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積み木の世界  作者: レンガ
~ 風の国 ~
64/189

もちつもたれつ

 「ハジメ、おはよー!!」



 バンと開け放たれるドアに視線を向ける


 まだ朝早いと言うのに彼女はいつも元気だ




 「さあ、泳ぎの練習に行くわよ」



 腰に手をあてて、ウインクとしてきたのはもちろん、




 アリアだった







 そういえば、泳ぐ練習をすると言っていたな




 僕は寝ぼけながらもアリアと部屋を後にしたのだった











 ~ 風の国 ネリア 三大都市・フェルエ 森林地帯 ~




 船のあるところ、海の近くに行く為、僕たちは歩を進める




 踏み込む土の音と木々の風に揺らされる音、僕たちの衣擦れの音が聞こえる


 ハーブの香りに誘われて、蝶や蜂がその風に乗りやってくる


 蝶は咲いている花にとまり、蜂は同じようにとまりながらも蜜を吸い、運ぶ




 蜂が蜜を持ち去っていく


 けれど、その蜂蜜は人間が後でほとんど取ってしまう




 蜂の成果を横取りするというと言い方が悪いかもしれないが


 蜂からのおすそ分けをいただく、と思えば感謝の心とありがたみがわくのではないだろうか



 世界にある全てのものは、自分の手だけでは手に入れられない


 働いて買った今着ている服や疲れて帰るときに買う食べ物、寝泊りして一日を始める家



 何においても、自分だけの力だけでは手に入れられない




 自分ひとりでは手に入れられないもの


 誰かに作ってもらったり、分けてもらったりするものがある




 それとは逆に自分自身が作れるものもあるだろう



 そういうものは誰かに作ってあげたり、分けたりすることができる




 人間では蜂蜜をつくることはできない



 蜂が作る蜜だから蜂蜜




 だから人間は蜂蜜を蜂に分けてもらう


 代わりに、人間は蜂に安全な寝床やいい香りの香水をあげることができる




 人とひととのつながりにおいても、きっと同じこと




 自分に何ができるのかを見極めて、できることを精一杯する


 その中で、他人にできないところの部分は手伝ってもらう




 

 もちつもたれつ





 この世界はその言葉がよく似合う




 僕はそう思いながら、先に進むアリアを追いかけて行った






 ~ 船上レストラン・宿り木前の海 ~



 「やっと、着いた!」


 背筋を伸ばしながら言うアリアに僕は頷く


 「そうだね」


 靴を脱ぎ、視線を下の方からアリアに戻すと、すでに海の中にアリアは入っていた



 僕も後を追ってあわてて入る




 冷たい海の水と日の光が海の中に入った途端、体にしみる


 

 眠かった僕もそのおかげで覚める




 張り切るアリアの言葉を聞きながら、僕は黙々と泳いで行った




 最初の方はアリアに引っ張ってもらって泳いでいたが、徐々に僕を一人で泳ぐことにならそうとしているのか、アリアが引っ張ってれる回数が減っていく






 この調子なら泳げるかな





 そう思った束の間、足に鈍い痛みを感じた



 足をつってしまったようだった



 咄嗟のことに僕は海の中でもがく



 もがけばもがくほど、海面から身体が遠くなってしまう



 


 その時、アリアは僕がいたところから距離をとろうとしていたので、僕の方を見ていなかった



 冷たい水が僕の視界を侵食していく



 少しずつ沈んでいくと海の青さと暗さが増していく


 

 同時に、自分の口から気泡が出て行くのがよく分かる





 しばらくして、僕がいないことに気づいたアリアが潜ってこちらにやってくる






 必死そうな顔で海の水をかき分けながら僕の方に向かってくる




 どうしてそんな悲しそうな顔をしているの?




 そう思いながら目を閉じる僕の耳に聴こえるのは水と水が混ざり合う音


 かき分ける音



 ただ、それだけだ




  

 少しずつ沈んでいく僕の体にアリアは両手を伸ばしてきた。




 昨日は投稿できなくてすみません。泊りがけで用事を済ませておりました。


 自分でできることそうでないこと、たくさんあると思います。その中でできることを精一杯する。これは大事だとは思うんですが、忘れがちです。そのことを忘れないよう、他の人やものに感謝しながら生きれたらいい、そう思います。

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