妖精が来た
重い足取りで街の門をくぐる。
もうしばらくこの街を見る事はできないだろう。そう思うと、足元の雑草でさえも綺麗に思えた。
ため息をついて、門の外に目をやる。
未知数な道のりが延々と続いている。
この道を、私は一人で歩いて行くのか……。そう思うと、今まで耐えていた不安や焦りが一気に押し出てきた。
私はこの旅で死ぬかもしれない。私は最悪の事態を想定しつつ、未知数へと一歩を踏み出した。
一人で道をあるいていると、こうゆう時に友達がいればよかったのかな……なんて思ってしまう。
私は自分の孤独感に怒りを覚えた。
私を選んだ神様め……もし私が死んだら、夢に現れて低級魔法のファイヤで足の小指を燃やしてやる。そしてそれが正夢になる呪いをかけてやる。
「私は何処にいても一人ぼっちなんだな……」
私の誰もいないのは分かっている。それが分かっているから、つぶやいてしまった。
どうせ誰も聞いちゃいないだろう……。
「……いいえ! あなたは一人じゃないわ」
とうとう幻聴まで……。私、もうだめなのかも……。
「ちょっと! ちょっとってば!」
幻聴のくせにしつこいな……。
しかも、なんか目の前を光の玉が右往左往してる……。幻覚もみえるようになったか……。
「無視しないでよ! あんたよあんた! あんたに話しかけてるのよ!」
五月蝿いなぁ……。頭叩くなよ……痛いだろ……。
「はーなーしーをーきーけー!」
……あれ?幻聴や幻覚は頭叩けないよね?だとしたら私の頭を叩きながらチラチラ輝いてるのは一体……。
私は、目の前に飛んできたその光の玉を引っ掴んだ。「きゃあ!?」という声を発したこれはまさか。
「妖精……!?」
「ご名答! 私はピクシー! れっきとした、妖精よ!」
口をあけている私の手から逃れ、ピクシーはニコッと微笑んで続けた。
「早速本題に入らせてもらうけど……私を、あなたの仲間にして欲しいの!」
ただでさえ妖精に会って混乱しているのに、いきなりそんなことを言われて、私はもっと混乱した。
おそらく心象が顔に出たのであろう、ピクシーは慌てた様に言った。
「変な事に利用するって訳じゃないわ。 あなた、魔王を退治しに行くんでしょう? 私はそれの手助けがしたいのよ!」
一人で延々と話すピクシーの顔は、やけに誇らしげだった。
私は人とコミュニケーションをとることが苦手なので、こんなに耽々と話されると、なんだろうか、親近感らしいものが湧いてくる。
気がつけば、私はこう言っていた。
「……よろしくね、ピクシー。 わたしは……ソフィアよ」
……と。
ピクシーは喜んだように笑った。
可愛らしい笑顔で、「ありがとう!」と言った。
そんなピクシーを見ているとこちらまで嬉しくなり、私は、おそらく数年ぶりであろう笑顔を浮かべた。
「よし、行きましょう!!」
私は、ピクシーの元気な声でようやく前に進み始めた。
仲間の数 2