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積み木の世界  作者: レンガ
~ 風の国 ~
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はちみつ

 パンと音が鳴る


 僕の手の平と大人の拳が合わさった音だ



 後ろに少年を庇い、大人の前に立っていた



 「もうやめたらどうですか?」


 僕は大人の方に静かに微笑んでいた






 「やめたらどうですかってなんだ!?」


 大人はイラついているのか語気が荒かった


 「ハーブを摘むのを、ですよ」


 僕は大人の拳を払いながら後ろに下がった



 「規定量は記念に残る量なんだよね、君」


 僕は少年に話しかける


 「は、はい!!」


 僕の言葉で少年は少し緊張が和らいだようだった



 僕は大人の方を見据える



 「確かに、あなたがおっしゃるように記念に残る量が明確に示されていない場合は好きなようにとっていいと僕も思いますよ」


 その言葉に大人は頷く

 

 「ほら、やっぱりそうじゃないか、坊主」


 はちみつ色の髪の少年に向かって大人は言ってくる




 

 調子に乗る前に言ってやらないとな





 僕は大人の方を鋭い視線で見た


 「けれどもですよ、やっぱり限度というものがあるとも思いますよ」


 この少年の言うように、と僕は大人に語りかける




 「ここはハーブ園、他の人も利用する場所なんですよね」


 歩を大人の方に進めながら僕は言う


 「つまり、公共の場です」

 

 大人が何事だというような表情で僕を見てくる

 

 「公共の場のものは皆のもの、そうですよね?」


 僕が言う言葉に大人は頷く


 「それをあなたは分かっているんですよね?」


 僕の言葉にさらに大人は頷く


 「なら、この少年が言いたいことも分かるのではないですか?」




 そう言って僕は後ろの少年の気持ちだと思うものを代弁することにした







 僕たちが一生懸命育てたハーブをいろんな人に見てもらいたい



 そして、楽しんでいってもらいたい



 もらって帰ってもらうのは記念の分だけ



 そうじゃないと、ハーブ園が荒れてしまうから



 だから、ほんの少しだけなんだ

 


 このハーブ園に来た時の気持ちを、誰かに届けてほしい



 皆にその気持ちを知ってもらいたいからなんだ



 僕は坦々と述べていく 



 「そのことを理解している人たちはああいう風にして持って帰っているわけですよね」 


 僕が指した方向のお客さんのハーブの量をみてもらうよう、大人に言う


 

 「それに対して、あなたのその袋は、ここに来る人の気持ちも、ここでハーブを育てている人の気持ちも踏みにじってしまうほどの量だと思いますが・・・」




 どうですか?という僕の顔に大人が冷汗をかいている




 「ああ、はっきり言わないと分からないですかね」




 ならば仕方ない


 僕はさっきのクロウさんのようなどす黒いオーラを背負いながら、大人に

思いっ切り近づいた



 ひえっと声をあげている大人は、あの盗賊兄弟のように滑稽で、見てて非常につまらなかった






 「あんたの行為は公共の場に反した行為ですよ、分かってますか?」




 大人様?という僕の皮肉に、ビビってしまったのか、



 その大人はみっともない声をあげながら空の袋を握り、ハーブ園の出口へと走り去っていってしまった





 「やれやれ、何とかなったなったかな」


 僕はため息をついていた




 だから僕は後ろの少年の存在を忘れていた



 

 あ、と思って振り返ると、はちみつ色の髪の少年は僕に向かって目を輝かせていた



 

 「凄いです!!」



 少年は僕に抱きついてきた





 ちょっと待て、


 僕は少年に抱き着かれるような趣味は持ち合わせていないぞ




 少年の行為に少し焦ったが、僕は少年の気のすむまで待つことにした









 「ありがとう、お兄さん!!僕すっごく嬉しいよ」


 はちみつ色の髪の少年は僕の方を嬉しそうに見てくる





 なんかまるで、主人を待っていた子犬のようだな




 僕はそう思いながら、少年の頭を撫でてやった


 「君も偉いじゃないか、ハーブ園を守ろうとしたんだろう」



 少年はその言葉に反応した


 「でも、僕何もできなくて」


 しゅんと沈む様子はもう捨てられた子犬同然で






 ダメだ、これは頭を撫でくりまわしたい






 そんな衝動に駆られていたのはきっと僕だけではないだろう


 そう思いたかった 



 


 落ち着いた少年がお兄さん名前は?と聞いてくるので、僕は応えることにする


 「相田 創だよ」


 「ソウダ・ハジメ?」


 髪と同じ色の瞳を輝かせて僕の方を見てくる



 「そうだな、皆はハジメと呼んでいるね」


 僕が少年に言うと、分かったという風に僕に頷いてきた



 「ハジメ兄!!じゃダメかな?」


 首を傾げる少年に僕は声をかける



 「好きに呼んでいいんだよ」


 僕の言葉に少年は嬉しそうだった




 「今度は僕が君の名前を聞いていいかい?」



 少年に聞くと、うん!と曇りのない笑顔で言われた



 「ぼくはね、タイニー・V・ウェインだよ」


 タイニーって呼んで!と言う声に僕は苦笑する





 この子は本当に人なのだろうか



 



 しぐさが全て、子犬に見えてしまう




 誰か助けれてくれ!?



 僕は心の中で静かに嬉しい悲鳴をあげていたのだった。





 タイニー=Tinyです。小さいって意味の単語ですね。この子は子犬のしぐさをイメージして書いているので、子犬っぽい動作表現になってしまいます。

 その可愛さに、創の心は溺れていっています。嬉しそうなところとかは、子犬が尻尾を振っているところを想像してもらうといいかもしれません。とにかく可愛ええ、そう思います。

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