ララの来訪
翌朝、お披露目の時間となり、ファイさんはレストランの表に立つ
民衆がひしめいている街を見渡し、ファイさんは挨拶をしている
「あれ、昨日のウエイトレスじゃないか?」
「やっぱりそうなのか」
昨日レストランでファイさんを見つめていたお客が口に手をあて、驚いているのが見えた
ファイさんは、その人たちに対してもきちんと挨拶をしていた
普段のファイさんとは大違いだな
僕はカーテン越しに見ていた視線を逸らした
挨拶が終わり、ファイさんがこの都市で風の加護者と認められたので、僕たちは次の都市へと移動する
そして、また、レストランを営んでいく
しばらくこれが続いた
~ フェルエ・行政地区 織り籠内 ~
「ファイはうまくやっとるんじゃろうか」
籠長の部屋でわしは歩き回っていた
「籠長、そんなに心配されなくても大丈夫ですよ」
衛兵がわしに何か言ってくるが、わしの前ではその言葉は意味を成さなかった
あの、ファイが風の加護者ぞい
考えられるものか
風の国で生きるよりも、水の国に出て行ってしまったあのお調子者が
まさかなるとは、思わなんだ
ため息をつきながら、わしはせわしなく、ファイ達が帰ってくるまでを過ごしたのじゃ
~ 7都市目 レストラン営業開始時間前 ~
すでに、7都市目にこのレストランは停泊していた
同じように広告をムキに乗って配っていると、下から僕を呼ぶ声が聞こえて
きた
「ハジメくん!」
僕は眼下にいる人たちへと視線を走らせる
声のした方を見てみると、そこにはガイとファイさんの幼馴染がいた
「ララさん!」
僕はムキの背から降り立ち、ララさんの前に立つ
「ララ、でいいわよ。それより、風鳥に乗るなんて凄いわ」
褒めてくれるララに、僕は返事をする
その後、ララは僕にファイさんのことを尋ねてきた
「ねえ、ファイとガイはどこにいるの?なんかフネとやらで、移動してるっていうのは噂で聞いてたけど、そのフネって、どういうものなの?」
首を傾げつつ聞いてくるララに、僕は答えようとした
幸い、ここからレストランまではそう遠くないから、実際に見てもらう方がいいかもしれない
僕はそう思い、僕と一緒にフネに向かうようにララに提案した
ララが分かったわと言ったので、僕たちは急いでレストランに向かうことに
なった
ララに手伝ってもらいながら、残りの広告を次々と街の人へと渡していく
手伝ってもらったおかげで、一人でやる時よりも断然速く終わったので、
僕たちは雑談しながら歩くことにした
「ところで、ララはどうしてこの都市に来ているの?」
フェルエの行政地区で、手紙屋の仕事をしていたでしょと言う僕の疑問に対し、ララは首を縦にふる
「ああ、そのことね。手紙の仕事の中に、この都市に馬を使って直に渡す必要があるものがあったからね。その手紙を渡すために、他の仕事は終わらせて、
ファイ達が行くのとは逆回りの陸路を馬で駆けたんだ」
だからだね、というララに僕はなるほどと言った
「ララは馬に乗るんですか?」
僕は空になった紙袋をリュックに入れながら、問いかけた
僕の言葉にララは笑い飛ばしていた
「うん?おかしなこと言うね。この世界では、馬に乗ることは必須だよ」
風鳥よりもね、と言っているララに僕は相槌を打つ
そうなんだ。この世界では風鳥に乗れる人は少ないのだ
僕は頷きつつも、ララをレストランへと案内するのであった
ごった返す人の中を僕とララは歩いていく
「ちょっと、なんでこんなに人が多いのよ」
人を避けながら言ってくるララに僕は答える
「さっきの広告のせいですよ!」
僕は人を掻き分けながら、レストランへと進んでいった
そして、人混みから抜け出たところにフネ、いわゆるレストラン・宿り木の姿が見えた
「何これ?」
ララが見たことないものに驚いているのを見て、僕は説明する
「これが、ファイさんの乗っている船でもある、レストラン・宿り木ですよ」
僕がレストランを指さしながら言うと、ララは口をあんぐり開けていた
そこへ、レストランからマキさんが出てきた
「ハジメ、もうそろそろ店内がお客さんでいっぱいになるから、早く接客にいってやりな」
僕はその言葉に頷き、ララをお願いしますと言って、その場を立ち去った
その場には、マキさんとララが残っていた
「マキ婆!!」
「ララじゃないか」
二人は感動の再開を果たしていたのだった
店内の雰囲気は以前同様、様々なお客さんと料理、飲み物で溢れかえっていた
リドの料理にタイニーのハーブティ、デニーさんとガイのお酒、アリアとファイさんのによる接客により、さらにレストランは賑わいを見せる
僕も頑張らないと
そう思った僕は、注文をしたがっているお客さんのもとへと走っていった
しばらくして、マキさんとララがレストランの中に入ってきた
そして、二人とも空いた席へと座っている
話したいことが山のようにあるらしく、大量の飲み物の注文を二人から受けた
ファイさんにもララが来ていることを伝えないと
僕はそう思い、カウンターにいるファイさんに手を振った。
風の手紙屋、ララさん再登場です。この前はあまり絡ませられなかったので、次回かなり絡ませたいと思います。




