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12月/2/クリスマスパーティーだよ!だいたい皆集合!

 テストが帰ってきた。今回は圭佑は明るい顔でテストを眺めていた。勉強する目的が『トップ3入り』だった彼は実際に目標を達成できたかというと。


「おいおい………。」


 今回の張り出されたクラス内得点トップ3。いつも通りボクの名前はある。


「良かった…二番目か……。」


「小声で言っても聞こえてるんだけど!!?」


「まぁまぁ、そう怒んないの。」


 張り出されたトップ3を見てから、苛立った圭佑を宥める。改めて、張り出されたそれを見ても、圭佑の名はそこになかった。


 圭佑のテスト結果を盗み見た感じでは、そう悪い点数ではなかったが、きっと他の人が点数が高かったのだろう。


「よぅ、圭佑? 成績どうだったよ?」


 少し荒れている圭佑の元にやってきたのは男子生徒。


「何だよ塚見! 冷やかしか!?」


 そう、あの怖い顔つきの男だ。何だか発言に馬鹿にしているかのように感じさせるものがあるようにも思えたが、彼にはそんなつもりが一切無いことをボクから言っておく。勘違いされやすいが…。


「んなもんじゃねぇよ。なんか今回ヤケに勉強してんのが気になってな。」


「やっぱバカにしてるだろ。」

 

「今の発言のどこにバカにしてる発言があった!? ……全く。今まで以上に出来てんだから問題ないだろうに。」


 塚見は、「全く、わざざ……。」とか呟きながら自分の席まで戻っていく。


 一方の圭佑は


「なんか気に入らないんだよなー…。」


 どこか思うところがあったか、微妙に困った顔をしているように思えた。






「と、言うことで、今回もこいつに負けました。」


「ほうほう…結局勝てないなら諦めたらどうだ?」


「諦めるなんてできませんぜ! 部長!!」


「私達の認識の上では圭佑君、君は部員じゃないので私が君に部長と言われる筋合い、あまりないのだが。」


 文芸部室で圭佑が早速茜屋先輩に報告している。


「それでも、勉強の成果出たんじゃないか? 学年何位だ?」

 

 圭佑は答える。


「………100は切りました。」


「良いじゃないか! 何を不満に思うことがあるのかな!?」


「そりゃ順位が目標まで届かなかったからですよ。」


「クラス内得点トップ3に入る…だったかな? それは無理だ。」


「どうしてそんなこと言うんですか。」


「当たり前のことを言っただけだ。ずっとしっかり勉強してきた、優君とかを抜かすならはっきり言って圭佑君のような勉強の仕方ではいけないだろう? 彼等はしっかりと毎回テストで結果を積み重ねているんだよ? なのに今回頑張っただけの君にどうしてトップ3に入ることが出来ようか。」


 それだけ茜屋先輩が言うと部室内を沈黙が支配する。ボクと垣原先輩に関してはテストを無言で見直しているだけだから、もともと黙っていたし、鍋川先輩は黙々と本を読んでいるし。


 そんなことないと言われた本人である圭佑否定しようとしたのだろう。反論のために開かれたであろう口はしかしパクパクと動くだけ。言葉を発しなかった。


 きっと否定しきれないところがあったのだろう。


「ま、テストはこれが最後じゃない。次あるなら反省を生かして頑張ればいつか抜けると信じてるから。」


 その圭佑を眺め、茜屋先輩はそう言った。


「………大体、私だって葵に勉強で勝ったことないし説得力ないか。努力してるつもりなんだけど。」


「智が本気だしたら私なんか簡単に抜けると思うんだけどね。」











 というくだりの後、何故か高校近隣のスーパーに買い物に来ています。


 ……だってあの後本当に無言でテスト見直していたんだから書くことなくて仕方無い。


 スーパーには部長副部長と来ています。圭佑は個人的な用事があるようだったからと言うのと茜屋先輩が「口が軽そうだから雪にバレないように」知らせていないらしいので、ここには居ない所かサプライズクリスマスパーティーを知ってすらいない。


 鍋川先輩は論外。何故誘う? 


