不確実なもの
何が言いたいのか、分からない
僕は水の底へと声に導かれて行く
泳げないはずの僕が泳げているこの世界は、一体どこなのだろうか
疑問に思いながら少しずつ大きくなってくる声に耳を傾ける
低音の声が伝わってくる
水の中にある気泡のようにゆっくりと、だが確実に僕の方へと漂ってくる
その声の主を僕は探し出したい
だから、行こう
僕は暗く、水面からの光が届かないところへと深く潜って行く
暗い水の底へと掻き分けていると、意識が薄れていく
また、この夢から遠ざかってしまうのか
霞んでいく景色を見ながら、僕はほんの少し悲しくなる
けれど、この夢はきっと大丈夫
僕に何かを伝えようとしている、それだけは分かるから
だから、きっとまたこの夢の続きを見ることができる
僕は確信し、静かに目を閉じた
さっきの夢つながりで僕は問いたい
あなたにとっての夢とはどういうものだろうか?
寝ている間に無意識に起こるもの
自分の今熱中していることがそのまま映像となっているもの
大好きなもの
きっと、他にも様々にあるだろう
僕の場合は、それらのことも含めてこう考える
ふとしたときに見ることができる、「不確実なもの」だと
危険が潜んでいるかもしれない
あまり、良くないことかもしれない
そうと分かっていても見たくなってしまう、自分だけが知っている必ずしも
見られるとは限らないもの
僕はそう思っている
だが、それは僕が毎日見たくても見られるものではない
その夢を見るような出来事、きっかけが日常生活で起こったときに初めて見ることができる
だから、毎日見られるとは限らない
不確実なものだ
でもそれは、僕が生きている世界においても同じことが言えるんじゃないか?
そう、僕はさらに問いたい
夢ならば、消えてしまったとしても、生きていくうえで必要なものではないし、現実の世界で生きていくには支障がないことだ
だからその夢が、壊れていったり、消えてしまったりしたとしても
生きている僕の世界にとっては全く関係ないのだ
壊れてしまったとしても、また違う夢が見られる
やり直しができると、思ってしまう
だから、安心してしまう
安心すると、考えなくなってしまうのだ
けれど、もし夢が永遠に見られないように、現実の世界が見られなくなったとしたら?
夢が壊れるように、現実の生きている穏やかな世界が壊れてしまったらどうだろうか?
夢と同じように確実なものはない
僕たちの生きているこの世界での生活だってそうだ
僕らの生活は不確実なもので溢れている
けれど、僕たちはその世界で生きていかなくてはならない
自分の考えを持って
僕はそう強く感じた
夢ならば、不確実でもいい
やり直しもできるだろう
でも、良く考えてほしい
現実の世界でやり直しができるだろうか?
自分が生きてきた今日一日を無かったことにして、「はい、リセットします」という風にすることは可能なのだろうか?
僕の世界に対しての疑問は尽きない
世界がどうとか関係ないとか思っていると、きっとあなたは考えることをやめてしまうだろう
だが、世界がどうにかなってしまえば、そんなことは言えなくなってしまう
気づいたときにはもう遅いかもしれない
考える時間がないかもしれない
行動することができないかもしれない
何が起こったのかも分からないかもしれない
だから、動かなければならない
考えなければならない
けれども、今の生活に変化をもたらしたくない
動きたくない
考えたくない
このままの生活が続けばいいと思ってしまう
それは誰にでも起こりうることだ
現に僕もそう思っていた一人だ
けれどそれではいけないんだと、僕はこの世界に落ちてきて気づいてしまった
自分たちの力で、自分の夢や道を切り開いていっている人たち
自分の考えを持って、他の人に伝えあっている人たち
その人たちの行動や考え方で、僕はそう痛感させられた
不確実だけれど、自分自身が生きている世界だから
やり直しのきかない、現実の世界での生活だから
精一杯、生きる
自分のしたいことを大切にし、他の人との交流を大事にして生きる
動き続けることを厭わない、この世界の人たちは「生きている」
不確実な世界でも、確実に生きていっているのだ
だから、僕は見習いたい
現実と理想の狭間にいたとしても、
自分にとって都合の良くない世界であったとしても、
生きていくために、考えることをやめないでほしい
世界も僕自身も、そしてあなた自身も、不確実なものだ
だけれども、人と人が信頼し、不確実なもののなかでもしっかり生きていくことができたのならば、
それは不確実なものを確実なものに変えたことになるのではないか?
僕は最後にそう問いたい
ペチペチと叩かれる音に目を覚ます
目の前にいる人に対し僕は仰天する
なんだこの髪の色の人は?
そう思った
けれど、すぐ分かった
僕は寝ぼけていた
そうだ、ここは日本ではない
国が4つある、僕の創った異世界だった
微笑みながら挨拶してくる人を見上げる
「おはよう」
僕は目を擦りながら、アリアに挨拶した。
すみません、予想以上に時間がかかってしまいました。10時から取り組んだので、2話分行けるぞと思っていたら、この回にかなり時間をかけてしまい、日付をまたごしてしまいました。本当にすみません。
明日はたくさん投稿する予定です。読んでくれている方はお待ちくださいね。




