呼びかけ
僕はファイさんに明日の朝ミトリ公園前に集合といい、店を後にする
嬉しそうなファイさんが店じまいを始めている
帰る準備をするそうだ
帰りたかったんだろうな、風の国に
僕はそう思いながら、カバン屋ノアへ足を運んだ
~ カバン屋 ノア ~
「ノアさん、こんにちは」
僕は店のドアを開けて中に入る
「おや?今日はアリアと一緒じゃないのかい?」
ノアさんはカウンターから出てきて僕に訊ねてきた
「ええ、そうなんですよ」
今日はですね、と言う僕の話にノアさんは耳を傾けてくる
「というわけで、三人別行動で必要なものを調達しようということになって、僕がここに来たというわけです」
僕が説明し終わるとノアさんは目を見開いていた
「はあ、水の加護者から書状をもらって、逆移動をすると・・・。おばさんの私には考えつかないことさね」
やれやれとしているノアさんは驚くのに疲れてしまったようだった
まあ、僕がこの街に来てから驚かせっぱなしのような気がするから
仕方ないのかもしれない
僕はノアさんの故郷を聞いてみることにする
「ノアさん故郷に帰る気はないんですか?」
「うーん」
そうさね、と言っているノアさんは迷っているようだった
だが
「あたしの国は土の国なんだが、ここで店を開いちまってるし、店を閉めるってのはどうしても私の性に合わないんだ」
だからやめとくよ、と言い切ったノアさんはなんだかかっこよかった
「明日の朝にミトリ公園から出発する予定だから、もしよかったら見送りに来てもらえませんか?」
アリアの為にと言うと、ノアさんはもちろんと言う風に頷いてくれた
「お見送りはしないとね」
もちろんハジメもだよ、と言ってノアさんは笑顔で僕の方を見た
その後、アリアから頼まれたものをノアさんに言い、揃えてもらった
「よし、じゃあ残りのおつかいにも行っといで」
明日の朝、必ず行くからね、というノアさんは、
お店のドアを開けて僕に手を振ってくれた
「よし、最後に風の服屋だな」
僕は気合を入れなおし、紙袋に入れてもらったものをリュックに入れなおし、もう一度かるった
風の服屋も一度行ったことがあるから大丈夫だな
僕はリュックを両手で持ちながら、ずんずんと風の服屋がある市場通りを進んでいった
風の服屋の前につくと、またも行列ができていた
あいかわらず、人気なんだな
とりあえず、僕は行列の最後尾に並んだ
並んでいると、見知っている人が店からドアを開けて出てきた
「ジェルさん、こんにちは」
僕は服が入った袋を大量に提げているジェルさんに挨拶をした
おや、という顔でジェルさんは立ち止まり、かろうじてあいた右手で眼鏡をあげる
「こんにちは、ハジメ。お買い物ですか?」
眼鏡をあげながら言ったジェルさんは、レストランの支配人姿だった
「そうです。ジェルさんもですか?」
僕がジェルさんに話をふると、そうなんですよと嬉しそうに言ってきた
ジェルさんの顔が綻んでいる
何かいいことでもあったのかな
そう思いながらジェルさんの話に耳を傾けることにした
「この前の食事会で良さそうな従業員が三人も雇えたのですよ」
レストラン宿り木で、堂々と他の従業員と一緒に探してたんだっけ
そうなんだという僕の言葉にジェルさんは口を動かし続ける
話によると、その従業員になる予定の三人用の服を風の服屋に調達しに来たようだ
「良かったですね、ところで話変わるけど」
そう言って僕は一応船上レストランのことを話しておく
「逆移動して、風の国、土の国、火の国と向かうということですか」
ジェルは悩む間もなく決断する
「今日から新しい従業員が来ますし、帰りたいのはやまやまですが、指導をしなければなりませんので・・・」
そう言っているジェルの言葉に僕はやっぱりと思った
仕事を疎かにしそうな人ではないもんな
そう思いながら、僕は動きだす行列の流れに乗って前に行こうとした
ジェルさんも仕事があるのだろう、僕に向かって
「誘ってくださってありがとうございました」というと僕に背を向けた
それを見届けた僕もジェルさんに背を向けたのだが、ジェルさんに後ろからもう一度声をかけられた
「もし、土の国に行くのであればこれを」
そう言って僕に琥珀色のペンダントを渡してくれた
「これは?」
僕が訊ねると、ジェルさんはお守りですという
「私の代わりにそれを土の国の加護者にお渡しください」
そういうと、ジェルさんは歩き出して行ってしまった
透き通る琥珀の中には何か液状のものが入っていた
これはなんだろう?
まあいいか、と思った僕は目の前に迫った店のドアを押し開けた。
ジェルがくれたものは土の国で役に立つ予定です。創がアリアのお使いを無事やり遂げられるのか、今回は見守ってください。中身は18歳ですが、見た目は13歳です。
お使い時は13歳、それより低い年齢と思って読むと、ほのぼの度があがります。気が向いたらしてみてください。




