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逃亡

作者: 頭 垂

逃げ。


それは人間の弱さが凝縮されているように思えるたった二文字。




逃げ。


それは人間を誘う、甘く甘く耽美な誘惑。




逃げ。


それは弱者が行える最後の抵抗。




逃げ。


それは強者から見たら吐き捨てるべき、忌むべき所業。
























さて、逃げることというのは罪なのだろうか?


この問いに対する答えは人それぞれだろう。


罪だという人間もいれば、間違っていないという人間もいるだろう。


ちなみに、私は間違っていないと思っている。


逃げることというのは戦う強さを持つことのできなかった弱者に許された最後の権利だと私は考える。


強い人間は逃げなくても生きていくことができるのだろう。


それが自分の強さか周囲に支えられたことによって作り上げられた強さなのかはこの際、問題ではない。その周囲を含めて強さなのだから。


そんな強さを持った人間は逃げずに物事に立ち向かうことができるのだろう。


そして、立ち向かったことで更なる強さを手にするのだろう。


私には無理だった。


強くあることも、一歩を踏み出すこともできはしなかった。


強者にとっての一歩が私にとっては果てしなく遠い。


そんな立ち止まってしまった私に待っていたのは無機質な色をした世界と停滞した毎日だった。


たった一歩を踏み出すことができれば、世界は彩りを持つのだろう。世界が美しいのだということを再認識させてくれるのだろう。


だが、その美しく、彩りを持った世界こそ強者の特権なのだろう。


私には眩しすぎてその世界に入っていった人間を直視できない。


そんな私は色を失い、停滞した世界で考える。暗く淀んだような色をした世界にただ一人立ち尽くしながら考える。

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