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積み木の世界  作者: レンガ
~ 水の国 ~
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海上レストラン 宿り木

 書き直しました。どうぞ読まれていってくださいね。

「ごちそうさまでした」

「はーい」


 僕が目の前にいる人の目を気にせず、一気にたいらげた食器をアリアがさげていく

 

 大満足過ぎる朝食を終えた僕のお腹は膨らんでいる

 それをさすりながら、満足した表情を押さえきれずに浮かべていると、アリアはクスリと笑っていた


「きれいに食べたわねハジメ。満足したところで悪いんだけれど、そこにある服に着替えといてくれる?」


 (着替え?)


 そう言われてから見た自分の恰好は、ところどころ破け、服としての本来の姿をとどめておくので限界です、というような感じの自分の服を着ている程度だった。


(けっこうボロボロだな……って、はっ!?さっき僕は彼女を招き入れる時にこんな格好だったのか?だとしたら……、いやでも、今更かもしれない。僕がこの世界に落ちてきて水の中に飛び込んで意識を失ってからここで目覚めるまでの間、なんだか冷たい所から救われるような浮遊感を感じたり、ぎゅうぎゅうに白いお化けに押しつぶされる夢(?)を見たり。かと思ったら、ふかふかの布団よりももっと温かい、幸せな所に放り込まれた感覚がしたり?その時にこのような姿になっていたとしたら、救いようがない。たぶん、そのマスターさんではなく、世話好きそうな彼女に見られているだろうし)


 はあ、とため息をつき、彼女に指さされた方を見ると、もう一つの机の方にベージュ色の服が置いてあるのが僕の目に入った


「会わせたい人がいるから、迎えに来るまでに着替えてて。しばらくしてからまた来るね。今度はノックするから!」


 部屋から出る唯一のドアが音をたてて閉まる直前にそう言ってから、アリアは出て行った


(彼女の突発的な動きには、ついていけないような気がする)



 閉じられたドアから机にある服を手に取るために、僕はベッドから立ち上がる

 ズボンとシャツ、上着を手に取るが、その服の間から細長いものがスルスルと落ちてきた 

 落ちた細いものを取り上げ、僕は目を細める


(ネクタイだよな、たぶん。日本じゃ絶対に僕が使わない類のものだな)


 なぜこのような服なのか分からないという風に首をひねりつつ、僕はとりあえず用意されていた服に着替えることにした



 ―― 十分後 ――   


 ドアをノックする音が部屋に響いた


「はい」


 僕は返事をしてから、ドアを開けていた。開かれたドアの前でニコニコと言う表現が一番合っている笑顔で立っている彼女は、見ていて飽きないと思う。その表情豊かな


「うん、うん!サイズももちろんピッタリ!でもって、雰囲気にもあってるわね、合格!」


 今にも鼻歌を歌いだしそうに言うアリアに僕は思考する


(なぜ、服を着替えてもちろんピッタリ?そして、雰囲気に合っているというのはとりあえず置いておくとしても、合格という意味が理解できないけれど、用意してもらった手前どうしようもないか)


「アリアがこの服選んだの?」


 僕は日本でいう海兵が来てそうな服の裾を手で持ち、首をかしげていた

 いわゆるセーラー服のそれを見ながら手を叩く彼女は、「あ、そっか~」と言っていた


「ハジメには言ってなかったわね、ここのこと」


 僕が来ている服を眺め終わった彼女は、腰に手をあてていた


「ここ?」


 僕が言ってから、アリアはさっきまで僕が寝ていたベッドに腰かけていた。そして、伸びをしながら彼女は僕に教えてくれた。

 僕と彼女、そして見知らぬマスターさんがいるという、現在地を。


「ここはなんと、渦潮の上にある海上レストラン宿り木という、お店なのよ。だから、それはこのレストランの制服かな?って言っても、私が昨日、服のお店でつくってもらったのが初めてだから、男性用は初めてかなー」


 目を瞬かせ、彼女は嬉しそうに現在地、もといレストランの素晴らしい所を言う


「一面の海!渦潮を見ながら朝日も夕日も、イルカも見られるんだから!」


 きれいよ、最高よ、かわいいのよ!と拳を震わせて熱弁する彼女の熱は、手に負えない程のものになった

 

 その熱さの前に疑似的に意識を飛ばしながら僕は興味深いと思っていた。僕の創りだした世界では、このような人が住んでいたのかと気づかされたからだ


 自身が創っている世界とはいえ、大枠しか知らない僕にとっては新鮮だったのだ


(何故かというと、その世界に住んでいる人々のことまでを考えて創っていなかったからで……。)


 と、意識を飛ばしている間に、熱ほとばしる彼女の話に悲しみが混じって来ていたことに気づかなかった

 

「ただね・・・」


 神妙な面持ちで言っている彼女に、僕は意識の世界から戻ってくる。そして慌てて彼女の目を見上げていた


「どうしたの?」

 

 僕の声が聞こえた彼女が、いつの間にか閉じていた目をうっすらとあけながら、僕を見た。が、また閉じてしまったのを見届けてから、彼女が力なく声を出すのが聞こえた

 

「ううん・・・、なんでもない。なんでもないわ……、ってそんなことよりも」


 ベッドから立ちあがり、僕を勢いよく見ると、彼女は僕の手を掴んでいた


「レストラン熱ですっかり忘れてた。今からマスターに会いに行くわよ!」


 開かれたままのドアを指さす彼女に引かれ、僕はドアへと進む。その状態のままで僕は彼女を見上げる


「マスターって、あの僕が食べたご飯を作ってくれた人だよね?」


 彼女の頷く姿を見る僕は、想像していた。見ず知らずの僕にご飯をくれた人のことを。

 

「そう!行くよ」


 彼女は僕の手を引っ張りつつドアを閉める。僕は先ほどまでいた部屋に見送られる形で部屋の外に出ていた 



 ―― レストラン 宿り木 店内 ――

 

 布巾一枚を使い、俺はひとり食器を磨いていく。誰もいないレストランで、磨かれた皿が出す音が店内に響く。

 たかが食器と思いがちだが、そんなことはないと俺は思うのだ

 皿が汚れていたら、料理の味は当たり前だが落ちる。お客さんが一人も来ないかもしれないが、それでもいるはずのお客のために俺は磨く


(手を抜くところとそうでないところを使い分ける、これって結構大事だよな)

 

 うんうんという頷きの後に、磨き終わった皿を置き、まだ磨いていないフォークに手を伸ばそうとしていると、従業員用の部屋、奥の部屋からドタバタと音がしてくる


(さっきアリアが少年を連れてくるって言ってたから、そろそろだろうな)

 

 彼、レストラン宿り木のマスターは、磨いていたものをそっとフォーク入れにいれていた。


 マスターはアリアの前では手を抜いていますが、するべきことはきちんとする料理人です。この中では主にほのぼの担当です。

 マスターの性格は私も嫌いになれないな、なんて思ったりしてます。

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