お披露目の終わり
リドの料理に舌鼓を打ちながら、語り明かした
寝ていた分を取り戻す為に、僕は料理を皆に運んでいった
けれど、皆は七日間の旅の疲れがたまっていたのだろう、各々食べ終わって好きなように話すとテーブルの上で寝てしまっていた
その中で僕だけは起きていた
皆、疲れてしまったんだろうな
僕はそう思い準備されていた毛布を手にとり皆にかけていった
毛布をかけ終わった後、僕はレストランのドアを開けた
静まり返った夜の中を僕は外へと繰り出す
無数の星が浮かんでいる空を見ながら、僕はテラスへと進む
そして、飛んでいる七羽の白い鳥たちを見上げた
ムキは勿論、アカやダイ、オウ、リョク、アオ、アイも上空で飛び回っていた
僕は鳥たちが飛び回っている様を、テラスにある椅子に座り込んで眺めていた
少しずつ昇ってきている朝日に照らされながら、水しぶきをあげて動いている船が見知った風景へと進んでいく
風の国の都市、フェルネ
帰ってきたんだ
僕は座っていた椅子から立ち上がり、店内へと駆け込んだ
眠っていた皆を起こし、僕はフェルネに到着することを伝える
皆、もといた街に戻ってきたことを嬉しそうにしていた
急いで身支度をし、皆でレストランの外へと出て行った
この風の国に来て最初に停めたところに戻ってきた
僕はそこに橋が架かるように積み木を手にとる
架かった橋を皆は渡っていく
「やったあ、着いたよハジメ兄!」
タイニーがはしゃいでいる中、アリアが先を行く
「あたしが織り籠まで一番だよ」
走り去っていくアリアをタイニーは追いかけていった
「元気だねえ」
あたしには無理さねと言うマキさんに僕は笑いかける
「まあ、いいんじゃない?」
編み込んだ短い髪を揺らしながら、降りていくララにファイは頷いている
「そうだな、元気が一番だしな」
ガイもその二人の話に交ざっていた
そんな中、最後に降りてきたリドは僕に向かって言ってくる
「風の織り籠に行った後、準備ができ次第土の国に向けて出発だな」
その言葉に、僕は頷いていた
森の中を抜け、風の織り籠へと到着する
その道中で、ファイが人々に囲まれたり、ララとガイが用事を思い出したと
言って抜けていったり、タイニーがハーブ園の様子を見に行ったりして抜けていった
門をくぐり、風の籠長室のドアを叩く
部屋の中から聞こえてきた足音の主が安堵の声をもらす
「ファイ、無事だったようじゃの」
クロウさんが僕たちを出迎えてくれた
ファイがクロウさんにお披露目が無事に終わったことを報告すると、僕たちの方を見てきた
「皆さんには大変お世話になりましたのう。何事もなく、ファイは正式な風の加護者となることができました」
感謝の言葉では表しきれないというクロウさんの言葉に僕たちは苦笑する
「僕たちも風の国のこと、そこに住んでいる人たちのことを知ることができました」
むしろお礼を言いたいのはこっちですよというと、クロウさんは髭を撫でつけながら笑っていた
風の織り籠を後にしようとしたとき、マキさんに呼び止められる
「本当に土の国へと行ってしまうのかい」
僕が困っていると、ファイが宥めに来てくれた
「マキ婆、ハジメはもともとそのつもりでこの国を訪れていたんだぞ」
だから呼び止めるのはいけないというファイの言葉にマキさんは静かに頷いた
「まあ、分かっていたさね」
マキさんは諦めたように僕たちを見た
「無理しないようにするんだよ」
マキさんに見送られながら、僕たちは風の織り籠の門をくぐった
森の道を歩き、残った四人は船へとたどり着く
僕が橋を架け、船へと足を運び僕たちは風の国から去る準備をする
いろんな人に出会ったな
僕が架けていた橋を戻そうとしていると、小さい何かがなだれ込んできた
クルクルと回転しながら、はちみつ色の物体は入ってきた
「タイニー!?」
僕は目を回しているタイニーに駆け寄った
目をパチッと開け、僕に気が付くとタイニーは立ち上がる
「ハジメ兄、僕も土の国に連れて行って!!」
お願い、と言うタイニーに僕はただただ驚くしかなかった
ハーブの改良のためには、良い状態の土を手に入れる必要があり、その土のことをよく知っているのは土の国なんだ
さっきハーブ園に休暇の届出をしてきたよ
だから、お願い。僕を土の国に連れて行って
というタイニーの切実な願いを僕は聞き入れた
行きたいと、本人が言うならいいのではないだろうか、僕は橋を戻しタイニーをレストランの中へと導いた
ドアを開け、いない筈のタイニーに目を丸くするリドとアリア、デニーさんに僕はさっきのことを説明した
「いいんじゃないか」
と言うリドの言葉でタイニーは土の国へと行くことができるようになった
やったあ、というタイニーの声に耳を傾けていると、
以前聞いたような衝撃音が船に響き渡った
僕はレストランのテラスへと向かう
そこにはムキに乗ったガイがいた
「別れの前に、こいつがどうしても会いたいんだと」
頭のタオルを整えながら、ガイはムキから飛び降りた。
無事にファイのお披露目が終わりました。その後、創たちは次の国に向けて出発する準備をします。次回には出発できると思います。




