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積み木の世界  作者: レンガ
~ 水の国 ~
49/189

船出

 ミトリ公園に朝日が差し込む




 ああ、朝だな




 僕はいつの間にか寝ていたのか、カウンターに突っ伏していたようだ



 お客さんは皆寝ている


 もちろん、パンジーやリリー、ロウ、デニー、リドもだ



 彼女だけが見当たらない



 僕は店のドアを開けて、テラスに出る



 彼女が泳ごうとしているところだった






 「おはよう、アリア」


 僕は今にも飛び込みそうなアリアに挨拶をした


 「もう起きたの、ハジメ?」

 おはよう!と言うアリアは今日も元気だった



 「今日も泳ぎに行くの?」


 僕はテラスにに置いてある椅子に座る


 「うん、もちろん!」


 エメラルドの髪を解きながらアリアは僕の方を見てきた

 


 「ハジメは泳がないの?」



 アリアのお誘いに僕は一瞬目を丸くしたが、すぐに元に戻った


 「あんまり・・・、泳ぐのは得意ではないんだよ」

 だから、やめとくよと言う僕にアリアは微笑んでくる






 嫌な予感がする





 「なんだ、そんなこと?じゃあいっしょに泳ごうよ」


 いつのまにか寄ってきていたアリアは僕の腕を引っ張り、椅子から立たせる



 「え、ちょっ、待っ」


 僕の制止の言葉を聞かずに、ぐいぐいと引っぱっていく






 ・・・覚悟を決めるか





 僕はアリアと一緒に海の中へ飛び込んだ







 海は好きだし


 泳がなければ景色がきれいで嫌いじゃない


 水の中を泳ぐのが嫌いなだけで





 アリアと一緒に飛び込んだ中、僕はそっと目をあける



 広がるのは海の世界



 そして、押し流される体の感覚


 

 そこに住む生き物たち



 僕が見ていなくても、世界は刻々と変わっていく



 なのに僕はそこにあると知っているのに、目を背けてしまう



 世界が僕を受け入れてくれることは変わらないというのに







 変わらないといけないのは、僕の心なのかもしれないな





 目の前に広がる海の流れに僕は身を任せることにした



 




 

 アリアと水の中を揺蕩っていると、僕の息に限界が来た





 ずっと、海の中を見ていたい



 けれど、息をしないと僕は生きられない



 だから、顔を水から出すしかないのだけれど

 それがなくなればいいのに



 僕はそう思いながら、アリアに上に行こうと手で合図をした






 僕たちは少しずつ海面へ上昇していった




 「ぷはあ!!」


 僕は思いっ切り息を吸う


 アリアの心配そうな顔に僕は目を向ける




 「ありがとう、アリア。いい気分転換になったよ」


 僕は水の中を浮きながら、アリアにお礼を言った





 


 ハジメが喜んでくれたんだ


 私は素直にハジメの言葉に喜んだ


 「じゃあ、今から泳ぐ練習しよ!!」


 私が意気込んで言うと、ハジメはえっ?と言う顔をする



 「えっ?じゃないよ。この世界で泳げないのはきついから、私が毎朝教えてあげるからね。このアリア姉さんに任せなさい!!」


 どんと来い、と言わんばかりに手を胸に当てている姿は頼もしかった




 仕方ない、アリアに泳ぎを教えてもらうことにするか




 僕は観念したようにアリアに向かって頷いた



 「じゃあ、とりあえず私と一緒に泳ぐことから始めましょ!!」



 元気よく言うアリアの手をとり、僕は泳ぐ練習を始めたのだった








 


 「よし、今日はここまでね!」


 アリアは僕にそう言うと、レストランの方に向かって僕を引っ張り出した



 僕もその手にひかれ、レストランに向かっていく







 けれど、僕たちがレストランに着いても、お客さんはまだ寝ていた





 大丈夫なのか、後一時間で出発の予定なんだけどな






 僕はそう思いながら、タオルで濡れた部分を拭っていた









 アリアと僕で手分けして、お客さんを起こしに行く


 

 慌てて店から出ていく人やまだ寝かせてくれと言っている人、起こしても起きない人など様々だ




 本当にいろんな人がいるな




 僕達は根気よくお客さんを起こしていったが、リドを起こすのをすっかり忘れていた


 「マスター!!」


 うわあと言うような顔に手をあてながら、リドのもとに走って行ったアリアの声でレストランに寝ていた客がすべて起きのだ




 うん、手間が省けてよかった




 マスター!!と言って、抱きつかれているリドは何が起こったのか分からないと言うような顔で困り果てていた




 そして、



 「なんだ、この事態は?」



 ファイさんがドアを開けて、店の中に入ってきたときもアリアはリドに抱きついたままだった




 起きたお客を店の外に出てもらうよう誘導し、僕たちは後片付けをする




 片っ端からカウンターに持って行ったものを、リドが洗って拭く、この繰り

返しだった



 

 あらかた片づけ終わったころには、出発時刻10分前で、見送りの人たちがこのレストラン前に集まっていた




 「皆、無事に水の国に帰ってくるんだよ」

 

 ノアさんが外からアリアに向けて声を張り上げている


 「元気でな!」


 いつお祝いから帰ったのか、ロウが手を振りながら見てくる


 「よい旅を」


 ジェルさんがメガネをあげ僕たちに言ってくる


 「「ファイ様をよろしくね~」」


 リリーとパンジーが右手と左手それぞれの手で振ってくる


 二人の見送りを見た後、僕は他に見送りに来た人を見渡した







 「皆、準備はいいかな?」



 僕はレストランに乗っている人に向かって言う



 皆が一応に頷くのを見て、僕は声を上げる




 「出航!!」



 

 僕は積み木を手に乗せ、レストランを風の国のある方向へと動かした。  

 慌しい宴会、お祝いでしたが、無事出航できました。次回から舞台は海を経て、風の国へと突入します。風の国にはどんなことが起きるのか、わくわくです。

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