閉幕
食べ終わり、食器を片づけ終わった後、僕はファイさんからの連絡を受け取る
ポケットに入れた硝子細工が緑色に光り出した
ファイさんがアジトの前に到着したということだ
二人は硝子細工があることも、光っていることも見えていないようだった
僕は二人には中身の見えないリュックの方へを歩を進めた
「これなんですか?」
僕が置いてあるリュックの傍にしゃがみ込んでいると、兄の方が答えてくれた
「ああ、ただのリュックなんだよ」
兄の方が椅子に座りながら僕に教えてくれる
「そうなんですか?僕にはお宝の山に見えますが」
僕がリュックのふたを開けながら言う言葉に反応する
盗賊ならば宝と言う言葉はきっと好きであろう
「嘘!?」
妹がその言葉に釣られて近寄ってくる
それに続いて、兄も寄ってくる
僕がほらとリュックを広げる
実際に僕は服を手に取り上げて見せる
「これとか、好きそうですよ?」
ミリさんと言う風に広げてもミリさんには見えなかった
心が淀んでるから
僕は二人に見るようにリュックを広げる
二人がいくら目を凝らしても見えないのに僕は首を傾げる
「あれ、おかしいな。悪いことをしていない人には見えるはずなのに、どうっしてミリさんとタグさんは見えないんでしょうか?」
は?という二人の顔に僕は事実を叩きつける
「あ、分かった!!ミリさんとタグさんは嘘をついていたんですね」
だからですね、という僕の言葉に二人は後ろにさがる
「・・・なんなのよ、オルバ」
ミリ、妹の方が僕の言動に恐怖の色を目に宿している
「なんなのよだって、滑稽だね」
僕はリュックの傍にしゃがみ込んでいたのを立ち上がる
「ケリー盗賊の頭、タグさんとミリさん」
僕は笑顔で二人の本当の稼業名を告げた
「オルバ、僕たちが盗賊な訳あるはず・・・」
兄の方が宥めすかしてくるので僕はピシャリと言葉を放つ
「オルバじゃなくて、創だから」
僕はリュックの方から二人の方を振り返ってみた
「そして、記憶喪失でもなんでもないからさ」
僕はポケットの中に手を突っ込む
ドアの外から聞こえてくる声に耳をすます
突っ込んだ手を取り出しながら、この部屋のドアの前にソウゾウする
さっき食事を運んできてくれた盗賊員の一人が走ってきたのか、息を切らしながらドアを開け放つ
「お頭!大変だ!!」
ドアを開け、その人はなんの迷いもなく床を踏む
いつもの床と同じだったらその人は何事もなかったんだけれどね
僕がポケットの中の積み木を握ってソウゾウしたのは落とし穴だった
「のわ!?」
盗賊員が声をあげ、目の前から姿を消した
その事実に二人が目を丸くする
「なっどうした!?」
「消えたの!?」
二人が盗賊員の消えた場所に駆け寄る
そこには底が見えない、暗くて深い落とし穴が存在していた
「何だこれは!?」
「さっきまでこんなの無かったよね、タグ兄!?」
二人はパニックに陥っていた
そりゃそうだろうな
今朝までなかったものが今そこに存在しているのだから
僕は口笛を吹いて、二人の気を引いた
「はい、注目ね」
僕は口笛で気を引いた二人ににっこりと笑顔で微笑む
「今、この隠れ家には何かが起こっています」
僕はゆっくりとその声をこの部屋に落としていく
「では、問題です」
僕は二人に目を向ける
「一体、何が起こっているのでしょうか?」
僕は開いていた牢屋に入ると、自分で鍵をかける
「な!?させないわ」
妹の方が指を鳴らして鍵を開ける
けれどそんなのは僕にとってはただの時間稼ぎだったわけで
僕は目の前にある牢屋の扉に新しく鍵を作った
積み木を使って
ボンと音を立てると同時に鍵が牢屋にかかる
「はあ!?」
目の前に突如出現した鍵にその妹は苦戦する
「ちょっと何これ、こんな鍵うちでは使ってないわよ」
パニック状態だった妹は、牢屋の扉をガチャガチャ言わせ、むりやり開けようとしていた
木製でできた積み木の鍵はビクともしなかった
「無駄だから。それ僕しか外せないし」
二人ににっこり笑顔を見せながら、僕は積み木を手の平にのせる
「創ったのが僕だから当然でしょ」
その二人の真下に落とし穴を創る
二人は僕が手の平にのせた積み木に目がいっていたので気づかなかった
足元が深く暗い空洞になっていく様を
二人の髪と服が下の方へなびいていく
二人の叫び声が虚しく落とし穴の中から聴こえてくる
「うわあ!!」
「何なのよ、これ!?」
悲痛な叫びは地の底から僕のいる部屋まで丸ぎ声だった
落ちても痛くないように設計してあるから問題ないよ
僕自身が創った鍵を解除しながら僕は寝ている三人を見回す
さて、どうしたものか
僕が考えていると、突然前のドアが開く
「ハジメ、無事か!?」
バンと開け放つ音に僕は牢屋から微笑む
昨日の夜、話をした人で、そして今僕たちを助けに来てくれた人
ファイさんだった。
創が演技を捨て、兄妹に質問を投げかけます。その投げかけた質問に兄妹は答えることなく落とし穴に入ってしまい、パニック状態です。
何も知らない人と知っている人の温度差を結構好きだなと思っている私は、それなりのひねくれ者なのだと思います。
そんなところも含めて、今後もお付き合いください。




