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積み木の世界  作者: レンガ
~ 土の国 ~
95/189

琥珀色の瞳

 「何するんですか!?」


 湯船から引っ張り上げられた女の子の甲高い声が再び風呂場に響く


 その子に向かってアリアはバスタオルを上からかけた


 「はい、じっとして」


 容赦なく拭いていくアリアの声に女の子は黙り込んでしまった



 「もう少し優しく拭いてあげてよ」

  

 僕の言葉にアリアのタオルを拭く勢いが少し収まったように思えた



 拭き終わったバスタオルを僕が受け取り、風呂場の洗濯物置きのところに置く



 アリアが新しいもう一つのバスタオルを羽織らせると、女の子の目を見て口を開いた


 「とりあえず、温かいものを飲んでから話しましょう」


 ね?というアリアの声に女の子は頷いていた


 

 アリアに手を引かれ、女の子はバスタオルを羽織ったままアリアの部屋へと向かった


 

 アリアが言っていた温かい飲み物を取りに僕は店内へと足を運ぶ



 「タイニー、ハーブティできてる?」


 僕の声にタイニーが返事をする


 「うん、できてるよハジメ兄、ってどうしたのその頬?」


 お盆にのせて持ってきたハーブティをタイニーから受け取り、お礼を言ってから僕はそそくさと店内を後にした



 「ハジメの頬、腫れてたな」


 リドがぼそりと言っているの後から聞こえてきた







 全く、なんで僕が叩かれなきゃいけないんだ


 どうしようもない怒りをどこにやったらいいのか考えていると、アリアの部屋の前に着いた



 僕はハーブティを載せたお盆を片手で持ち、アリアの部屋へと続くドアを開けた



 アリアと女の子が仲良さそうに話しているのを見てドアを閉める


 ハーブティを女の子に手渡ししようとすると、女の子の目は先ほど同様、僕に不信感を抱いているようだった


 それを見たアリアが女の子の代わりにハーブティを受け取った



 「これ、タイニーのハーブティね。」


 きっと気に入ると思うわとアリアからの手渡しに女の子は素直に受け取る


 

 

 面白くないな


 僕が鉄壁の笑顔を張り付けながらそう思っていると、アリアが僕に聞いてきた



 「ねえハジメ、さっきこの子が痴漢したって言ってたけど」


 あれ違うでしょ?というアリアの声に、女の子はハーブティに口付けるのをやめた


 「違うはずありません!お姉さん、さっきこの人は間違いなくお風呂の中に手を入れてました」


 そう主張する女の子に僕は頷く


 「そうだね、お風呂に手を入れていたのは確かに事実だよ。だけど僕、痴漢した覚えは一切ないんだよね」


 僕の言葉を聞くと、アリアはもしかしてと言う風に口を動かしていた


 女の子の方を見てアリアは言い聞かせるように言う


 「さっきね、湯船からあなたを引き上げるとき、かなりお湯がぬるくなっているなって思ったのよ」


 それでねと言っているアリアは僕の方に視線を向けてきた


 「もしかしたらハジメは、お湯の温度を見ていたんじゃないかしら?」


 違う?というアリアの声に女の子は悩み始めていた

 



 

 アリアの言葉に僕は歓喜していた


 真実を言っていないのに、推測できるなんて


 僕はアリアに尊敬の眼差しを送っていた


 

 




 しばらく悩んでいた女の子が顔を上げ僕の方を見てくる


 見ていると吸い込まれそうな琥珀色の瞳の視線を受けていると、彼女が口を開いた  


 「・・・そう、かもしれないです」


 ぼそりと言った女の子の言葉に、アリアはやっぱりと声をあげていた


 「そうだと思ったのよ。だってハジメは私があなたを看てるように言った時なんて言ったと思う?」



 アリアの問いかけに対し女の子は首を傾げている


 その横で、アリアが笑いを堪えながら女の子に教えた



 「女の子の身体は見れない、って真っ赤になりながら私に言ったのよ」


 だから間違っても気を失っているあなたの体を触ることはないと思うわ、と言うアリアの言葉に女の子は微笑んだ  


 「そうですね、そんな話を聴いていると痴漢なんてするような人じゃないみたいですね」


 女の子は目を伏せ、手に持っていたハーブティを机の上に置いた



 そして、僕の目をまっすぐ見て謝ってきた



 「すみませんでした、疑ってしまって。ハジメさん?でいいんですよね」


 女の子の言葉に僕は頷いてみせた



 



 その後、ハーブティを飲み終わった女の子に向かってアリアが話しかける


 「体は温まってきたかな?じゃあ、自己紹介しようか」


 アリアの声に女の子は返事をする


 「私は、アリア・M・ジェーンよ。アリアって呼んでね」


 ウインクしているアリアに女の子は軽く会釈する


 「そしてこっちがハジメよ」


 アリアに話を振られた僕は、女の子に自己紹介した


 「僕は相田 創です。ハジメって呼ばれることが多いですね」


 よろしくと言って僕が出した手を、女の子は優しく握り返してくれた



 空になったカップを置き、ベッドから立ち上がり僕らにお辞儀する


 「助けていただいたのに名前も言わず、挙句の果てに痴漢扱いしてしまって申し訳ないです。」


 ゆっくりと顔を上げると、透き通る声で僕たちに名乗った


 「私は、アーシィ・G・ニルギリです。アーシィと呼ばれることが多いと思いますが、好きにお呼びください」


 風呂場での甲高い声を出しているときの彼女の声の違いに、僕たちは驚くしかなかった。



    

 土の国での新しい人物の名が明らかになりました。名前はアーシィ、土の国でのキーパーソンになります。今後の活躍に期待です。

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