「買うものは………肉、肉……そして肉。」


 揚げ鶏みたいなのがたくさん入ったパーティーパックみたいなのを買い物かごに入れる。賞味期限の確認もしておく。


「いやいや、優、そんな肉ばっかとか…。」

「パーティーと言ったら肉ですよね、そしてケーキ。大体ですよあの義姉妹は肉ばっかはダメ野菜食べろと誕生日ですら好き勝手に物を食べれないんですよ今回くらい好きに買わせて下さい。」


 そしてまたパックをかごに入れる。


「ちょっと優君それ高いやつですよ! こっちの方が同じ位の量で安いです!」


 垣原先輩がボクの入れたパックと似たような、それでいて安いのを持って静かに叫ぶ。


「ダメです、こっちの方が美味しいですから。大体量あればいいなんてことはないんですよ結局は質ですよ、あの義姉妹なんかボクがポテトサラダ好きだなんて言った翌日にマヨ無しのポテトサラダをボウルで用意するとかやってボクが好きなのは市販されているやつでその何の味もしないポテトなどの野菜混ぜは好きじゃないって言うように結局美味しい方がいいんですよ!」


「ダメだ優君が暴走しているわ……。それと優君は量より質なのね…。」


「大変だったのな……。それと量より質か。」


 あれやこれやとかごに詰めていくボクを見て二人口を揃って言う。


「「なら何でそんな山盛りにしてるの!?」」


「美味しそうだからに決まってるじゃないですか!」


 即答。


「え……いや、確かにそうだけれど…。」


「いやちょっとまて、食べきれるのかその量を。」


 垣原先輩は即答したボクに対して言葉を返すことはできなかったが茜屋先輩は返してきた。


「食べられますよ、美味しい物なら問題ないです。これでも父親には『食べ放題に優を連れて行くと元取った気分になれるな』と言われるくらいは食べれます。」


 大抵父親は酒飲んで元も子もない状態になるけれど。


「そ、そうなのか……。」


 茜屋先輩が信じられないみたいな顔で見てくる。まあ確かにボク小さいし、食べるようには見えないだろうから驚くのも無理はないか。


 そうしてまたかごに物を詰めようとして垣原先輩が何かにふと気付いて言う。


「お金、誰が出すの?」


「私が出そうかとも思ってたけど、ちょっと予想外だったからなぁ……。」


 そう言ってボクを見る二人。……ごめんなさい。


「で、でもボク払いますよ? 充分金ありますし。」


 ……もうすぐ学校終わるし正月すぐきてお年玉貰えるからお金使いきっても問題無かろう。


「そうか、すまないね。」


「ありがとうね。」


 まぁ、確かにこの量を買おうとするのは無理があっただろうし少し減らそう。


 さり気なく、かごの内容物を元の場所に戻したことが二人にバレていたかはボクには分からない。



 そして会計を済ます前にちょっと気になる影を見つけたので、お金を先輩方に渡して会計を済ませといて下さいと言ってその影へと近付いていく。



 その影はボクに気付かれたことがバレたと分かったのかこちらに姿を見せる。


 義妹だ。


「優、どうしたの? スーパーに行けなんて頼まれても居ないのに。」


「それはこっちの台詞…。早奈(さな)はそもそもこの辺通る必要すらないのに。」


 浅葱早奈、義妹。義妹は女子校の制服を来たままでこの場にいた。ちなみに義妹の通う高校は全くの別方向なのでここにいることに違和感を覚えた。


「それはー…。……ま、いっか。お姉ちゃんが何でかこの時間にこのスーパーに行くように言ってきたんだよねー。いつもなら自分で行くのに珍しいよね。」


 一瞬言うか隠し通すか迷う素振りを見せたがどうやら話すことにしたようだ。


 というか、同意を求められても困るのだけれど。


「というか、優がお姉ちゃんの予測通りここに来た理由は何なの? 学生が理由もなく寄るところ出はないと思うけれど?」


「部活で必要なものを買いに。」


「あぁー、部活。部活入ったとか言ってたもんね、確かにおかしくないけど、確か優は文芸部に入ったんじゃない? ハサミとかは買えると思うけどそれはスーパーである必要はないんじゃない?」


