表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
glass.clash  作者: 新月 雫
6/6

エピローグ


 それは、よく晴れた学校の屋上だった。

 あれから三ヶ月はたったのか。

こうして怪我も治って、また日常に戻っていることに驚いていた。

 空を見上げる。冬に近付いている空は、少しかすんでいるように見えるけれど何処までも青くて果てしなくて、手を伸ばしても届きそうにない。

 いま大分前に失敗したことをやり直せば、成功しそうだ――なんてな。

「えっ」

 いつの間にか隣には瞬が立っていた。いや、いつの間にかというよりは、いきなり現れたと言った方が正しい。

「えっ……あっ、あれ、も、百々!?」

 いきなり出現させる芸当なんて、どう考えてもあいつの仕業だ。

でも、何のために?

「こ、ここって屋上……だよね?」

「ああ」

「えっと、また確認するけど……ここには俺と君以外、いない?」

 辺りを見渡そうとしたけれど、瞬にならにおいでその辺はわかりそうな気がして、首を傾げる。

「……今日、新月で感覚がおもいっきり人間なんだ」

「そういうことか。この時間帯は大概俺だけだ」

 先客がいたとしても、俺がいると何故か逃げるようにいなくなるからな。

「そう……」

 瞬はそれきり黙りこむ。もしかしたら、なにか話したいことがあるのか……。少しだけ話し始めるのを待ってみよう。

「……あのさ、百々」

「なんだ」

「その……」

 視線はおよいでいて、なにか後ろめたいことでも……最近は特に関わりがなかったから、そんなことはないか。

「……す、すし……です」

「寿司?」

「じゃなくて、ちがう、あの、あのね!」

 唐突に寿司と言い出したと思ったら、瞬は真っ青になって慌てだした。

「……言い間違えたのか?」

「そ、そう。そうなんだ!」

「本当はなんて言おうとしたんだ?」

 青ざめた後に顔を赤くするという器用な表情の変化が見えた。いや、ただ単に戸惑っているのか?

「……好きって……」

 好き?

 俺に言うってことは、俺のことが好きって……。

「はぁ!?」

 瞬間的に顔が赤くなったのが自分でもわかった、好き?えっ、こいつは何を言っているんだ、二人しかいないことを確認したのも、まさか……この為?これの為なのか、ちがう!場所の情報でごまかすんじゃない、落ち着け、落ち着こう!

「……やっぱり、うまくいかないよね。ラノベとかギャルゲじゃないし……あの白衣のせいだ、いや、俺もかなりキモいか、ははっ、俺の青春なんてゲーム内で発散すれば良かったんだ、勘違い乙……死のう、ここ屋上じゃん。あと、今なら死ねる」

 瞬は瞬でネガティブが駄々もれで、ふらふらと屋上のフェンスに近づき、のぼり始めようとしている。

「ちょっ、ちょっと待てぇぇぇぇ!!」

 色々しやすい環境であり、自然な流れにも見えたが、エピローグにしてはおきてはいけないことなので慌てて瞬を押さえる。飛び降りようとしたことはあっても、飛び降りようとしている人間を止めることは今回がはじめてだ。

つーか、何て言って引き留めたらいいんだ?

あっ、そうだ告白の返事、それだ!

「……寿司を食べにいくぞ瞬」

「えっ」

「言い間違えたとしても、とにかく寿司が食いたくなった。一緒に行こう。明達も誘う。な、行こうぜ……」

「そ、そうだね」

「わたしは、お前といろんなところに行きたい。それで、ああ……」

 それは、答えとして伝わったのか、伝わらなかったのか……。

「それがわたしの、さっきの瞬の言葉への答えだ」

「それは……つまり……」

 またなにか考え始めそうな瞬の横を通りすぎて、わたしは屋上から出るドアをあける。







〈???〉


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