昼間の偶然
ファイさんが双子から紙袋を受け取ると僕の方を見てきた
ちょいちょいと手を動かしてくるので、僕はファイさんに近づく
「なんですか?」
僕が傍に行くと、ファイさんが僕を引きずっていく
リリーとパンジーが慌てていたのが視界の端で見えたが、気づけば店の外に出されていた
「ちょっ、どうしたんですか、ファイさん!?」
僕が慌てていると、ファイさんが引きずりながら僕に言う
「今日一日あたしに付き合ってよ」
有無を言わせぬ言葉に、僕は言葉を失う
まあ、アリアからのおつかいはもう終わったし、別に付き合ってもいいか
そう思いながら僕はファイさんに引っ張られていった
~ 花屋 ロウ 店内 ~
「ロウ、おはよう!!」
私はロウに向かって元気に挨拶をする
もちろん、店のドアを思いっ切り開けて
「おう、アリアか。いらっしゃい」
今日はどうしたんだ?と言うロウにアリアは、今日の朝の出来事を話す
へえ、というロウは花に水をやりながら、頷いていた
「なるほどな。あのレストランごと移動するから、里帰りができるわけか」
「ロウは土の国に帰らないの?」
帰るならのせて行けるみたいよ、あのフネ、と言いながら、アリアは店内の花を見て回る
「う~ん、俺は土の国に帰る気はないな」
なにより、この店が好きだしな!とにっこり笑うロウの笑顔は、太陽のような笑顔だった
「そっか!」
アリアもその笑顔に応える
「じゃあさあ、明日の朝、ミトリ公園から出発するからさ、見送りに来てよ」
「おう、いいぜ!」
そう言いながら、ロウはアリアが指した花を丁寧に包装していく
「よし、できたぜ」
まいど、と言うロウはアリアに向かって花を渡す
「ありがとう、ロウ!」
花を手にアリアは店を後にしようとする
ドアを開けたところで、ロウに呼び止められた
なんだろう?
アリアは店のドアから手を離し、中に戻っていった
~ ヴァレンシア 市場通り ~
さっきまでファイさんが引っ張っていたが、観念した僕は自ら歩くことにした
「ファイさん、これからどこに行くんですか?」
「うーん、そうだな」
ファイさんが真剣に考えていると、市場の端々からいい匂いが立ち込めてくる
「お腹すきましたね」
僕が物欲しそうに屋台の方を見ていると、ファイさんはそれだと言って、歩く方向を変えた
「どこ行くんですか?」
「昼だよ、ハジメ坊」
私もお腹がすいたと言うと、僕たちはもと来た道を逆走した
「着いたな」
腕を組みながら立っているファイさんの横に立ち、そのお店を見る
レストラン・フル
「ここ知ってますよ、僕」
「そうなのか?」
うまいのか?と聞いてくるファイさんに僕は頷く
「まあ、リドの料理の方がおいしいかもしれないけれど」
そう言いながら、レストランに二人で入ろうとすると、遠くから見知った二人組に話しかけられた
「ハジメー!!」
「よっ!」
二人が手を振りながら駆け寄ってくる
アリアとロウだった
「あれ、どうしてここに?」
僕が首をかしげていると、二人が説明してきた
アリアが花を買って店を出ようとしたとき、ロウが昼ご飯を一緒に食べに行かないかと誘われたらしい
ふーん、この金髪が
「ハジメはどうしたの?」
その人だれなの?と聞いてくるアリアに僕は説明する
朝雨が降った時に雨宿りをさせてくれた店の主人で、風の国に帰りたい人だと
そして、ファイさんにはアリアのことを紹介し、しばらく船で一緒に行動することになると僕は説明する
「そうか、ハジメ坊の保護者か。よろしくな」
さらっと、僕を子ども扱いする言葉を使うファイさんに、アリアは反応する
「ちょっと待って・・・、ハジメは子供じゃないよ」
笑うのを我慢しているのか、アリアの声は震えている
その横でロウも震えているので、そちらには視線で釘をさしておく
アリア、一体僕のことをどう思っていたんだい?
僕が疑惑の念を抱いていると、ロウが中に入ろうぜと言うので、四人でレストランの中に入っていった。
ハジメとファイさん、ロウとアリアがばったりとレストラン・フルで出会います。今日はリドからお弁当を用意されていなかったので、ご飯を食べに行こうということになったみたいです。
次はもちろん、あの人が出てきます。メガネの人です。




