表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
99回告白したけどダメでした  作者: Joker
99回目の告白です
10/297

10話

誠実は告白を終えて、教室に戻った。

 長い長い片思いに終止符が打たれ、誠実の心はぽっかりと穴が開いてしまったようだった。

 しかし、そんな穴も気がつかないほどの事態が、現在進行形で起こり始めていた。


「お! 帰って来たか。よし、カラオケ行こうぜ~」

「安心しろ、俺たちはお前の味方だ」

「あ、いや……その……」

「ん? どうした、そんな複雑な表情で……」


 誠実は沙耶香から告白されたことを言おうか言うまいか悩んだ。

 沙耶香と二人は面識があるので、お互いに気まずい雰囲気を出していれば、いずれはバレてしまう。

 しかし、この二人に相談して、ちゃんとした回答が返ってくるだろうか? そう思うと誠実はこの話を二人にするべきか否かを悩んでしまう。


「悩みがあるなら、遠慮なく言ってくれ」

「そうだぜ、俺らもう長いつき合いで、お互いの事はよく知ってるつもりだし」

「二人とも……」


 誠実は二人に申し訳なくなってしまった。

 小学生の頃から今まで一緒で、いろいろな事を相談しあってきた友人に対して隠し事をしようとした事が恥ずかしかった。

 誠実は二人の優しさに感謝し、先ほどの出来事を二人に話した。


「……で、どうしたらいいと思う?」

「……」


 二人は腕を組みながら、目を閉じて考え込んでいた。

 真剣に考えてくれていると、誠実は信じて疑わなかった。

 しかし、誠実は忘れていた、この二人に相談をしてもロクなことがないということに。


「「よし! 前橋と付き合え! 以上! カラオケ行くぞ。お前のおごりでな」」

「おい! どんだけ息ピッタリなんだよ! お前ら絶対打ち合わせしたろ!」


 二人同時に目を見開き全く同じ言葉を口にし、そのあとで二人同時に椅子から立ち上がり、教室を出ようとした。

 そんな二人を見て、やっぱりこいつらに相談するべきじゃなかったかもしれないと、誠実は思った。


「でもよぉ~、いいんじゃねぇの? 新しい恋に進めるチャンスじゃん」


「武司の言う通りだ、前橋なら性格もいいし、友人も多くて信頼も厚い。しかも校内美少女ランキングにおいては、トップ10に入っている」


「随分ザックリした情報だな……」


 二人の意見は確かに最もだと誠実は思っていた。

 誠実は、今まで沙耶香に友人として接してきていたが、よくよく考えてみると普通に可愛い女子だと、あらためて思った。

 優しいし、人望も厚い上に、料理部をまとめている部長。

 高校に入学してからというもの、綺凛しか眼中になかった誠実は他の女子の魅力になどまるで興味がなかった。


「それに胸もあるしな」

「あぁ、そうだな。確かにあれはデカい」

「お前ら何言ってんだよ! そこは関係ないだろ!」

「いや、だってお前……おっぱい大好きじゃん」

「お前のクローゼットに隠してある本の大半は、巨乳本だしな~」

「う……うっせぇな! なんでお前らが知ってんだよ!」

「「この前家に行ったときにチラッと」」

「勝手に部屋を荒すんじゃねぇぇぇ!」


 自分の性的嗜好まで知っている友人二人をしかりつける誠実。

 次からは隠し場所を別にしようと、そっと心に誓った。


「でも、よくよく考えたら、前橋って誠実のストライクゾーンど真ん中じゃないか?」

「あ、そういえばそうだな。優しくていつも笑顔で巨乳」

「あぁ、可愛い感じでちょっとドジで、巨乳」

「おい、お前ら巨乳を強調すんのやめろ。なんか罪悪感が出てくるわ」


 しかし、誠実も内心そう思っていた。

 自分の好きなタイプを聞かれたときに誠実が答える項目に沙耶香はピッタリ一致する。

 そんな好みのタイプの女性がこんな近くにいたのに、気がつかなかったのか疑問だった。


「どっちかっていうと、山瀬さんの方は、あんまりお前のタイプじゃないんじゃないか?」

「あぁ、言われてみれば……あんまり笑ったとこ見た事ないし、胸も……」

「だろ? 友人もあんまり多い感じじゃないし、胸も……」

「お前ら失礼だろ! 胸の事は言ってやるなよ!」


 二人にツッコミを入れつつも、誠実も少しそれは思っていた。

 確かに誠実は本気で綺凛の事が好きだった。

 しかし、自分が今まで好きになってきた女性とは、明らかにタイプが違う。

 なのに、自分はなぜ綺凛の事をこんなに好きなのか、考えれば考えるほど誠実はわからなかった。


「まぁ、でもよ。山瀬さんとは終わったんだ。直ぐに答えを出さなくても、これから前橋の事を考えていけばいいんじゃないか?」

「別に告られた訳じゃないんだろ? 告白っていうのは、相手が『付き合ってください!』 って言って初めて成立するもんだろ?」

「確かに……じゃあ、すぐに答えを出さなくも、待ってもらえばいいのか……」

「どうせお前の事だから、あと数週間は山瀬さんの事引きずるだろ?」

「うん、もちろん」

「いい返事だが、さっさと諦めろ」


 二人にアドバイスをもらい、とりあえずは明日、沙耶香に昨日の事について聞いたうえで、今の自分の考えを伝えるという話にまとまった。


「なんか、放課後だけで色々なことがあったな……」

「告られて、振られてだもんな~」

「だが、これで山瀬さんの事を考える暇もなくなるだろう。明日からはきっと別の事でお前は大変になると思う」


 教室を出て昇降口に向かう道すがら、三人はそんなことを話していた。


「まぁ、俺らは遅かれ早かれ前橋が告白するのを予想していたがな……」

「は? 嘘つくなよ。俺だって驚いたんだぜ?」

「いや、普通は気がつくと思うぞ? 前橋って誠実と話す時だけ少し顔赤いし」

「授業中もお前の方をチラチラ見ている時があるんだぞ? 知らなかったのか?」


 誠実は二人の言葉に驚いた。

 今までそんな事には全く気がつかなかったし、沙耶香の好きな人が、まさか自分だとは予想もしなかったからだ。


「まぁ、とりあえず明日に備えて歌いに行こうぜ、誠実のおごりで」

「そうだな、俺も新曲の練習をしたい」

「おい待て、お前ら。今日は俺の失恋パーティーなんだろ? お前らがおごれよ」

「お前はこれからリア充になる希望が見えてるんだから、今日は非リア充な俺らにおごれって」


 そんな会話をしながら、三人は昨日のカラオケ店を目指して歩みを進めた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] そもそもこんなにふられてる相手を迷惑かれりみず付き合いたいってなんなのかな?容姿? 自分ではない誰かに優しくしてるところ?そもそも自分にその愛情が向かずに相性もわからないのに99回もつ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