「もうじきクリスマスだろ? そのために。」


「へぇー…クリスマス。クリスマスと言えばサンタだよね。コスプレでもするの?」


 義妹の視線の先にはパーティー用グッズのコーナーがあった。そういえば茜屋先輩が何か入れてたな。もしかしたらその辺の何かを買おうとしてたかもしれないなぁ。


「かもしれないなぁ。というか早奈、サンタが出て来てからすぐにコスプレに思考が飛躍したけど、別にそればっかりがクリスマスじゃないと思うんだけれど。」


「ふー…ん?」


 義妹の視線がボクの後ろを見ているように思えたので振り向けばようやく会計を終えた二人がこちらに歩いて来ていた。


「おー、優。終わったぞ、お釣りこれな。」


「お金ありがとうね。……おや?」


「「その子は誰?」」


 二人声揃えてそう言った。


「まさか(くだん)の? フラグは沢山あったし……。」


「どうも。」


 茜屋先輩はぶつぶつと呟き、垣原先輩は早奈に向かって礼をする。



「あー、優が言ってたクリスマスって、そう言うことかー。」



「多分違うよ??」


 即座にボクは何のことか分からずとも否定した。


 何か下品な事考えてそうな顔してるし。


「ねぇねぇ、優。誰この人?」


 茜屋先輩はボクの後ろに立ち耳元まで顔を近づけて小さめな声で聞いてきた。さっきの呟きから先走って早奈に言わなかったのは、ボクとしても良かったと思う。


義妹(いもうと)ですよ。年は同じですけど生まれはボクの方が早いので、一応。」


「あー、妹さん!」


「うぐっ!?」


 茜屋先輩が大きな声を上げ、垣原先輩は周りを見る。耳元で驚き声を上げられたために耳がジーンってする…。


「すいません、迷惑になるかもしれないから外行きません? これ、置いてきたいですし。」


 買い物袋を見せながら垣原先輩が言う。袋はビニールなので中身がよく見えた。


 購入したものはしっかりと義妹にも見えたようで、ボクの方を見てくる。


「お肉ばっかり…だからか。………あ、分かります確かに迷惑かもしれませんね、出ましょうか。」


 義妹が同意したことで、外に出ることに。その間義妹の視線がよく刺さった。ジト目ってこういうのを言うんだろうな……。






 外に出て少し歩く。なんと便利なことに部室にはかなり大きめな冷蔵庫がある。ので、そこに今回買った食べ物を保管するために高校に移動していく。


 まぁ鍋川先輩は冷蔵庫をほとんど利用していないので、それでバレることはないだろう。


「あのー、これはお姉ちゃんから聞けと言われていることなんですけどー……。」


 黙って移動する中ついに義妹が口を開く。


「まずお二人はゆ…兄とどういった関係ですか?」


「所属する部活の部長と副部長」


「優には聞いてない。」


 即答に即答を返された。


「優の言うとおり、部長だ。」


「言うとおり、副部長です。」


「……あー、知ってます。ただそう聞いてどう反応するかちょっと見てこいと言われたのでそうしただけですので。」


 茜屋先輩も垣原先輩も普段と変わりなく返答したのを見て、黙り込む。


「次の質問です、兄のことどう思いますか?」


「第一印象で言えば」「言わせてもらえば」


 二人声を揃えて


「「何で女装してるの?」」


「あ、ああー。」


 義妹は引き攣った笑みを二人に返す。


「でも、聞きたかったことはそう言うことじゃなくて……今の印象なんですけどー……。」


 その言葉を聞いて苦笑する二人。今更だけど息ぴったりだよね、この二人。


「そうだね……偶に不気味な発言することあるけど、良い人だと思うよ?」


「今というと、拘りがすごい人? かな。」


 垣原先輩それさっき肉の話したところの印象でしょう? それにそこまで拘ってないですし? そうだったでしょう?


「優って確かに変なところに拘ってるし、でもとても良い人だよね!! ちゃんと分かってくれてるんだ!」


 ん? 義妹の目が光った?


