本性
「そうですか、ジェル兄様との面識がおありでしたのね」
さっきとは打って変わった口調に僕たちはさらに驚く
「何を驚いておいでですの?」
僕が持っているネックレスに視線をやりながら、僕に話しかけてくる
「あら、もしかして私の口調のことかしら?」
口に手をあて、アーシィは声高らかに笑っていた
「私、目の前に居る人たちがどのぐらいの価値を持っているかによって、口調を変えますの」
おほほほという声が部屋に響いた
アリアとタイニーは何が起こっているのか付いて行けてないようだった
僕だけでも付いて行かないと
とりあえずアーシィの話に合わせることにした
「アーシィ、君はジェルさんの知り合いなのかい?」
動揺していた僕は、ですます調で話すのを忘れていた
「あら?あなたも口調が変わるのね。面白いわ」
僕の口調の変化に気づきながら、僕の質問に答えてくれた
「知り合いも何も、ジェル・F・クラウディは私の義理のお兄様ですわよ」
ジェルはこうなることを知っていたのだろうか
だから僕にネックレスを渡したのだろうか
僕が考えていると、アーシィがいつの間にか僕の方へ近寄ってきていた
「先ほどはごめんなさいね、あなたの頬をぶってしまって」
お詫びにと言うと、僕の真っ赤に腫れた頬にキスをしてきた
!?
僕が頬を押さえて後ずさると、アーシィが口元を押さえて笑った
「あらあら、本当に純情な方なのですね」
僕がキスされたことで、意識を飛ばしていたアリアが元に戻ってきた
「ちょっと、ハジメになんてことしてんのよ!?」
「あら、失礼。人前なのにはしたないことをしてしまいましたわ」
怒り心頭のアリアをアーシィがからかっていることが分かった
タイニーはさっきまで見ていたアーシィとのあまりの違いに放心状態になっていた
このままでは、アーシィのリズムに飲まれっぱなしだ
そう思った僕はアーシィに提案を持ちかけた
「アーシィ、君はこのネックレスを探していたんだろう?」
僕は手に持っているネックレスを目の前に掲げて見せた
「だったら、もうここには用はないはずだ」
出て行ってくれと僕が言うと、アーシィはネックレスを見ていた
そして、振り子のように揺れるネックレスから視線を外し、僕に向けて口を開いた
「残念ながらそれは無理ですわ」
アーシィの言葉に僕は驚く
「私、あなたを同行者とすることに決めましたの」
ネックレスを持っていない方の手を引かれる
そして、にっこりと小悪魔のような笑顔で僕に言ってきた
「一緒に、土の織り籠まで来てくださいな」
とんでもないものを拾ってしまったとこの部屋にいた皆が思っていた
「私、疲れましたわ。ここで寝かせてくださいな」
というので、ハーブティのポットを置いたまま三人で部屋を出た
店内に向かうまで三人は終始無言だった
ドアを開け、リドとデニーさんがいるところへと向かう
「どうだった?」
リドが僕たちを見てくる
リドの質問に答える余裕を他の二人は持ち合わせていなかったので、僕が代表で答えた
「・・・凄いよ」
それしか言えなかった
何がどう凄いんだ?というリドの疑問に僕は苦笑していた
三人でカウンターに座り込み、突っ伏す
「女の子が凄いんだ・・・」
僕たちはその後、盛大にため息をついた
僕たちの様子を不思議に思いながら、リドは用意していた夕飯を出してくれた
冬瓜と人参、鳥そぼろの和風煮込みにチーズとほうれん草のパンだ
置かれた皿に手を伸ばしていると、デニーさんののんきそうな声が聞こえてくる
「酒との相性、抜群だぞ~」
その声を聴いて僕は心底思った
はあ、デニーさんみたいに能天気になりたいと
僕は目の前に出された料理を掻き込んだ
リドの料理に満足した僕たちはさっきの出来事が何もなかったように感じていた
今日もリドの料理おいしかったな
急に眠くなってきたな
僕が目を擦っていると、タイニーも目を擦っていた
アリアはお替りをリドに頼んでいる
そうだよ、うん
これがここの日常なんだ
さっきの高飛車な言葉使いの子なんて、きっと夢
そうだ、あれは夢だと納得しかけていた時、従業員用のドアが開いた
「良い匂いですわね」
これは鶏肉?と言って、鼻をひくつかせているアーシィを見て、アリアがスプーンを落とした
カツーン
僕たちを悩ませている元凶が起きてしまったようだ
「私にも下さらない?」
カウンターにいたリドに向かって言うアーシィにリドは料理を出す
「ありがとう」
リドににっこり微笑みながら受け取る
「飲み物はどこかしら?」
アーシィの問いかけに、デニーさんが答える
「酒でもいいならここにあるぞ~」
白ワインを片手に持っているデニーさんのもとへとアーシィが近づく
「ご一緒させていただきますわ」
デニーさんのいるテーブルに料理を持って座った
「あら、よく見たら私の知り合いの方にそっくりですわ」
お名前を伺ってもよろしいかしらというアーシィの声にデニーさんは答える
「デニー・H・アスタロックだ」
デニーさんは白ワインをグラスに注ぐとアーシィに渡した。
アーシィはハジメが引いてしまうほどの性格の持ち主のようです。見た目はタイニーと変わらない容姿をしていますが、この世界での成人である18歳です。
ワインを好んで飲むと言う予定です。
高飛車なアーシィの登場でレストランの空気は騒然としますが、まあ何とかなると思います。
この場を借りて連絡させていただきます。
明日から、用事が立て込む予定で、一日一話以上の更新が難しくなると思います。ご了承ください。できるだけ一日一話以上投稿できるように頑張ります。




