小学校の先生
「なんだい、お前さんは?」
どこから降ってきたと言って、僕の方へと向かってくる
その間にその人が解除したのか、僕の身体から新緑色の光が消える
と同時に、地面へと投げ出される
「いてっ」
僕は水泳の飛び込みのような感じで、手から地面に滑り込んでしまった
両手の平を擦り剥いてしまった
僕は手の平を交互に見ながら、その場に立ち上がる
そして、僕は右手を挙げて、人差し指を立てる
「空からです」
僕は真剣におばあさんに向かって答えた
けれど、おばあさんは僕の方にさらに近寄ってきて
僕の顔を睨みつけるように見てきた
「そんなことは分かっとるんじゃ!」
ベシッと、僕の背中を一発気合を入れるような感じで叩いてきた
そりゃそうですよね
なんせ空から落ちてきたんですから
叩かれた痛みに耐えつつ、僕は頷く
僕もその言葉に同意しながら、先ほどの質問に答えることにした
「自己紹介が遅れました。相田 創です」
よろしくお願いします、と僕がお辞儀をすると、おばあさんは鼻息を荒くした
「ふん、そうか。あたしゃ、マキ・U・アタイアじゃ。マキ婆やらマキさん
やら子どもたちからは呼ばれとるのう」
好きに呼ぶとよいと言われたので、僕はマキさんと呼ぶことにした
「マキさん、先ほどは助けていただいてありがとうございます。実は、鳥と
空を散歩中だったのですが、鳥から落ちてしまって」
僕の言葉にマキさんは目を見開いた
「鳥って、まさか風鳥に乗っていたのか!?」
マキさんの言葉に僕は首を傾げる
かざどり?そんなことガイ言ってたっけな
僕が記憶の糸を辿っていると、マキさんは僕に問い詰めてきた
「風鳥に乗れるのは、あたしの知る限りではガイだけだ。ガイと知り合いなのかい?」
僕はその言葉に素直に頷いた
「今日会ったばかりなんですが、知り合いです。ガイは白い鳥のことを風鳥とは言ってなかったのですが」
僕は言葉を切り、マキさんの話を聴こうとした
けれど、マキさんは僕の背中にあるリュックの方へと回ってきた
そして、白い鳥の羽、リュックに引っかかっていたムキの羽を取り出した
「この白い羽、まちがいなく風鳥だよ」
白い羽を回しながら僕の方を見てきた
「今日会ったばかりで、鳥に乗せてもらえるなんて、通常じゃあり得ないことだよ。お前さん、何か風の力に関係するものを持っているんじゃないのかね?」
その言葉に聞き覚えがあった僕はリュックから書状を取り出す
「ガイにも同じように聞かれたんです。これだと思います」
僕が両手で差し出すと、マキさんの目の色が変わった
「なんと!?」
ガイと同じように、書状の印に驚いていた
「最近のものじゃな」
書状を丸めながら、僕の方へと返してくれる
「ふむ、ハジメとやら。詳しく話を聴かせてもらう必要がありそうじゃな」
擦り剥いた手も治療してやるから来なさい
そう言われた僕は、学校のような建物の中に入って行った
僕が落ちてきたのは小学校の運動場だったようで、タイニーが前まで通って
いた学校だった
タイニーのことを話すとマキさんはますます驚いていた
さらには、ガイやタイニーの他に、リリーとパンジー、ララ、そして、ファイさんについても、マキさんは知っていた
皆ここの学校の卒業生らしい
僕は古めいた夜中の学校の廊下をマキさんと一緒に歩いていた
それぞれの国には、一校ずつ小学校があるらしく、6歳から12歳の子どもが日本でいう一般常識について国中から学びに来るようになっているという
ここに皆がいたんだな
僕が進みながら考えていると、マキさんは立ち止まって一つのドアを開けた
「ここならよかろう」
音をたてながら、重厚な作りのドアを開く
そこは、保健室のような場所だった
ベッドが数台、奥の方に置いてあった
「そこに座りなさい」
有無を言わさぬマキさんの言葉に僕は従う
僕が椅子に座ると、マキさんは無言で手当てを始めた
手馴れている
僕はマキさんが消毒液を脱脂綿に浸すのを見ながらそう思った
「よし、終わったよ」
添えられていたマキさんの手が離れていく
消毒だからと塗られた消毒液はかなり染みた
僕は顔をしかめながらお礼を言うと、マキさんは椅子を用意してきた
「さて、治療も終わったことだし、ハジメの話を聴こうかね」
マキさんの言葉に僕は頷き、今までの事を話していった
「なんと、あのファイが風の加護者!?」
少ししわの入った口元を押さえながら、マキさんは驚いていた
「ええ、そうなんですよ」
僕は頷きながら話を続けていった
マキさんが白黒させながら僕の話を聴き終わった頃には、日が西から昇ろうとしていた
「なるほど、そういうことじゃな」
僕の言葉にマキさんは頷いていた
そして、マキさんは立ち上がった
「こうしてはおれん、ファイのもとへと行こう!!」
学校は臨時休校じゃと言っているマキさんは張り切っていた
どうやら、ファイさんのお披露目に同行する気のようだ
マキさんは僕を置いて、保健室から飛び出して行ってしまった。
マキ婆、登場です。保健室の先生兼生物学の先生です。だから、風鳥にも詳しかったと言うことになります。物言いはきつめですが、根はいい人です。
善は急げを全力で実行する人です。ハジメは少しビビっていると思います。




