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99回告白したけどダメでした  作者: Joker
海と水着と誠実の答え
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174話

「なんでそんな事を?」


「いや……実は……」


 誠実は綺凜に、今日の美沙と沙耶香との出来事を話した。

 本当は用事など無かった事。

 ただ二人と一緒に居るべきでは無いと思って、あんな嘘をついた事。


「そうだったの……」


「あぁ、嘘ついててごめん……気を使わせたく無くて……」


「それで、あんな質問を私にしたのね」


「うん……無神経だったよね……ごめん」


「謝る事なんてないよ……私も、貴方には酷いことをしたから……」


 二人の間の空気は一気に重たくなった。

 きっと、始めて告白を断った時の綺凜も、こんな感じだったのかな?

 なんて事を誠実は綺凜を見ながら考える。


「でも、多分だけど……私も誠実君と同じ立場だったら、同じ事をしたと思う……」


「え……そうなの?」


「うん……一緒に居るのは……申し訳なくなるから……」


 言われて誠実は気がつく。

 もしかして、綺凜にとっては、今のこの状況も気まずいのでは無いかと。


「も、もしかして! 今のこの状況も山瀬さん的には気まずかった?」


「昔の私ならそうだったかもね」


「じゃあ、今すぐ帰ります!」


「あ、昔! 昔の話だから! 帰ろうとしないで!」


 誠実は綺凜に気を使わせていたと思い、すぐさまその場から立ち上がったが、綺凜がそんな誠実を止める。


「今は、大丈夫。こうして、伊敷君と友達って関係で話が出来てるから」


 誠実を再び正面に座らせ、綺凜は続ける。


「だから、二人にもいつも通り接してあげるのが良いんじゃないかな? 私みたいに」


「山瀬さん……でも、今回は立場が違う……振った本人が、何も気にせず普段通りなんて……」


「じゃあ、なんで振った私とは、こうして普通で居るの?」


「え……それは、俺が山瀬さんと……あ!」


 そこで誠実は気がついた。

 自分も前は振られた、しかし今はこうして二人仲良く飯を食べに行く関係だ。

 あのとき、誠実は自分から綺凜に友達になろうと申し出た。

 それは、恋人で無くても彼女との関係をこれで終わりにしたく無かったからだ。


「でも……美沙や沙耶香がどう思っているか……」


「美沙はああいう性格だから、きっと元の関係に戻るのを望むと思うわ……沙耶香も多分同じ……二人とも優しいから」


「そう……かな?」


「うん、間違ってもこれで疎遠になるのはダメだと思う。彼女達がそう言ったら話は別だけど、言わない限りは、いつも通り接してあげた方が良いと思うわ」


「……あぁ、そうするよ」


 誠実は綺凜にスッキリとした表情でそう告げた。

 誠実は一つの悩みであった、美沙と沙耶香との今後の接し方についての答えが見つかり、誠実は気持ちが軽くなるのを感じる。

 あの二人はきっと、今も落ち込んでいるだろう、そう思うとなんだか二人に早くこの気持ちを伝えてあげたいと誠実は思ってしまった。


「俺、あとで二人に電話するよ。今日の事とこれからの事をちゃんと二人に伝える」


「そっか……頑張ってね、応援してる」


「ありがとう、山瀬さん」


 誠実と綺凜は二人で笑い合う。

 そんな綺凜を見て、誠実は思う。


(あぁ……多分まだ好きなんだよなぁ……)


 彼女を知れば知るほど、彼女と一緒に居る時間が長くなるほど、誠実の綺凜に対する思いは強くなっていく。

 しかし、同時に思う。

 早く彼女を諦めなければと……。





「よし、まずは沙耶香からだな!」


 ホテルに戻って来た誠実は、早速二人に電話を掛ける為にスマホを手に取り、電話帳を開く。


「えっと……沙耶香はっと……うわ!」


 沙耶香の名前を探していると、突然スマホが震え始めた。

 どうやら着信のようで、相手は沙耶香だった。


「さ、沙耶香?! 一体どうしたんだ?」


 電話の相手に誠実は驚く。

 まだ心の準備も出来て居ないのに、先に本人から電話が来てしまった。

 兎に角、誠実は深呼吸して電話に出る。


「も、もしもし……」


『あ、せ…誠実君? わ、私だけど……』


「あ、あぁ沙耶香……ど、どうしたんだ?」


 誠実は緊張した声で沙耶香に尋ねる。

 沙耶香も緊張しているのか、声が震えているのが良くわかった。


『あの……今日の事なんだけど……』


「あ、あぁ……悪い、あぁ言う答えになっちまって……」


『う、うん……ショックだったけど…』


「あ、いや! でも、沙耶香に魅力がないとかそう言う訳じゃなくて! あの、その……』


 沙耶香の寂しそうな声に、誠実はフォローを入れる。

 一体なんと言えば良いのか、誠実は悩む。

 しかし、誠実が話すより先に、沙耶香の声が誠実の耳に届いた。


『あ、あのさ……その……私の事が嫌いだから……振った訳じゃないんだよね?』


「え? あ、あぁ! もちろんだ、沙耶香には色々助けて貰ったし……その……これからも仲良くしたいと思ってる……俺の身勝手で悪いけど……」


『そ、そっか……あ、あのさ……誠実君が私達を振った理由って……まだ私たちをその……女として見れないからって言うか……他に好きな人が居るわけじゃないんだよね?』


「へ? あ、あぁ……なんて言うか……いつまでも待たせるのは申し訳ないから……ちゃんと振って、二人に俺なんかじゃない、別な良い人とって……思いました」


 正直に言ってしまうと、自分の身勝手で振ってしまったのではないかと、誠実は言葉にして気がついた。

 別に二人が嫌いな訳では無い。

 かといって、綺凜のような恋愛感情を抱いている訳ではない。

 そんな半端な気持ちのまま、付き合う位なら、振った方が相手の為にも良いかと思った。

 いつまでも答えを保留にしておくわけにはいかないから、誠実は今日、二人をい振った

のだ。


『じゃ、じゃぁ……その……まだ、好きでいても……良いかな?』


「え……いや、そう言われても……沙耶香の気持ちに応えるのは……」


『わ、わかってる! でも、それだけの理由じゃ諦めきれない!!』


 沙耶香は次第に興奮して話し出す。


「で、でも……俺以外にもいい人は沢山……」


『居ないよ! だから、そんなハッキリしない理由で振られても諦めきれないよ!』


 沙耶香の言葉に、誠実は部屋で一人アタフタしていた。

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