協力
そして、僕は夕日に染まった街の上をムキと一緒に飛んでいる
「人がいそうなところにばら撒くのよ」
と言っていた、アリアの言葉に従い、人のいるところを目で探す
ここら辺かな?
そう思い、僕は紙袋の中身を取り出す
そして、空中へとばら撒く
風がよく吹くところで、この宣伝方法は効果抜群だった
風に乗ってきた広告を子どもが、大人が拾っていく
その後、子どもが傍にいた大人の手を引っ張り、チラシを指さして見せていた
よし
僕はムキに思いっ切り飛ぶように合図する
その間に、手当たり次第、僕は広告を空中へと放っていく
それの繰り返しだった
広告をばら撒き続けていると、夕日が海の中に潜り込んでいた
その頃には、紙袋に入っていた広告は無くなっていた
そろそろ帰ろう
僕はムキにレストランのある方向を指さした
ムキはその方へと向かってくれた
夕日に染まる海に向かって僕たちは進んでいく
レストランが見えるようになった時、目を凝らしてみると行列ができていた
これは、早く帰らねば
僕はムキの背にしっかりと掴まり、レストランへと急いだ
テラスに降り立ち、僕はレストランの店内へと入る
たくさんのお客を掻き分け、僕はカウンターの前へと辿り着いた
「よし、仕事だ」
リドの言葉に僕は身なりを整え、返事をする
そして、アリアが招き入れたお客さんを僕が誘導する
そのお客さんたちは僕の配った広告を片手に持っていた
何とか役目は果たせたのかな
僕は心の中でほっとしていた
店内のお客さんの注文を聞く為、僕たちは走り回る
マキさんは、酔っぱらったお客の相手や泣いている子どもの世話を引き受けてくれている
ガイとデニーさんは、僕たちが聞いてきた注文通りのお酒を用意してくれていた
タイニーは、ハーブティが注文されたときははちみつ入りのハーブティを淹れ、それ以外の時はリドの料理ができたものを、僕たちが働きやすいように持ってきてくれていた
そして、ファイさんは僕たちと同じようにウェイトレスをやっている
風の加護者と名乗る前に国民と触れ合いたい、と言うことからだった
が
「ご注文は何だ?」
ファイさんがメモを取り出し、少し気の強そうなおじさんたちを相手に注文を取っていた
ファイさんの態度と見目にたじたじになりながらも、注文していくおじさんたちは、正直デレていた
鼻の下が伸びていた、と言った方がいいのだろうか
お客が注文したものとは違うものを持ってきているファイさんを見て、僕は頭を抱えた
どうして豚の香草焼きって注文していたはずなのに、タコのカルパッチョを持って行っても、お客さんはファイさんに文句を言わないのだろう
僕の不思議で仕様がなかったが、当のお客さんはなぜかそれで満足していたので、よしとすることにしよう
そう思ったのだった
今日のレストランのメニューは、
先ほども言った、ハーブにアリアが以前大量にとってきたレモンを使い、豚の臭みを消しつつ、旨みをギュッと閉じ込めて焼いた、豚の香草焼き
さっぱりとした淡白な味わいの中に、噛めば噛むほど甘みが増すタコを
いつもより厚切りにし、オリーブオイルとバルサミコ酢のようなもので軽く
締めた、タコのカルパッチョ
クニュクニュ、シャキシャキとした食感がたまらない、アロエとアスパラガス、そして、もやしを軽くさっと油で炒め、甘辛くした、アロエ炒め
他にも、子どもたちの好きそうなミルクプリンや鳥の唐揚げのようなもの、大根といんげんをじっくり煮込んだ胃に優しそうなスープ等々、
挙げだしたらきりがないくらい、レストランはたくさんの料理で溢れかえっていた
勿論、タイニーが淹れるハーブティも人気だった
はちみつ入りか、ハーブティのみかを選べるようになっていたので、はちみつの苦手な人でも問題なく飲めるようになっていた
淹れたハーブティをカウンターの前に座った人に褒められていた時のタイニーの顔が忘れられなかった
皆楽しんでるな
僕はお客さんの注文を聞きながらそう思っていた
夜も更け、入ってくるお客が落ちついてきた
帰っていく客も多く、僕たちはお見送りをする
その中に、ファイさんのウエイトレス姿に見とれながら、渋々帰っていく人もいた
見とれている人が風の加護者だとは思っていないんだろうなと考えていると、明日のこの街での国民の反応が楽しみになってきていた
僕はお客のいなくなったテーブルを拭きながら、そう考えていた
ガイとデニーさんが勧めていったお酒を飲んでいた人は、強くなかったのか、テーブルの上で臥せって寝ていた
その人たちを起こして、店の閉店準備を始める
「よし!今日も無事閉店でした」
花のような笑顔を見せながら、アリアは辺りに笑顔を振りまく
「皆お疲れだったな」
リドが皆に労いの言葉をかける
無事、風の国での営業一日目が終わった
明日の朝は、二都市目のお披露目だ
僕は心の中で、気合を入れていた。
ファイさんがウエイトレスです。水の国での風の服屋での行動を見ていると、とても接客には向いてなさそうな感じだろうなと思っていましたが、
ファンがつきそうな個性的な?接客で、今回お客を魅了していました。私もできることなら魅了されたいなと思いました。