「特にそう言うことになってるわけじゃなさそうなので私としてはもう良いか……。パーティー楽しんでって下さいいくらでも優なら貸しますから!」


 そう言い、さっさと駅方向までダッシュしていく。


「結局何がしたかったのかな……あいつ。」


 ボクはそう呟いた。










「んじゃ、さっさと帰ってどうぞ。冬休みはっちゃけて怪我しないようにな。」


 担任が気怠げに告げる放課後の合図にクラスの騒がしさが増す。


「今日放課後、部活あんの?」


 冬休みが始まったのだと言う事を実感する一瞬である。


「まぁ、多分? 何でそう言うこと聞いてくるの?」


 教室からすぐに出て行く者、教室に留まり駄弁っている者、様々ではあるが、よく話す面々がこちらに近付いてきていた。


「いや、今日バイトで行けないのと、後は交換する物は買ったのか? ってことを。」


「圭佑にしちゃよく気を配っているじゃない。勿論既に買ってあるよ。ちゃんと包装済みだしね。」


「そうか、楽しみにしてるぞー!」


 それだけ言うと圭佑は帰って行く。今日部室にはあまり早く来るなとのお達し。なので少しのんびりしていても問題ないのだ。


「おい。」


「何? カイ。」


 圭佑が帰ったのを確認してからボクに話しかけてくる辺り、塚見は圭佑を嫌っているのか、ただ面倒なだけなのか。分からないけれど。


「そう言えば本を最近読んでるが、本に詳しいか?」


 本に詳しいかと言われるとボクとしてはそうじゃない。まだ分からないことだらけだ。自分が詳しくないのは当たり前なので、正直にこう返答した。


「ボクはそんなに詳しくないかなぁ。でも、そう言うのに詳しい先輩いるし、本について聞きたいならその人の方がいいよ? 紹介しようか?」


「いぃや? 別にそこまでする必要はない。ただ、な。」


「ただ…何?」


 塚見は持っていた鞄から一冊の本を出す。何か古そうな装丁の一冊。何やら偉大そうでとにかく大きい一冊だが特筆すべきは辞書並の分厚さだろう。所々付箋が貼ってある辺り本当に辞書なのかもしれない。


「こいつの文字が読めねぇんだわ、濁斗が落としたモンなンだけどな。」


「──ちょっ!? カイが持ってたんかよ話せ読むな開けるなすぐに返せ!」


「ほらよ。」


 横から本をかっさらうように現れた保子河。しかし奪うことは叶わず、でもすぐに塚見は手渡しした。


「なんだ。大事なものなら置いていくなよ。捨てたのかと思ったぞ。」


「捨てるのだけは絶対にない。」


 きっぱりとそう言う保子河。塚見はさっさと帰って行く。がその時に。


「大事にしろよ。俺には読めなかったからよく分からんけどな。」


 とわざわざ聞こえるように言って教室を出て行った。


「………これ、読めないのか?」


 保子河はボクに聞いた。


「いや、分からないけど、カイは読めない文字って言っていたよ。」


「そうか、そうなのか。」


 何かよく分からない表情で荷物をまとめる保子河。すぐに塚見を追いかけて、走って出て行った。


「さて、と。」


 ボクも部室に行きますか。






 サプライズパーティーなんて企画するんなら出待ち側に回りたかった、きっともう騒いでいるのだろうなとボクが思いながら部室に行く。


「しつれいしまっ………!?」


 部室に入ろうとして扉を開けて見えた光景に絶句する。


「あ…鍵閉めるの忘れてたわ。」


「な、なな、なななななっ!?」


 先輩方が丁度部室内で着替えていたからだ。着替えているだけならタイミング次第で良かったとも言えなくもないが、生憎とタイミングは最悪だった。三人とも丁度殆ど下着姿と言ってもいいくらいの姿だった。


 そんな状態で扉を開いたのを見て、茜屋先輩は呆然とこちらを見、垣原先輩はすぐさま動揺したような声を上げ、鍋川先輩は部室の隅へと飛び退いて肌を隠すようにうずくまった。


「きゃぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」


「普通悲鳴上げる方は逆じゃない!?」


 ボクはというと、素早く (三人の様子を少し見てからなので素早くとは言えないかもしれないが) 扉を掴み悲鳴を上げながら閉めた。



「ごめんごめん、いやぁー…鍵閉めたつもりになってたよ。」


 茜屋先輩はロングスカートな赤いサンタ服みたいなものを着ていた。冬だし、暖かそうだ。


「ほんと、智何してくれてるんだか。」


 垣原先輩は茜屋先輩と同じ服を着ていた。と言うかさっきあんな姿見たからちょっと視線が自然に胸に行ってしまったのだが、心なしか垣原先輩の胸元が窮屈そうに見えた。茜屋先輩はそこまでではなかったけれど。


