寝過ごした日に
私はおはようというハジメの言葉を耳にする
彼の言葉に私は今までずっと寝ていたのだということを確信した
目を擦り終わったハジメに向かって私は言う
「おはようじゃないわよ、ハジメ」
私の言葉にきょとんとしているハジメに向かって事実を告げる
「もうお休みの時間よ」
私の言葉にハジメは目を見開いていた
私の言葉に訳が分からないというような表情をしている
でも変えようのない事実なのよね
実際にハジメが昨日自室に入ってから、すでに一日が経過していた
「ええっ!?」
僕はアリアの言ったことが信じられなかった
お休みの時間!?
僕は飛び起きて、部屋にあるカーテンを開け放った
そこにはすっかり暗くなった外の景色があった
「本当に一日中寝てたの、僕は?」
僕がその事に呆然としていると、アリアが後ろから話しかけてきた
「そうよ。朝になって起こしにきても、全然目を覚まさないから、心配したんだよ」
アリアの声で本当に一日過ぎてしまったのだということが再び思い知らされる
本当に寝過ごしてしまったのだと僕は思った
けれど、僕は不思議に思う
寝過ごしてしまった間、僕は一日中夢を見ていたのだろうか
湖の人の声がする夢
そして、僕がひたすら誰かに向け、生きていくことについて問いかけている夢
その二つの夢のせいなのだろうか
僕が寝過ごしてしまった理由を考えていると、アリアがいつのまにか僕の前に立っていた
「疲れてたんでしょ、ハジメ」
そう言って、僕に優しく抱きついてきた
上から降ってくる言葉に僕は頷きながら、アリアの背に腕を回す
「うん」
しばらく僕はアリアの優しさに包まれていた
アリアの中で落ち着いていると、外の方から足音が聴こえてきた
僕はアリアから離れ、ドアを開ける
そこにはタイニーが立っていた
「ハジメ兄!!、やっと起きたのー?」
そう言って、僕に思いっ切りダイブしてきた
そのタイニーを受け止め、僕は頭を撫でてやる
今日一日中会えなくて寂しかったよ~、というタイニーに僕は謝った
しばらく僕に撫でられていると落ち着いてきたようで、タイニーは僕から
離れていった
落ち着いたタイニーは僕の手を引き、店内へと出て行く
一日ぶりに出てきた僕に、店内にいた皆が驚いていた
「あら?ハジメくん、やっと起きたの?アリアちゃんが心配してたわよ」
テーブルに座ってハーブティを飲んでいるララが僕の方に声をかけてきた
そのテーブルに一緒に座っている二人も話しかけてくる
「ハジメ坊はお寝坊さんだな」
「全くその通りだね」
ファイとマキさんは今まで寝ていた僕をからかってきた
その後ろでお酒の瓶を飲み明かしている二人が話しかけてくる
「ハジメ~、寝覚めの一杯はうまいぞ」
酒を呷っているデニーさんに対し、僕は軽くスルーすると、
「デニーさん、あんたの場合は寝覚めじゃないだろう?」
という助け船を出してくれるガイが、飲み過ぎているデニーさんからお酒を
取り上げようとしている
昨日までは一緒になって飲んでいたはずなのに、どういう心境の変化だろう
ガイからお酒を取り上げられ残念そうなデニーさんの声に、僕は心の中で
笑っていた
ああ、俺の酒~と言っているデニーさんが嘆いているのをよそに、黙々と布巾で皿を拭いているリドがカウンターにいた
「よお、良く寝られたみたいだな」
まあ寝過ぎたみたいだけどな、というその声に僕はすみませんと言う
本当ならば、今日も僕はレストランで皆と一緒に働く予定だったのだが、
寝過ごしてしまった為にできなかった
僕はごめんなさいと言うと、リドに頭を下げた
そんな僕の行動に構わず、リドは冷蔵庫の中からキンキンに冷えた水をコップに注いでいる
「まあとりあえず、寝覚めの一杯、な?」
リドがカウンターに置いたコップを僕は手にとり、そして、一気にそれを飲み干した
その後、僕の傍にいたアリアとタイニーが、僕の寝ている間にあったことを教えてくれた
朝になり、最後の街でのファイのお披露目が無事終わったこと
その日は、昼間だけレストランを営業し、夜は営業しなかったということ
七日間、寝ているとき以外ずっと飲んでいるデニーさんをさすがに見かねたのか、ガイがデニーさんに酒を飲むのをやめるように言ってきたこと
ガイの鳥たち七羽が船の上に集まって飛びまわっていること
等々があったと言う
「僕のハーブティ、昼間は飛ぶように売れたんだよ!」
嬉しそうにいうタイニーに、僕はそうなんだと言う
「ええ?マスターの料理も負けてなかったわよ」
アリアのマスターびいきに、タイニーは張り合う
この二人は仲が良いのか、悪いのか、分からなくなるな
僕は二人のやり取りを聞きながら苦笑していた
今日の夜はレストランは営業せずに、お披露目お疲れ様と言う形で、ファイを祝うことになった
リドが言い合っている二人を宥めつつ、僕にそう教えてくれた
手伝ってくれるか?というリドの言葉に僕は頷く
もちろん、手伝うさ
僕は腕まくりをし、カウンターに置いてあるリド特製の料理をテーブルへと
運んで行った。
明日たくさん投稿しますと言いましたが、正確には今日でした。日付が変わっていたことに気づかず、寝ぼけながら書きました。すみません。
ハジメ、寝過ごしました。前回の話は、アリアが出てくるところ以外、全て夢の中で起こったことでした。その夢がこれからの話にどうかかわってくるか楽しみですね。




