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99回告白したけどダメでした  作者: Joker
告白とそれからと……
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19話

「はぁ……まぁ昨日飯をおごってもらったしな……」

「わかればいいのよ、じゃあ土曜日空けといてね」

「へいへい」


 話をしているうちに、誠実の通う西星高校の校門前が迫っていた。


「じゃ、私行くから」

「気をつけてな~」


 校門前で美奈穂と別れた誠実は学校内に入っていく。

 すると普段にはない、大勢の人間の視線を誠実は感じた。

 気味が悪くなった誠実は後ろを振り返る。


「な、なんだお前ら!!」


 振り返ると、なぜか登校中の主に男子生徒が、誠実を凝視したり、睨んだりしていた。


「い、伊敷君………」

「な…ぶ、部長……」


 誠実に話しかけてきたのは沙耶香だった。

 顔色は若干悪く、目元に涙を浮かべていた。

 誠実は昨日の事のせいで、沙耶香と話すのは少し気まずかった。


「お、おはよう……」

「お、おう……おはよう」

「あの……一緒に登校してた、すっごく可愛い子って……だ、誰?」

「え?」


 誠実は沙耶香がなぜそんなことを聞くのか、不思議だった。

 昨日あったことを気にして、雑談をして、気まずい雰囲気をなくそうとしているのだろうか考えながら、さらっと答える。


「い、妹だけど?」

「え? 妹??」

「「「妹???」」」

「おわ‼ なんだお前ら!」


 いつの間にか、男子生徒が集まってきて、ちゃっかり誠実と沙耶香の話を聞いていた。


「妹って……ほ、ほんと?」

「あ、あぁ…美奈穂っていって、正真正銘俺の妹だよ」


 それを聞いた途端、沙耶香は健康的な顔色に戻り、表情も明るくなる。

 そして、男子生徒の集団は誠実に言い寄り始めた。


「なぁ君、僕と友達にならないかい?」

「それより僕と友達になろうよ」

「こんな不細工達よりも俺と友達になろう! お兄様」

「誰がお兄様だ! お前ら、美奈穂目当てか!」


 誠実はそこで気がついた。

 今まで美奈穂の事は、健と武司以外に話したことがなかった。

 まさか誠実に美少女の妹がいるとは誰も予想がつかず、それを知った男子生徒達は美奈穂とぜひともお近づきになろうと、まずは誠実に近づいてきたのだ。


「やめろ! 腕をつかむな‼ 離せ‼」

「頼むよ~、伊敷く~ん」

「俺たちにあの美少女の妹さんを紹介してくれ‼」

「あぁぁ‼ うるさい!」


 誠実は男子生徒達に迫られるのが嫌になり、全速力で走って逃げていく。


「あ! 伊敷君!」

「逃げたぞ!」

「追え! 逃がすな!」

「待ってくれ! 将来のお兄様!」


 誠実を追って、男子生徒たちはその場から一気に消えた。

 しかし、その場にポツンと沙耶香が一人だけ取り残されていた。


「伊敷君……よかった……」


 沙耶香はほっと胸を撫でおろし、安心する。





「あ、朝から散々だった……」

「おぉ、朝っぱらからお疲れ、美奈穂ちゃんと一緒に来たんだって?」

「珍しいな、確かお前って美奈穂ちゃんから嫌われてるんじゃなかったか?」


 無事教室にたどりついた誠実はいつものように健と武司の元に向かい、雑談をしていた。


「あぁ、それがなんか、俺の勘違いだったみたいでよ。嫌われてなかったらしい」

「「まぁ、そうだろうな」」

「なんでそこでハモる?」


 健と武司の言葉を不審に思って尋ねると、なぜか呆れた表情で二人は言う。


「まぁ…美奈穂ちゃんの事だから、チャンスだと思ったんだろ?」

「昔はよく遊んだもんだよなぁ~、今じゃあすっかり大人になっちまったけど…」


 誠実は不思議そうな表情で昔を懐かしむ二人に話を続ける。


「参ったよ、なんか今度の土曜に買い物行こうとか言い出すし、今朝は俺を馬鹿にするし……本当に俺の事嫌いじゃないんだか……」


 その話を聞いた健と武司は、二人で顔を合わせてため息を吐く。

 何か言いたげな二人に、誠実は尋ねる。


「おい、言いたいことあるなら言えよ、どうした?」

「いや、兄妹の事をとやかく言うのは、俺達にできないだろ?」

「言ってる意味がわからんが……まぁいいや、そんな事より今は……」

「お、おはよう……い、伊敷君……」


 誠実が二人に沙耶香の事を相談しようとした瞬間、本人が登場してしまった。

 さっきはすっかり放置してきてしまったが、教室で再び顔を合わせればやはり気まずくなってしまう誠実と沙耶香。


「あ、あぁ……おはよ……」


 とりあえず挨拶を返す誠実だが、次に何を話せばよいかがわからない。

 健と武司に助けを求めようとしたが、近くにいるはずの二人はいつの間にかどこかに行ってしまった。


「ね、ねぇ……放課後…用事あるかな?」

「ん? あ、あぁ…何もないけど……」

「じゃ、じゃぁ……ちょっと話いいかな?」


 誠実は「来た」と思った。

 きっと昨日の話だろうと誠実は予想する。

 誠実もその話をしたかった為、丁度よいと思った。


「わ、分かった。じゃぁ…どこがいいかな?」

「体育館倉庫か、誰も居ない空き教室か、先生の居ない保健室が良いな……」

「何その、特殊な場所⁉」


 沙耶香のよくわからない場所指定に、誠実は思わずツッコミを入れてしまう。


「じゃ、じゃあ、四階の空き教室でいい? あそこなら誰もいないし……」

「う、うん、じゃあ放課後ね……」 


 沙耶香はわずかに頬を染めながら了承し、すぐさま誠実の元を離れて自分の席に戻って行った。


「はぁ……放課後か……」


 何とか放課後までに、昨日のことに対する回答を用意せねばと思う誠実。

 改めて告白されるのか、それを断るべきかどうか、昨日から悩んでいた。


「大変だな~、まぁ頑張れよ!」

「前橋は良いと思うぞ、惚れた男に尽くすタイプだな」

「お前ら、どこ行ってたんだよ……」

「「ちょっと、星を見に……」」

「今は朝だろ‼」


 しょうもない事を言う二人にツッコミを入れると、沙耶香になんと言うかを考え始める。

 相談しようと思った二人の友人はなんだか頼りなく、どうしたものかと考え込む。


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