「……………。」


 仄かに潤んだ瞳でボクを睨みつけてきている鍋川先輩は長袖ではあるものの何故かミニスカートと呼べるほど短かった。


「えっと……なんかすいません。」





「何を謝る必要があるん………ああ、まぁ必要だな。乙女の柔肌見ておいて悲鳴上げるなんて男としてどうだか。」


「…そっちじゃないと思うんだけれど。それと、今回はこのパーティー自体が後書きになるから導入部分までよろしく優君。」


「ちょっと待って下さい導入部分ってどういうことですか。」


「いいから食べる! あー、唐揚げ美味しっ!」


「肉ばかり………野菜は?」


「あはは…まぁ、食べましょうか。」


「はぁ……そうですね。……誤魔化された気しかしない。」


「そういや優は…もきゅもきゅ…。この衣装についてどう思うよ。」


「衣装? 勝手にボクの金を使ってあのスーパーで買ったサンタコスチュームですか?」


「ちょっと待て私は許可を貰ったというかバレてたか。でもな私はちゃんと優が金を出すと言質も取ったんだからいいじゃん。」


「いや、まぁ、金については大丈夫です。それにしても衣装……衣装ですか……。」


「浅葱君……悩んでるね。」


「そうですね…まぁそれも当たり前かもしれないね。」


「まあ似合ってると思いますよ。」


「どうよ、特に雪とか。可愛いでしょ、ねえ! 可愛いでしょ!」


「………!!」


「聞きたいのは自分の評価じゃないのね……。で、どうなの優君。実際のところは?」


「あ……えっと……。」


「無理に評価する必要は無い……ない…。」


「ほら雪自信が可愛いって言って欲しいみたいよ?」


「………可愛いってことは決定してるのね。」


「…智っ!!」


「もぅ、怒んないの。」


「誰のせいで……!!」


「そりゃ………。」


「えぇっ……まぁ、確かにボクのせいかもしれないですけど! 煽ったの茜屋先輩じゃないですか!? 何でさり気なくボクを見て責任転嫁しようとしてるんですか!?」


「全く。これだから最近の男は、女々しいったらありゃしない。こういう時に男らしくずばーんって言わないから、そんな外見になっちゃうんだ・よ!!」


「……今ボクの外見の事言いましたね!? もうどうなってしまってもいいんですね!?」


「なんだ! やれるもんならやって痛い痛い痛い痛い!! 言ってる途中にアイアンクロー止めて痛い痛い!!」


「雪、今の内に少し食べましょ。……たくさんありますし。」


「………………。…うん、そうしようか。」


「ボクは内面まで女々しくはないんだよ!!」


「ほーんとーにそうか痛い痛い痛い痛い!! だから言ってる途中に締め付けを強ぅすんなってぇ!!」


「美味しい……って雪、どんなペースで食べてるの…!?」


「もぐもぐ……これくらい普通? もぐ…もぐもぐ。」


「ああ骨付き肉を素手で何本も食べていると油まみれになって汚っ!? 既にかなり汚いでしょ、ああもう!」


「お返しだっ! 私の手は優より長いんだぞ!」


「そりゃそうだけれども当たらなければ問題ないんですよ!!」


「なにを! そんなこと言ってただですむと思うなよぅ!?」


「ただで済まない事ってなんですか言ってみて下さいよほらほら!!」


「痛い痛いマジ痛いです本当にすいませんごめんなさい降参します!!」


「葵……食べ終わったらで良いでしょ。食べるのに……邪魔。」


「はうっ………ごめんなさい、でも汚く食べないで…。」


「何で…? 私は汚く食べてはいない……。…ちゃんと…音を立てずに食べてるでしょ?」


「口元手元油まみれでいられると!! 私が耐えられないんです! 雪みたいな可憐な女せ……人がそんな状態なのには!」


「おい葵ー、わざわざ言い直したのは悪意あるぞー。」


「男性にも可憐な人はいますし! 良いじゃない!」


「茜屋先輩余所見してると……ってええ!? 肉が半分以上無くなってる!!?」


「………美味しかった。」




「美味しかったですね。」


「ね。……私が買ってきたケーキ、まだあるけど…?」


「無理………。」


「なんで君達まだ平然としてられるの家帰ったら夕食有るんじゃないの…?」


「………あるけど。」


「どうしても肉食べたかったんですよ。脂がにじみ出るような。」


「にしたって……あれだけを食べて夕食食べると言うのかー。」


「「恐ろしい子……!!」」


「そうですか?」


「じゃあ…ケーキ、各自持ち帰り?」


「そうなりますね。じゃあゴミは誰が……。」


「ああそれは私がやるよ。」


「ではゴミ捨てはゴミに任せて」

「流石にゴミ扱いは酷い。さっきのは謝ったじゃん!?」


「………流石に言い過ぎました。ごめんなさい。」


「あはは……。」


「結局……この…………ぃ格好した意味は……。」


「言い忘れてましたけど先輩方その格好凄く似合ってますよね、特に雪幸先輩なんか凄く…か。」


「ぇ………。」


「───ちょっと葵、めっちゃ骨だらけ……どうしたの? 皆黙っちゃっ………てどうした葵そんな形相で睨むな乙女にあるまじき表情で」


「智ぉ!!」


「止めて何で追いかけてくるの本当に……!! あ、雪優先帰ってていいぞ! 多分次会うとき来年になるだろうから!」


「「良いお年を!」」


「「……よ、良いお年を…。」」


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