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積み木の世界  作者: レンガ
~ 風の国 ~
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似たような感覚

 しばらくして僕は目をあける



 頭上の、木の上よりももっと上の方から何か聞こえる



 木に背を預けるのをやめ、僕は空を見上げた






 そこには、昼間僕を山へと乗せていってくれたムキがいた




 僕を見つけたムキは一目散に僕の方へと向かってくる





 キュイー



 月夜に輝く白い羽を羽ばたかせながら、僕に抱き着いてきた




 「羽毛がくすぐったいよ」



 僕は白い羽毛に手を走らせながらムキを仰ぎ見る




 どうやらムキは手紙を目的地へと届けることに成功したようだった



 僕が夕方渡したはずの紙袋、くちばしに加えられている紙袋の中が空っぽだったからだ



 「よくやってくれたね」



 僕が労いの声をかけると、ムキは一際声を大きくした




 機嫌がよくなったのか、僕の方に頭を垂れてきた






 先ほど、僕がムキから一人で降り立ったときの状態になっている





 ・・・乗れってことなのだろうか




 僕は置いていたリュックを片手に、ムキの背中へとよじ登っていった



 

 「よいしょ」




 背中に周りこみ、僕がしっかりと羽毛を掴んだのを確認したムキはゆっくりと上昇する




 金木犀にぶつからない様に上昇しているムキの辺りには、金木犀の香りで

溢れていた





 

 でも、ムキは一体どこへ行くんだろうか





 そう考えている間もムキは上昇し続ける



 やがて、織り籠全体が見えるまでになっていた






 結構広い敷地だったんだな





 僕がそう思っていると、ムキはさらに上昇しつつ僕の方を見てきた





 何か伝えたいのだろうか





 僕はムキが首を縦に振ったのを見て、同じようにした




 



 前を向いた瞬間、ムキは急発信をした




 開いていた口を慌てて閉じる


 そして、僕は羽毛を掴み、頭をできるだけ低くすることしかできなかった






 もしかしなくても、縦に首をふるのは、急発進の合図?





 僕はその速さに言葉を失いながら、ムキの背中を見ていた













 ムキの速すぎる飛行が始まって1時間後、やっと僕は景色を見ることができた




 空には相変わらず星と月が浮かんでいて、家や木、川、山、そして海がかわるがわる僕たちの下を動いていた




 ムキは織り籠から離れて1時間、風の国を旋回していた




 

 ムキは車並み、いやそれ以上の速度でぶっ通し飛行を続けているというのに

疲れていない



 むしろ、飛ぶ前より元気になっているようだった





 飛ぶのが好きなんだろうな




 ムキの羽毛を撫でながら、僕はこっそり思っていた

 




 





 ムキが飛行を始めて2時間後、星と月の位置がだいぶ東に傾いた頃に、僕はこの世界の太陽の進み方が日本とは逆、ということを思い出した




 太陽は東から昇らず、西から昇る



 だから、星や月も西から






 ということは、日当たりとかも日本とは全く逆になることになるな




 僕は心の中で頷いていた




 つまり、マンションでいうと南側が日陰で売れにくく、北側が日当たり良好で売れやすいということになる



 そして、朝日が昇るのも西から北、そして東へと沈んでいくということだ






 まあ、この世界にはマンションはなさそうだけど



 僕が肩をすくめていると、ムキは急に飛行するのをやめた







 慣性の法則、だったかな


 動いているものが急に止まると、その動いていた方に体が傾くっていうあれだ




 でも、僕は傾くだけでは終わらなくて




 ムキの上をリュックごと一回転






 したなと思ったら、また一回転




 僕の体はリュックもろとも空中へと投げ飛ばされることになった









 リュックが背中に張り付き、僕の背中全体を覆う



 

 手と足が力なく目の前で揺れている



 

 下からお腹を引っ張られるような感覚






 僕は確実に下へと落ちていた




 ムキは僕が落ちたことに気づいていなかった


 

 追ってくる気配は全くと言っていいほど、ない







 これ、本当の絶体絶命ってやつじゃないか



 僕はこの状況に冷汗をかいていた




 しかも、僕が以前水の国に落ちてきたときとは違って、下はただの地面だった



 海のど真ん中ではなかった





 これは、落ちた途端に即死だな





 とりあえず、僕は冷静になってこの現状を打破する解決策を考える





 リュックをパラシュートのようにするのはどうだ?




 そんなリュックじゃ、役に立たないよ



 心の声が聞こえてくる





 ムキに助けを求めるのは?




 さっきからやってるけど、何かに憑りつかれたようにその場を動いてないよ



 また声がした






 じゃあ、どうしたらいいのさ





 僕は心の声へと呼びかける



 けれど、心の声はそれ以上聞こえなくなった





 つまり、解決策はないと







 僕は落下していく感覚に呑み込まれながら、眼下の景色が迫ってくるのを

他人事のように眺めていた




 



 





 家や木が間近に迫ってきた



 内心はかなり焦っているのだけれど、どうしようもない




 僕にはどうすることもできないのだから




 




 背中に張り付いていたリュックを抱え込み、迫りくる地面から目を背けた





 もうだめだ





 思いっ切り目を瞑る















 あれ?




 いつまでも身体を襲ってこない衝撃に僕は首を傾げる





 一体どうなっているんだ?




 僕は静かに目をあける




 地面すれすれ


 その下で砂埃が立っていた





 僕は縮めていた身体を少しずつ開く







 僕の身体は新緑色の光で淡く包まれていた




 「どこからか声がすると思ったら、なんだい全く」



 声のする方へ僕は目を向ける


 

 目を向けた先には見知らぬおばあさんが立っていた。







 ハジメ、また落ちます。今度はどうして落ちているか分かっているからいいのですが、どうしようもない状況ではきっと絶望的になるんでしょう。どうしようもない状況でも、どうにかしていくことができないのかといつも模索してます。

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