抱きつつ、沙耶香に尋ねる。


「な、なんでそんな質問を?」

「い、いや、だって……私、そういう知識ないから、勉強しようと思って」

「私らだってこんな知識ないわよ! 私らまだ高校入って間もないのよ‼」


 部員達の息は荒立っている。

 高校に入ってまだ三カ月かそこらの女子高生に、そんな経験などある方が珍しい。

 ましてや料理部の面々は言ってしまえば普通の女子高生で、ギャルや不良といった類ではないので、男子と付き合った事もない部員がほとんどだ。


「あ、あんた……既成事実はあきらめてないのね……」

「うん! だって、既成事実さえあれば、誠実君とずっと一緒に!」

「誰か! 医者を! 精神科医を!」

「誰よ、ここまで部長をおかしくしたのは! つい先週までは純情な良い子だったじゃない!」

「お願い沙耶香! 戻ってきて!」


 恋は盲目、この言葉は今の沙耶香にピッタリだと、沙耶香以外の全員が思った。

 料理部一同は、このままでは放課後何が起きるか分からない、そう思い影からこっそり、沙耶香が暴走しないように、見守ることを決意した。

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