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積み木の世界  作者: レンガ
~ 風の国 ~
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愛される者

 僕はタイニーに案内されて、ハーブ園を見て回る



 さっき助けてくれたお礼を兼ねて、だそうだ



 はちみつ色の髪を揺らしながら、僕の前を歩く






 ダメだ、子犬を散歩しているような気分だ






 僕はにやけそうになる顔を抑えるの精一杯だった







 タイニーが歩くと、ハーブが揺れて、緑の光が舞う



 この光はリリーとパンジーが布を切っていたときと同じ光だな




 そう思っていると、タイニーの周りにも同じように光が飛んでいるのが見えた





 まるで、タイニーの傍にいることを喜んでいるみたいに






 そう思っていると、目の前でタイニーが止まったので僕も立ち止まる



 「ハジメ兄はハーブ好き?」



 僕の方を振り返ってくるタイニーに僕は頷いて見せる



 「ミントとかが特に好きかな」


 

 僕はタイニーの目の前にあったハーブの名前を言う




 タイニーは僕の言葉に目を一際輝かせてきた


 「本当に!?ハジメ兄もミント好きなの?」


 嬉しそうなタイニーに僕は頷く



 「じゃあ、これあげる!!」


 そう言って、タイニーはハーブの前に立って手をかざす



 

 何をするんだ?




 僕がその光景を見ていると、緑の光がミントの葉を優しく切っていく


 切り離された5枚の葉は僕の目の前に落ちてきた


 慌てて僕は手を広げる


 その中におさまった瞬間、ミントの香りがより一層広がった




 「それハジメ兄にあげる!!」




 えへへ、と言いながら僕の方を見上げてくるタイニーは何事もなかったように笑っている







 もしかして、この子はリリーやパンジーと同じように風の力が使えるんではないか



 僕はそう思い、一つの疑問をタイニーに投げかける



 「タイニー、君は風の力が使えるみたいだね。風の国の人は皆その力を使えるの?」




 僕が訊ねたことにタイニーはきょとんとしていた



 「ハジメ兄は知らないの?」


 僕は小学校にいたときに習ったよ?という声に、ああと僕は言う





 「えっと、僕は記憶喪失で、この世界のことは何も知らないんだ」



 僕が頭を掻きながら言うとタイニーは目を丸くしていた



 「ハジメ兄、記憶ないの!?」


 

 ぱくぱくと口を開けながら言っているタイニーに僕はゆっくりと頷く




 素直な少年の前で嘘をつくのは気が引けるが仕方ないだろう




 そう思った僕は口を開く



 「そうなんだ。だから、思い出すのも兼ねて僕は世界中を回っているんだ」



 「そうなんだ」



 しゅんとしているタイニーに僕は視線を合わす


 「でも、記憶を無くしてから悪いことばかりじゃなかったよ」



 目線を落としていたタイニーが僕の目を見る


 「周りにいる人はみんないい人達ばかりだし、レストランでも働かせてもらえて僕は嬉しいんだ」



 見ず知らずの僕を暖かく受け入れてくれる人たちがいて、という僕の言葉に

タイニーは本当?と言う風に僕を見てくる




 「それにね」


 僕が言う言葉を待っているタイニーは一生懸命僕の言葉を聞いている


 「記憶をなくさないと、世界中を回らないだろうから、今ここでタイニーに会えなかったかもしれないんだ」


 そう思ったら逆によかったよと言う僕の笑顔に、タイニーは目にいっぱいの涙をためた


 


 「ハジメ兄、大好き!!」




 感極まったのだろう


 タイニーはまた僕に抱き着いてきた



 遠慮なく抱きついてくるタイニーの頭を撫で、僕は笑顔をこぼしていた

    






 落ち着いたタイニーは僕から離れる



 「ハジメ兄は風の力が誰でも使えるのかって言っていたよね?」



 さっきの質問に戻ったのだろう、僕はその言葉に同意する



 「誰でもは使えないんだ。風に愛された人だけが加護を受けることができるんだって」



 タイニーは僕に向かって一生懸命説明してくれた




 それぞれの国は国の名前を反映した力を使える者が居るという



 水の国は水の力を



 風の国は風の力を



 土の国は土の力を



 火の国は火の力を



 それぞれ、生まれたところの力を使うことができるということだ



 そしてその中でも、心に淀みがなく、且つ、その力に愛された人しか使うことができないというらしい



 その愛される基準が何なのかは分かっていないようだが、



 早い人で生まれたときから、遅い人でも10歳までには、愛されて、その力を使えるようになるらしい




 「僕は8歳のとき、ハーブ園を手伝い始めてから使えるようになったんだ」


 タイニーはえっへんと威張るように言ってきた




 その後もタイニーの説明は続く


 10歳を過ぎて加護を受ける人は稀で、タイニーは聴いたことがないそうだ




 

 「そう言えば、この国の加護者がいなくなって2年も経つけど、大丈夫なのかな?」


 うーんと悩んでいるタイニーに、僕は笑いかける




 「ああ、それなら大丈夫だよ」


 僕の言葉にタイニーは不思議そうな顔をしている




 「なんで、ハジメ兄はそんなことが言えるの?」


 首を傾げながら聞いてくるタイニーに僕は教える




 「実際に会ったからさ、加護者に」



 僕の言葉にタイニーは呆然としていた





 あれ、そんなに驚くこと?





 僕はタイニーの目の前で、彼の意識が戻るよう手を振っていた。



 

 力、加護の説明です。風の加護者は周りはまだいるとは知らないので、タイニーも創の言葉に、驚きすぎて言葉を失っています。

 それは、創のことをタイニーが信じているからだともいえます。タイニーとのじゃれあいはまだまだ続きます。タイニー=子犬で読んでみてください。

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